勝った藤井三冠は5勝1敗、敗れた横山泰明七段は3勝3敗の成績に

第80期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の6回戦、▲横山泰明七段(13位、3勝2敗)-△藤井聡太三冠(11位、4勝1敗)戦が9月30日に関西将棋会館で行われました。結果は106手で藤井三冠の勝利。5勝目を挙げ、A級昇級へ一歩前進しました。また、順位戦通算成績は44勝2敗という驚異的な数字になっています。


第80期順位戦B級1組リーグ表

相掛かりの戦型になった本局。後手番の藤井三冠は自ら角交換をした後、すぐに△3三角と角を再設置して主導権を握っていきました。角のにらみで桂頭攻めを狙いつつ、それを防がれると、今度は右桂を跳ねていって飛車・角・桂の攻めに切り替えます。

18時の夕休までに43手しか進まないスローペースな戦い。藤井三冠は「あまり経験のない形で、一手一手難しい展開が続いていました」。横山七段は「定跡とはかけ離れた将棋で、一手一手手探りで、とても難しい将棋でした」と振り返ったように、とても難解な中盤戦が繰り広げられました。

45手目、横山七段は今まで手持ちにしていた角を▲3七角と打ちました。9一の香取りをかけつつ、2筋の壁形を解消しようという手です。ところがこの角打ちを藤井三冠は見事な手順でとがめます。

△1五歩と端攻めをしたのが機敏な動き。次いで△4五桂と角取りに跳ね、桂交換から△5四桂と打ってさらに角取りをかけます。先手は角を2八に逃がしましたが、そこで△1六歩と取り込んだのが大きな手。角という目標物が近づいたことで、端攻めの威力がアップしています。

やむなく横山七段は▲1八歩と打って端を受けましたが、これで先手は歩切れに。そして▲4六歩と突かれて桂取りをかけられた局面で藤井三冠は一気にギアチェンジをします。

△2七歩▲同銀△2六歩▲3八銀で2筋に拠点を作ってから、ズバッと△7七角成で角を切り、△2七銀と打ち込んでいったのが厳しい手でした。藤井三冠は「角を切って攻めていったところは、進んでみると思ったほど成果があがってない気がしました。その前にもう少し穏やかな順を選ぶべきでした」と振り返りましたが、本譜の順でも形勢は後手優勢です。

角を取らせないように受ける横山七段に対し、藤井三冠は銀で金を入手して、さらに銀を寄せに再活用。金と成銀の2枚で横山玉にヒタヒタと迫っていきます。

横山七段は5筋にいた玉を9筋にまで逃がし、何とか反撃の機会を得ようと粘りましたが、藤井陣の金を1枚はがすのが精一杯。最後は角・金・桂に玉を包囲され、投了となりました。

相手が打った角を目標にし、流れるような攻めで敵陣に隙を作った後、角切りの強手で一気に敵陣を突破。そして時間がかかるものの着実な手を重ね、万が一にも逆転されないような丁寧な寄せ。本局は藤井三冠の快勝譜となりました。

この勝利で藤井三冠は5勝1敗の成績に。全12局のB級1組の前半戦が終了した時点で、6勝0敗の佐々木勇気七段(12位)、5勝1敗の千田翔太七段(7位)に次いで3位の位置につけています。

前半戦の戦いについて問われると、「まずまずいい形で折り返せたかなと思うので、後半戦もこれまで通り精一杯指したいと思います。昇級を目指せる位置だと思うので、残り6局全力を尽くしてそれを目指したいと思ってます」とコメント。次戦は郷田真隆九段と対戦します。

一方、敗れた横山七段は3勝3敗の成績に。今期が初のB級1組での戦いですが、ここまで互角に渡り合っています。これまでの戦いを問われ、「一局一局がやっぱり大変だなという感覚があります。指し分けなので、1つでも多く勝てるように頑張りたいと思います」と語りました。横山七段は次戦で三浦弘行九段と対戦です。

難解な中盤戦から一気に抜け出し、勝利した藤井三冠。写真は対局開始時のもの(提供:日本将棋連盟)
難解な中盤戦から一気に抜け出し、勝利した藤井三冠。写真は対局開始時のもの(提供:日本将棋連盟)