10月1日の「日本茶の日」にあわせて、清涼飲料水メーカーの伊藤園は日本茶の魅力を世界に届ける「日本茶の日 オンラインイベント」を開催した。
このオンラインイベントの中継拠点となる渋谷区神南の「JINNAN HOUSE」では、「お〜いお茶」の魅力を伝える体験型イベントエリア “お〜いお茶ハウス”が10月1日〜3日の3日間にわたって開設されている。 今回は一般オープンに先立って開催された“お〜いお茶ハウス”の内覧会に参加。日本茶を取り巻くコロナ禍の状況などについて聞いた。
コロナ禍の影響を受ける日本茶の生産者を応援
「日本茶の日」は1587年10月1日、豊臣秀吉が多くの人にお茶の魅力を広く開放するために京都・北野天満宮で開催したとされる大茶会「北野大茶湯」の日に由来して、伊藤園が2002年に制定した記念日。
例年、この日にあわせて伊藤園はさまざまなお茶の楽しみ方を提案するイベントを全国各地で開催してきたが、今年は形式を大幅に変更。北野天満宮をはじめとした国内6ヶ所のお茶にゆかりのあるスポットを映像でつなぎ、お茶の魅力・楽しみ方を提案するオンラインでのイベント開催となった。
10月1日開催の「日本茶の日オンラインイベント」は京都・北野天満宮を皮切りに、静岡や鹿児島の茶園、千葉、都内2ヶ所の合計6ヶ所のお茶スポットから映像中継。「日本茶の日の由来」から意外なお茶の活用法まで、お茶のさまざまな魅力や楽しみ方を提案した。
「リーフやティーバックなどで飲むお茶の量も増え、お茶業界は一見すると好調に発展していると思われがちです。しかし、日本ではこの20年で8割のお茶農家の方々が辞めており、茶の生産量はこの16年で3割減少しました」とは、伊藤園 マーケティング本部長の志田光正氏。
「伊藤園では日本茶の健康価値を発信しながら、お茶の葉作りから関わることで、農家の方々とともに商品開発をしてきました。しかし、単に自社商品のPRだけだと、より多くのお客様にお茶の魅力を届けるという意味では不十分な面もあります。そこで当社ではお茶のプロフェッショナルであり、お茶の伝道師であるティーテイスターの資格を持つ社員が中心となり、お茶の楽しさや健康価値を伝える取り組みを展開してきました」
ティーテイスターは同社が厚生労働省から社内資格制度として認められた第1号の制度で、現在は2289名の資格保有者が存在し、その活動は昨年から主にオンラインへシフト。若年層など、多くの人たちがお茶に興味を持つきっかけづくりをデジタルで推進してきたと語る。
「コロナ前はティーテイスターの活動が年間1500回ほどありましたが、コロナ禍でリアルでのイベント開催が難しくなり、昨年は46回にまで減りました。同時に緊急事態宣言などの影響で日本のお茶農家の資金繰りは厳しく、『肥料を買えないので、茶畑を畳む』といった農家さんの声も目立ってきています」
「デジタルとリアルの発信で業界を盛り上げたい」
「世界的にはこの10年で紅茶なども含めたお茶の生産量は1.5倍になるなど、お茶の文化が見直されています。実際に当社のリーフやティーバックといった家庭用商品は好調ですが、今回のイベントには飲食店の営業自粛などの影響も受ける農家の方々とお客様との接点を生み出し、業界全体を盛り上げていきたいとの思いもあります」
“お〜いお茶ハウス”は、約430年前に豊臣秀吉が開催した茶会の思想を現代に受け継ぎ、より多くの方々に「お茶のチカラ」を届けることがコンセプト。
渋谷区神南にある隠れ家ギャラリー・カフェ「JINNAN HOUSE」(ジンナンハウス)を、3日間限定でまるごと「お〜いお茶」にまつわる体験型イベントエリアに変貌させ、「お茶のチカラ」を感じられるさまざまなプログラムを用意する。
伊藤園では昨年5月以降、コロナ禍における在宅時間の充実につながる“お茶のチカラ”を紹介する「Ie Time OEN(家タイム応援)プロジェクト」を展開。今回のイベントはその集大成ともいえる企画となっているようだ。
「コロナ禍で我々が取り組んだことがいくつかありますが、その一つがこのプロジェクトで、ティーテイスター、デジタルを通じた発信していこうとスタートした取り組みです。SNSなどで日本茶を使ったオリジナルレシピを上げていくことを始めました。我々がエンゲージメント指数と呼ぶ、SNSの視聴数と『いいね!』の数を足した数字は、前年は65万人でしたが、この9月頭の段階で652万人となっています」
最終的なエンゲージメント指数の目標は1000万人とのことだが、オンラインイベントも開催しながら、あえて“お茶ハウス”というリアルの場を設けた背景については、こう説明する。
「コロナ禍以降、オンラインでの取り組みを強化してきた一方で、もともとの我々の最大の強みはティーテイスターや、生産者とつながるリアルの現場でもあります。今回のイベントは静岡や鹿児島のお茶農家の方をはじめ、そうしたリアルな場を繋いでいくものですが、東京でリアルに体験をできる場を用意することで、より興味を深めてもらいたい」
伊藤園ではお茶が備える価値を〝おいしさ"〝すこやかさ"〝たのしさ"の3つに定め、これらを「とどけ! お茶のチカラ」という「お~いお茶」のブランドメッセージにのせて世界に発信。
コロナ禍でお家の中で過ごす時間が増えているなか、お茶を使った料理やドリンクのレシピなどお茶の楽しみ方などを提案しながら、お茶業界のさらなる発展と市場拡大に挑戦していくという。
「若い人たちとの接点をつくっていく上では、商品を通じてどんな社会や環境を目指しているのか、生産者の思いやストーリーを若い人たちに伝えていくことが大切。それは今回の『日本茶の日』でも特に大きなテーマですが、今後も農家の方たちの思いやこだわりを伝え、さまざまなかたちでお茶に関わる人たちの生の声を届けたいです」