東京商工リサーチは10月5日、第12回「地ビールメーカー動向」調査の結果を発表した。調査は9月1日~25日、全国の主な地ビールメーカー217社を対象に行われ、出荷量は2021年1-8月の出荷量が判明した75社(有効回答率34.6%)を有効回答とした。
出荷量が判明した主な地ビールメーカー75社の2021年1-8月の総出荷量は6,601.6klと、前年同期比を7.7%上回った。
コロナ禍で新年会の機会が喪失した2021年1月の出荷量は754kl(前年同月比27.4%減)と大幅に落ち込んだものの、3月以降は急激に回復。ただし、出荷増が期待された8月(同5.1%減)は、緊急事態宣言延長による外出自粛や飲食店の営業時短の影響、酒類提供の禁止、天候不順などが重なり、前年同月を割り込んだ。
また、出荷量が判明した75社のうち、「増加」した企業は30社(構成比40.0%)。出荷量増加の要因を聞くと、7割以上が「巣ごもり需要が伸びた」(21社)と回答。次いで「スーパー、コンビニ、酒店向けが好調」(14社)が続いた。
一方、出荷量が「減少」および「横ばい」だった企業は45社(同60.0%)。減少の要因は、「イベントの開催中止、延期」(38社)、「飲食店、レストラン向けが不調」(36社)、「観光需要の喪失」(33社)に回答が集中し、長雨などの気候要因を挙げたのは11社だった。
有効回答を得られた76社について、売上比率の一番大きい販売先は「スーパー、コンビニ、酒店」が33社(構成比43.4%)で最多。次点は「自社販売(イベント販売含む)」が22社(同28.9%)だった。
また、2021年の商流の変化について聞くと、36社が「インターネット通販の売上が伸びた」と回答。さらに、21社が「インターネット通販の販路を拡大した」と回答するなど、5割近くの企業がインターネット販売に力を注いでいたことが明らかに。一方、「飲食店、レストラン向けの販路を縮小した」も15社あり、コロナ禍の影響に苦慮している様子がうかがえた。
今後の事業展開としては、「自社地元」の販売に力を入れる企業が56社(構成比74.7%)と7割を超え、また、大手4大メーカーとの製品差別化のために、47社が「独自の味」に注力すると回答したほか、31社が「大手を意識せず従来通りの営業を進める」と回答した。
新型コロナの影響に関しては、「悪い影響」との回答が68社(構成比89.5%)にのぼり、今後の不安材料として、「レジャー需要減退による観光地(インバウンドや道の駅なども含む)での消費の減少」(61社)や、「三密回避などによる飲食店の来店客の減少」(57社)をあげた企業が約8割にのぼった。
2021年1-8月の出荷量ランキングは、地ビール醸造全国第一号の「エチゴビール(新潟県)」が10年連続でトップに。出荷量は2,112kl(前年同期比27.8%増)と2位以下を大きく引き離した。
続く2位は、べアレン・クラッシックの「ベアレン醸造所(岩手県)」が498kl(同8.0%増)でランクイン。以下、3位「網走ビール(網走ビール・北海道)」(356kl、同47.2%増)、4位「信州東御市振興公社(オラホビール・長野県)」(301.5kl、同31.3%増)、5位は「二軒茶屋餅角屋本店(伊勢角屋麦酒・三重県)」(256kl、同31.6%減)と続き、1-8月の出荷量が100klを超えた地ビールメーカーは前年と同数の15社だった。