「arrows」シリーズを開発するFCNTが、新たなエントリースマートフォン「arrows We」を発表した。5Gスマートフォン普及に向け低価格ながら必要十分な機能を備えたスマートフォンだ。NTTドコモ/KDDI/ソフトバンクの3キャリアから販売されるが、KDDI向けのarrowsは実に8年ぶりとなる。発売は12月上旬以降。価格は未定となっている。ここではオンラインで開催された製品発表の模様をご紹介しよう。
FCNTは、富士通のモバイル事業の流れを汲むスマートフォンメーカー。富士通が1991年に初めての携帯電話をリリースしてから、2021年9月で30年。2011年にはarrowsブランドを立ち上げており、同ブランドも10周年を迎えた。富士通時代から合わせて168機種、累計7,700万台を出荷した同社は、国産メーカーとして今年、日本市場に向けて何をすべきかに徹底的に向き合った、という。
その結果、デジタル化/5G化の普及を促進するために、戦略的な機種を投入することが必要と判断。まだ1,000万人近いという3Gのフィーチャーフォンユーザーの移行や、スマートフォンデビューのユーザーなどに向けて、手頃な価格の国産5Gスマートフォンの開発を目指した。
こうして開発された「arrows We」は、「ローエンドモデルだが、ただのローエンドモデルではない」(同社執行役員プロダクト事業本部長・櫛笥直英氏)という製品になった。スペックとしては、SoCにSnapdragon 480 5G Mobile Platformを採用し、メモリ4GB、ストレージ64GBを備えている。「エントリーモデルだがサクサク快適に、気持ちよく動く」(営業本部デジタルマーケティング企画開発統括部プロダクト戦略グループ・荒井厚介氏)という。
現在、スマートフォンの買い替えサイクルは「4~5年」(荒井氏)であり、5年前(2017年)のハイエンド機種である「arrows NX F-01K」とパフォーマンス比較をすると、CPUで約1.5倍、GPUで約1.3倍の性能向上を果たしており、エントリーモデルといっても過去のハイエンドモデルに見劣りしない性能だという。「エントリーだからといって当たり前の快適さを犠牲にしない」と荒井氏。
フィーチャーフォンユーザーがスマートフォンで不安に思うことの1位、そしてエントリースマートフォンユーザーの不満ワースト3に入る問題としてバッテリーの持続時間があるという。これに対して、arrows Weでは同シリーズ最大の4,000mAhのバッテリーを搭載。バッテリー制御機能も加えて、「朝から夜までバッテリー切れを気にせず使える」(同)としている。
arrowsシリーズには、同社オリジナル機能として「Smart FAST」機能を搭載している。この機能は6つのユーティリティからなり、トータルのユーザー満足度は約83%に達しているそうだ。例えば「FASTウォレット」では、指紋センサーに割り当てた複数の決済アプリやポイントアプリの起動/切り替えができるようになっている。「A店ではこの決済アプリ、B店ではこのポイントアプリ」といったようにアプリを切り替えて使う場合に、素早く目的のアプリを起動できるという。
コロナ禍でマスク着用が普通になり、そのまま通話することが多くなった。そうした場合にも相手に聞き取りやすくなる「マスク通話モード」と「はっきりマイク」機能を搭載。外出先から帰ったら手洗いと同様にスマートフォン自体も泡ハンドソープで丸洗いできるようになっているほか、アルコール除菌にも対応。従来通り、1.5mの高さからの落下に耐える堅牢性も確保。安心して持ち歩いて使えることを目指した。
初めてのスマートフォンユーザーでも迷わずに使えるように「シンプルモード」も搭載している。よく使う連絡先にすぐに発信できる短縮ダイヤルや入力が簡単な見やすい電話帳アプリも搭載。通知オフ、特定アプリの非表示設定などの機能を備えたプライバシーモード、ビジネスとプライベートの使い分けができる機能なども備えている。
他に、フィッシング詐欺警告、迷惑電話、還付機詐欺といった詐欺対策機能、緊急時ブザー機能と言ったセキュリティ機能、利用を制限できるジュニアモード、ゲームゾーンといった様々な機能も搭載している。特にフィッシング詐欺は2019年の約5.6万件から2020年の22.5万件へと大幅に拡大しており、これを防ぐことは急務。本機のフィッシング詐欺警告では、偽サイトを見破る独自技術によってフィッシング詐欺を防ぐという。
全7色を用意しており、NTTドコモからはネイビー、パープル、ホワイト、レッドの4色を発売。レッドはドコモオンライショップ限定カラーとなっている。KDDIからはブラック、ローズゴールド、ホワイトの3色。ソフトバンクからはブラック、ターコイズ、ホワイトの3色が登場する。このうち、ソフトバンクモデルはeSIMに対応しており、物理SIMと併用してデュアルSIMでの利用が可能だ。
FCNTでは、単にエントリーの5Gスマートフォンを提供するだけでは、フィーチャーフォンからの移行やスマートフォンデビューのシニアユーザーに向けては不十分と判断。サポートサービスも充実させる。
「スマートフォンを使いこなせないというのは、2種類ある」と同社営業本部兼経営戦略室の外谷一磨氏。使いこなそうという動機が薄い人は、「スマートフォンやデジタル化に生活を変えるほどの利便性を感じていない」という場合があって、それは「利便性を知らないだけ」ということがあるという。
そのため、同社では、お金やポイントといった生活に欠かせない情報を提供するメディア「らくらくまめ得」を提供。生活の悩みに専門家が回答したり、ポイントを獲得したりできるサービスで、それによってポイントを獲得し、そのポイントで買い物もできる。これによってデジタル化による消費活動の利便性向上を体験してもらうことを狙う。これによって、スマートフォン利用の促進に繋げたい考え。
もう一つは、「スマートフォンは難しい、誰に聞けばいいか分からない、何をすればいいか分からない」といった、そもそもの使い方が分からない、「何が分からないかも分からない」といった人への対応だ。これには、「らくらくコンシェルジュ」サービスを提供。有料で60分間のスマートフォンに関するレッスンを訪問して行うサービスで、カリキュラムなどはなく、とにかくどんなことでも聞いて、使い方を学んでいけるサービスとなっている。
今後さらに、パーソナライズされたサービス提供するために、会員制のポータルサービスの構築を検討しているという。製品とサービスを連携し、それぞれのユーザーに適したサービス、体験を届けることが目標で、自社サービス、製品だけでなく、外部サービスとの連携も図っていく。詳細や提供時期は今後発表する。
現状でもすでに、アドビと連携してAdobe Scanなどのデジタル化ツールやPhotoshopなどのクリエイティブツールと連携しており、ゲーミフィケーションのノウハウを蓄積するセガXDとはFCNTのヘルスケア系の資産と連携してWeb-beingを実現するサービスを提供していく。
国産による安心感や充実したサポートによってスマートフォン利用促進を図るFCNT。「5Gの普及に向けて日本メーカーとして手に取りやすい商品として企画開発」(外谷氏)としており、フィーチャーフォンからの乗換、シニアからジュニアまでのスマートフォンデビューなど、幅広いユーザーに向けてアピールしていきたい考えだ。