世界各国で徐々に新型コロナウイルスによる行動抑制から経済再開へと動いていく中で、日本は少し出遅れています。5月以降、ワクチン接種が進む中でも日本国内の新型コロナウイルスの蔓延は収まらず、8月には全国で1日当たりに25,000人の新規感染者を記録しました。
一方で9月に入ると感染状況は落ち着きを見せ、幅広く発出されている緊急事態宣言も10月以降は解除が予定され、徐々に本格的な経済再開となってきそうです。
そこで気になるのが、"アフターコロナ"で成長していく業種。今回は9月に発売された会社四季報・秋号を基に、コロナ禍での業績を振り返りながら、今後の躍進が気になるセクターを紹介します。
コロナ禍で流行のアウトドア、経済再開後も加速か?
新型コロナの流行中、地域ごとに違いはあったものの、度重なる緊急事態宣言の発令により、人々の行動は大きく制限されました。そのような状況下で、国内旅行などが大きく減少した一方、注目を浴びたのがキャンプでした。
キャンプを題材にするマンガが人気を集めたり、年末の流行語大賞にて「ソロキャンプ」が10位にランクインしたりと、大勢での活動が控えられる中でも楽しみやすいアクティビティとして関心が高まったのです。
キャンプに関するデータを見ると、1年間に1回キャンプを行った「オートキャンプ人口」は前年比で約30%の下落となったものの、初めてキャンプを行った人の比率を見ると過去5年間で最も高い約26%となっており、新規参入者が増加していることが見て取れます。
そのような環境下で、急速に売り上げを伸ばしたのが『スノーピーク』(7816)です。高価格帯のキャンプ用品やアパレル用品を製造販売している同社は、日本のみならず、世界的なキャンプ需要の増加の波に乗り、業績を拡大しました。
コロナ禍でも2020年12月期は売上高、利益ともに過去最高を更新した上、2021年12月期の上期(1~6月期)の段階で、昨年通期の営業利益、純利益の水準を上回っており、業績の堅調さがうかがえます。
株価も急上昇しており、コロナショック時の昨年3月には500円台であったのが、今年9月には一時6,000円台まで上昇しており、わずか1年で"テンバガー"を達成しています。
スノーピークを筆頭に、引き続きキャンプ関連には注目が集まりますが、緊急事態宣言が解除され経済が再開することにより、制限を余儀なくされていた学校での部活動をはじめ、さまざまなスポーツ需要が回復されることも予想されます。
その流れを踏まえると、キャンプだけでなく、ゴルフやスポーツなどアウトドア関連の事業を幅広く手掛ける、『ヒマラヤ』(7514)や『アルペン』(3028)にも期待が寄せられます。
3社ともに、緊急事態宣言下であった7月以降も株価は堅調に推移していましたが、割安・割高を測るPERの観点で株価を見ても、スノーピークが約55倍と比較的割高な水準まで上昇している中で、ヒマラヤ・アルペンは10倍程度となっており、相対的に割安と見ることもできます。秋以降もアウトドア関連には注目してみるといいのではないでしょうか。
オンライン教育など環境が大きく変わる教育業界
続いての気になる業種は、コロナ禍で急速に対応が求められたオンライン教育サービスや、大学入試改革など、外部環境の変化が著しい教育業界です。中でも学習塾はコロナ禍でも一時的な落ち込みから回復し、生徒数を伸ばしています。特に個別指導に力を入れる『東京個別指導学院』(4745)と『リソー教育』(4714)に注目です。
学習塾は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた業種の一つでありました。しかし、オンラインの対応や感染症対策を推し進めることで、昨年夏以降、生徒数を回復してきました。
その結果、リソー教育グループの5月末の生徒数は前年比で+22.0%、新型コロナ前の2019年比で+9.9%、同じく東京個別指導学院は前年比+18.0%、新型コロナ前の2019年比で+1.6%となり、新型コロナ前の水準まで回復しています。
業績面でも急速な回復を見込んでおり、売上高では両社ともに2022年2月期に過去最高の更新を見込んでいます。加えて利益面でも、リソー教育が2022年2月期で過去最高を更新する見通しを出しているほか、東京個別指導学院も24年2月期には過去最高を更新する見通しを発表しており、長期的に見ても業績拡大が期待されます。
また投資をする上で気になるのが、株主還元策、とりわけ配当利回りではないでしょうか。9月28日時点の株価から算出される配当利回りを見ると、『東京個別指導学院』(4745)が約3.9%、『リソー教育』(4714)が約2.7%となっており、東証に上場する平均の約1.9%より比較的高くなっているのも魅力的です。
教育業界というと、国内の年間出生数が85万人を割るなど少子化が深刻化し、先行きにマイナスのイメージがあります。一方で一人当たりにかけられる教育費が相対的に向上し、小学校や中学校の受験に臨む生徒が増えるという可能性があるほか、政府が「こども庁」の創設を検討するなど、国が後押しする分野でもあります。外部環境を見極めながら動向を見ていくといいでしょう。
ほかにも四季報から銘柄を探す方法はたくさん!
約3,800社ある中から個別の企業を探すのは大変。そう思う方でも簡単に銘柄探しができるように、会社四季報の巻頭には独自の軸でランキングのページが記載されています。今回の巻頭ランキングは4つ記載されていますが、中でも「前号比営業益増額率ランキング」と「V字回復ランキング」は取っ掛かりとなりそうです。
新型コロナにより事業環境が変わっていく中で、2022年度の業績を保守的に見積もっていた企業による上方修正が出てきており、これらのランキングから新型コロナの打撃から復活する企業を見つけることができるかもしれません。
年末にかけての日本株はパフォーマンスが高い期間とされます。「年末ラリー」が始まる前に、投資の準備をしてみてはいかがでしょうか。
Finatextグループ アナリスト 菅原良介
1997年生まれ、Z世代のアナリスト。早稲田大学 政治経済学部 経済学科に在学中は「株式投資サークルForward」の代表を務め、大学生対抗IRプレゼンコンテストで準優勝を獲得。2年間の長期インターンを経て、2020年Finatextに入社。現在はFinatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当。コミュニティ型株取引アプリSTREAM内で開催されるイベントのモデレーターも務める。