女優・松本まりか。ブレイクするまで“求められていない女”として過ごした時間は実に18年。新ドラマ『それでも愛を誓いますか?』(ABCテレビ毎週日曜23:25~、テレビ朝日毎週土曜26:30~※TELASAで全話配信)の主人公・純須純(すみす じゅん)は、結婚8年目で夫とは5年間セックスレス、結婚を機に仕事を辞めて以降キャリアもなく「『求められている女』と『求められていない女』は全然違う」と悲痛な思いを訴えるが、そんな純を演じる松本は18年という途方もない時間をどう過ごし、なぜ女優への道を諦めなかったのか。「誰かと付き合って有名になったほうがいい」と言われたこともある――そんな話も冗談交じりにしながら、松本から飛び出したのは驚くほどにシンプルで、地に足のついた愚直な言葉たちだった。
■芝居以上に好きなことがなかった
「18年間の苦労についてお伺いしたいのですが」そんな質問に対して松本は、メディアでしばしば呼称される“苦労人”という言葉と少し距離を取っているかのように「思い返せば苦しい18年間でしたが、今も苦しいことはあるし、苦しい思いをしながら生きていくのは誰だって同じ」と至って冷静。「自分が未熟だから、苦しい状況が続くのは当たり前だと思っていました。誰かに手を差し伸べてもらいたいと思ったこともあるけどそれは愚かな考えだし、きっと誰も助けてくれない、この状況を打破できるのは自分しかいないと気付いてからは、私にできるのは頑張ることしかありませんでした」。
10代から20代、そして30代中盤へと歳を重ねてきた18年はあまりに長いが、努力を続けられたのは「18年間、芝居以上に好きなものがなかった」から。「『なんで芝居ほど好きなものってないんだろう。でも好きなこと以外をすると自分の心が死んじゃうから他のことはできないし……』みたいな」。
■努力するだけなら誰にだってできる
自身でも不思議に感じるほどブレなかった芝居への思い。しかも「努力はいつか報われる」と信じていたわけではなかった。「『パラレルワールドで成功している私がいる』とイメージすることはできたのですが、今この現実を生きている私がうまくいくとは思えなかった。だけど万が一パラレルワールドに行けたときに、その場所にふさわしい自分になっていようと。現世で自分が連続ドラマの主演をやることはないだろうけど、そもそもチャンスを手に入れても未熟な自分のままではできないから、主演を張っている方々と同じくらいの中身の詰まった人間になっておこうって」。
理路整然と語ったあとで「努力するだけなら、誰にだってできるじゃないですか」とサラリ。確かに「努力」はどんな人間にも平等に与えられた権利かもしれないが、上手くいくかどうか分からないことに対して努力できる人間はそういないのでは。率直に伝えると、松本は質問をゆっくりと噛み砕きながらさらに自分の過去を振り返っていく。