近年、投資に関心を持つ人が増えているようです。「貯蓄から投資へ」という言葉が古くから言われているように、低金利の現状のなか投資は資産形成のために大切な方法です。しかし、投資は余裕資金で行うのが鉄則で、家計のなかで必要なお金まで投資に回すのはおすすめできません。そこで本記事では、家計の中で投資にまわすべきお金とそうでないお金の考え方について説明していきます。
まずは投資に回していけないお金を知ろう
投資は「当面使う予定がない余裕資金」で行うのが鉄則ですが、「当面」「余裕資金」というのがピンと来ない人もいるかもしれません。各家庭の状況やライフプランによっても異なりますから、自分にとって「投資に回してはいけないお金」をリストアップすることから始めましょう。
投資に回してはいけないお金は、「すでに使い道が決まっているお金」と「緊急予備資金」の2つです。すでに使い道が決まっているお金というのは、数カ月後や来年・再来年・数年後などの近い将来に絶対に必要になるお金のこと。家庭によってさまざまですが、たとえば次のような予定がある人はその分のお金を減らさず確保しておくことが必要です。
- 車や家電製品の買い替え
- 結婚
- 子どもの進学
- 引越し
- 住宅購入の頭金
- リフォームなど
もうひとつの緊急予備資金は、病気や事故、災害、失業などで収入が途絶えた場合の生活費として備えておくお金です。健康保険から給付される傷病手当金の有無や雇用保険の基本手当(失業手当)の有無などによっても異なりますが、目安としては現在の生活費の6カ月分とされています。コロナ禍の今、もし失業したら再就職の目処がなかなか立たないという人は、1年分程度は確保しておいてもいいでしょう。
これらのお金は減らさずに確保しておくことが必要ですから、リスクのある投資に回さず元本が確保されている預貯金などに入れておきましょう。
「必要だからお金で増やす」というのはダメ?
なかには「必要なお金だからこそ投資で増やせば良いんじゃない?」などと考える人もいるかもしれません。確かに長い人生では、多くのお金が必要になりますから、投資で積極的に資産形成をしていくことは大切です。
一方で、投資はリスクを伴うもの。株式や投資信託、FXなど価格変動がある金融商品への投資は預貯金に比べてより早く、より多くお金が増えることが期待できますが、場合によっては投資した元本を下回ることもあります。必要なお金まで投資に回した結果、生活が困窮するような、考えてもみなかった状態になってしまうと困ります。
株主優待品による生活、投資で稼いで早期退職するFIREなど、メディアで投資のメリットだけを見て、「自分も投資をすればちょっとお金を増やせるかな」と思っている人は、投資に回してはいけないお金と回していいお金の区別が必要であることを知っておきましょう。
自分のリスク許容度も考えておこう
投資したお金は一時的に下がることがあっても、しばらく待っているとまた上がる可能性もあります。人によっては、仮に投資で10万円分の損が出る場合でも、「いつかは10万円が戻ってくるだろう」と気長に構えることができたり、「10万円は投資の勉強代と思うことにしよう」と損失を仕方ないと思えたりしますが、一時的にでも「10万円が無くなると困る」と心の余裕がなくなってしまう人もいます。
投資に対するリスク許容度は人によってさまざまですから、具体的な金額を述べることはできませんが、自分の気持ち的に「減っても仕方ない」と思えないお金は投資に回さない方がいいでしょう。
投資に回すべきお金は?
最後に投資に回すべきお金について考えていきましょう。
今ある貯蓄の一部を使って投資をしたい人は、その貯蓄額から先に見た「すでに使い道が決まっているお金」と「緊急予備資金」、そして「減ると困るお金」を差引いた残りが「投資に回しても良いお金」です。この残ったお金は基本的には「当面は使わないお金」ですので、投資に回して積極的に運用していくといいでしょう。
例として、現在の貯蓄が500万円、生活費が30万円、数年後までに250万円は使う予定がある人の場合で考えてみましょう。次の計算式のように算出できます。
投資に回せるお金=500万円-(30万円×6~12カ月分)-250万円
実際に計算してみると分かりますが、このケースでは投資に回せるお金は0円(実際はマイナス)~70万円になります。
このように考えると投資に回せるお金がほとんどないという人もいそうですが、実際に投資はできないのでしょうか?
「投資に回すべきお金」はお金の使い方を見直して作る
自分が稼いだり、貯めたりしたお金のうち、どれだけ投資に回せるかは、実は自分自身で作るものだと筆者は考えます。ここまで説明してきたように、無くなると困るお金を投資に回すのは禁物ですが、家計を良く見直してみると「無駄に使っているお金」や「必要だと思っていた支出額を減らせるお金」があるかもしれません。
今は100円からでも投資できる時代です。家計支出が100円減れば、毎月100円ずつ積立投資をすることもできます。1,000円減らすことができれば、投資額は10倍に増えます。1万円減らせれば100倍になります。
投資とお金の関係は「お金がないから投資できない」「お金がないから投資で増やす」のどちらでもありません。将来の資産を築くために、お金の使い方を見直し、投資に回すお金を生み出す。そして実際に投資でじっくり時間をかけてお金を増やす。このような投資とお金の良好な関係を作っていけるといいですね。