久光製薬が今年、サステナビリティ推進委員会、サステナビリティ推進部を新設した。春にはさっそく「HELLO! eco!」マークを策定し、同社のエコ基準をクリアした商品への表示をスタート。ホームページにも「サステナビリティ」のコンテンツを設けた。さらに、9月17日に公開した第7期中期経営方針では、初めて「サステナビリティ方針」を明記し、久光製薬が考えるマテリアリティ(重要課題)を示している。
サステナブルな取り組みを加速させる久光製薬だが、これらのミッションの中核を担うのが同社のサステナビリティ推進委員会であり、サステナビリティ推進部である。今回は、この新たな取り組みについて、久光製薬のサステナビリティ推進担当である高尾信一郎常務とサステナビリティ推進部の森崎亜紀子部長に話をうかがった。(※高尾常務の「高」表記は「はしごだか」)
サステナビリティ推進委員会・推進部とは
もともと久光製薬は、2017年発表の第6期中期経営方針で「久光グループにおけるESGの推進」を明記し進めていたが、更に取り組みを加速すべく、第7期中期経営方針を固める前にサステナビリティ推進委員会と推進部の設置を決めた。
現在は、サステナビリティ推進部が事務局となって、サステナビリティ推進委員会を運営。サステナビリティ推進委員会は、久光製薬のサステナビリティ方針を検討し、実行に向けて各部署と連携したり、マテリアリティとして社外に向けて発表する役割などを担っているという。
ちなみに推進部のメンバーは、CSR報告書の作成に携わっていた文化事業・CSR推進室などの社員で主に構成されている。
サステナビリティ推進の背景には九州の豪雨災害の影響も
なぜこのタイミングでの新設となったのか。そこには、九州に本拠地を構える久光製薬独自の考えがあった。高尾常務はこう語る。
「久光製薬の本社がある佐賀県でも近年、大雨による災害がかなり頻発していて、その頻度は昔と全然違ってきています。地球規模で温暖化は進んでいて、それがこのような異常現象となって現れているわけですが、このままでは、企業が生き残っていくのも難しいところまできています」
今年8月、九州地方や中国地方を豪雨が襲った。結果、九州全域で5000棟を超える住宅被害が発生し、死者や行方不明者も相次いだ。佐賀県の大町町や武雄市では、大雨特別警報の発表から1カ月以上が経っても避難所生活を余儀なくされている住民がいる。政府は9月28日、ついにこれを激甚災害に指定すると発表した。
「2年前の豪雨で家が壊れ、今年、ようやく建て直したところでまた被災したという人もいました。これでは、もう同じ場所には住んでいられません。地球は今、長く住んでいた土地に住み続けるのも難しくなくなっている。だからこそ、少しでも早くSDGsに取り組み、地球を守っていかなければならないと思っています」
もともと進めてきた地域活性化や環境問題の解消への取り組み
サステナビリティ推進委員会・推進部が存在しなかったといって、これまで久光製薬がSDGsに取り組んでこなかったかというと、決してそうではない。
10年前から商品輸送中のCO2削減を進めてきたし、2015年には営業車もハイブリッド車へと順次切り替え始めた。商品の梱包サイズを小型化することで資源削減にも寄与し、工場にも太陽光発電を導入するなど、早くからエコや省エネに取り組んできた。
また、環境問題だけではなく、地域社会への貢献にも尽力を続けている。
例えば久光製薬が本社を置く佐賀県鳥栖市では、幅広いジャンルの著名人を講師として招いた講演会を年に1~2回のペースで開催し、地域の人々に教養・文化に親しめる機会を提供している。しかも、入場料は社会貢献のために全額寄付するという徹底ぶりだ。ほかにも伝統文化の継承を目的としたお茶会なども定期的に行い、地元の住民を招いて茶道の文化発展に貢献している。
「ほっとハート倶楽部」という取り組みも興味深い。社員の有志が拠出した金額に対して、その同額を久光製薬が会社として拠出し、社員たちの推薦を元に各地のNPO団体やNGO団体への寄付金を送るというものだ。同時に、国内外の災害に対する義援金の寄付も行っている。
サステナビリティを推進する部署ができたことで、今後その動きは本格化するだろう。すでに薬局などで目にする「HELLO! eco!」マークなどはまさにその第一歩である。後編では、サステナビリティ推進委員会・推進部が進めてきた取り組みについて具体的にお聞きしたい。