サムスンのフォルダブル(折りたたみ)スマートフォンは、横折りの「Z Fold」、縦折りの「Z Flip」の2モデルが存在します。同じ折りたたみとは言え、スタイルも位置づけもターゲットも異なるこの2モデルのうち、より手軽に使えるのが、今回紹介する「Galaxy Z Flip3 5G」です。

発売はNTTドコモとKDDI(au)から。価格はドコモ版が14万8,896円、au版が14万8,925円となっています。

  • Galaxy Z Flip3 5G

    一昔前の折りたたみケータイを彷彿とさせるGalaxy Z Flip3 5G

大画面スマホなのに、手軽に持ち歩いて便利に使える

Z Flip3は、開くとスマートフォン、折りたたむとコンパクトサイズに持ち歩ける、というフォルダブルスマートフォンです。フィーチャーフォン時代にあった折りたたみケータイと同じスタイルで、縦長のボディを中央から縦に折りたたむことで、長辺が半分のサイズになって持ち歩けるというのが特徴です。

  • 開いた状態

    開いた状態だと普通のスマートフォンに見えます。最近のスマートフォンでは珍しく、ディスプレイの端がフラットにはなっていませんが、折りたたんだ時にディスプレイ面同士が接触しないようにするためには仕方のないところでしょう

  • たたんだ状態

    そのまま閉じると半分のサイズになります

フィーチャーフォン時代と異なるのは、開くと全面がディスプレイのため、コンテンツの視聴がしやすいという点です。ディスプレイを内側に折りたたむため、大画面を安全に持ち運べますし、開けばスマートフォンとして普通に利用できます。

  • サイズ感

    手のひらに収まるサイズ感。厚みはありますが、持ち運びしやすいです

ディスプレイは6.7インチFHD+ Dynamic AMOLED 2X Infinity Flexディスプレイで、サイズや解像度は従来モデルと変わりませんが、最大120Hzのリフレッシュレートに対応。ゲームや画面スクロールがより滑らかになりました。

本体サイズは従来より少しだけコンパクトになって、開いた状態で72.2×166.0×6.9mm、閉じた状態で72.2×86.4×15.9~17.1mmというサイズ。重量は183g。開いた場合のスマートフォンサイズとしては、例えば同じ画面サイズのiPhone 13 Pro Maxが78.1×160.8×7.65mm、238gなので、より細身のボディで薄型軽量のスマートフォンです。

  • 背面

    背面を見ると折りたたむときのヒンジがあって、上下に分かれていることが分かりますが、一見すると普通のスマートフォンの背面にも見えます

それでいながら、持ち運ぶときは折りたためばサイズが小さくなり(ちょっと厚くはなりますが)、化粧のコンパクトぐらいのサイズになるので、小さな女性用のバッグでも収まりがよさそうです。

  • 折りたたんだ状態の右側面
  • 折りたたんだ状態の右側面
  • 折りたたんだ状態での側面。当然厚みはありますが、ディスプレイ同士の密着度が増してよりフラットになっています

  • 折りたたんだ状態のヒンジ部
  • 折りたたんだ状態の上端/下端部
  • ヒンジ部にはGalaxyロゴ。下端部にはUSB Type-Cとスピーカーがあります

  • 開いた状態の右側面
  • 開いた状態の左側面
  • 開いた状態だとヒンジと折りたたみ時にディスプレイを保護する出っ張りが見えますが、厚みは通常のスマートフォンと変わりません

大きくなったカバーディスプレイ

カメラの脇にある背面ディスプレイである「カバーディスプレイ」が新しくなったのは大きな変更点です。以前のカバーディスプレイは1.1インチの細長いものでしたが、Z Flip3では1.9インチに大型化しました。解像度は300×112ドットから512×260ドットになっています。

  • カバーディスプレイ非表示
  • カバーディスプレイの表示
  • カメラの横には一見すると何もないように思えますが、ディスプレイが配置されているのです

画面が大型化したことで、視認性が向上しました。カバーディスプレイには普段は時刻が表示されており、設定からイラストや背景画像を変更して自分好みに設定可能。2つの時計の同時表示もできるので、海外との時差を確認したいときには便利かもしれません(海外旅行中に日本の時間も確認したい場合に便利……と言いたいところです)。

カバーディスプレイは、左右にスワイプすることで、音楽再生中のミュージックコントロール/天気予報/今日のスケジュールといった機能も利用可能です。アプリを表示することができないのは残念です。

  • カバーディスプレイ設定1
  • カバーディスプレイ設定2
  • カバーディスプレイの設定画面。デザインを変更できるほか、ウィジェットとして音楽コントロールや天気予報、スケジュール、通知なども表示できます。ちなみに、イラストの左側にオレンジ色のドットがあるのは、通知があることを示しています

  • カバーディスプレイで通知を確認

    時刻表示の状態から、右にスワイプすると通知が表示されます。そのままタップすると内容が表示され、アプリを起動することもできます。アプリが起動したら端末を開いて内容を確認できます

  • スケジュールのウィジェット

    左にスワイプするとウィジェットを確認できます

他に、カメラのモニターとして使うことも可能になっています。これは後述しますが、とても使いやすく便利な機能です。

折り曲げて自立する新しい使い方

Z Flip3は何といっても、ディスプレイを折り曲げられるというのが最大の特徴です。横折りのZ Fold3と比較すると、ディスプレイがやや柔らかいタイプで、これはSペン対応の違いでしょう。そのせいなのか、中央の折り曲げられる部分があまり目立たず、触れた感触も凹みはそれほど大きくありません。そのため、普通に使っている限りは折りたたむことでの問題は感じません。

  • ディスプレイを斜めから見たところ

    とはいえ、斜めから見ると折りたたまれる部分の凹みはそれなりに目立ちます

  • 折りたたみ部分を正面から見たところ

    正面から見るとそれほど気になりません。折りたたみ部分を触れば確かに凹みは感じますが、通常、スマートフォンを使っていて1カ所だけを常に触り続けることはないので、実際の利用ではあまり気にならないでしょう

折り曲げる途中で固定するフレックスモードもサポート。スマートフォンをテーブルに置いて自立させることができて利便性が向上します。フレックスモードに対応したアプリだと、折りたたんだ位置を中心に上下に分割されたUIになり、折りたたみを便利に活用できます。

  • フレックスモード
  • フレックスモードの側面
  • 折曲げの途中で固定するフレックスモード。ノートPCのように自立した状態で画面を確認できます

例えばYouTubeアプリでは、上部に動画を表示し、下部にコメントが表示されます。コメントを見ながら動画を再生するといった使い方もできますし、自立させた状態で動画を視聴する場合にも便利です。

  • フレックスモードでYouTube視聴

    フレックスモードでYouTubeを視聴しているところ。上半分に画面を表示するので、動画の視聴サイズは小さくなります

全画面表示に比べて動画サイズは小さくなりますが、ある程度の内容は確認できますし、流し見で音を聞きながら要所要所で画面を見たい、という場合も、自立しているので確認しやすいのです。

  • 通常時のYouTubeの画面キャプチャ
  • フレックスモード時のYouTubeの画面キャプチャ
  • 通常時/フレックスモード時のそれぞれでYouTubeを視聴しているときに画面をキャプチャしてみました。右のフレックスモードでは、上下に分割した画面にあわせて、動画の上下に余白がとられているのがわかります

  • 通常時のギャラリーアプリの画面キャプチャ
  • フレックスモードのギャラリーアプリの画面キャプチャ
  • こちらはフレックスモードに対応したギャラリーアプリ。フレックスモード(右)にすると下半分にタッチコントローラーが表示され、スワイプで画像送り、ピンチイン・アウトで画像の拡大縮小などの操作ができます

また、横にして少し折り曲げれば、横置きでも自立しますし、大げさに言えばデスクトップ用の横長の湾曲ディスプレイのようなスタイルで視聴できます。いつでもどこでも自立させてスマートフォンを使えるのは便利なものです。

  • 横置きで少し折り曲げて自立

    少しだけ折り曲げれば、横向きでも自立した状態でスマートフォンが使えます

撮影の幅を広げる折りたたみスマホ

Z Flip 5Gの背面にはデュアルカメラを搭載。いずれも12MPのセンサーを採用し、超広角と広角の2種類のカメラとなっています。

  • 背面のカメラ

    背面のカメラは2つ

インカメラは10MPとなっていますが、Z Flip 5Gのメリットとして、インカメラを使わなくても自撮りが快適に行えるという点も挙げられます。

閉じた状態で側面の電源ボタンを2度押しするとカメラが起動し、カバーディスプレイがモニターとなります。メインカメラの表示をカバーディスプレイで確認できるので、わざわざスマートフォンを開いてインカメラを使う必要はありません。シャッターボタンは音量ボタンで代用します。

  • カバーディスプレイをモニターとして使う

    カバーディスプレイを使って自撮りが行えます

  • ジェスチャーで操作

    テーブルなどに置けば、三脚を使ったような自撮りも可能。角度を変えられるのも便利です。離れた場所からなら、ジェスチャーによるシャッター機能を利用しましょう。手のひらを見せれば、それを認識してシャッターを切ってくれます

画面サイズは小さいので全体の構図を確認することはできませんが、十分モニターとしての役割は果たしてくれますし、慣れれば自撮りや三脚代わりに使っての撮影には十分活用できます。端末を開くよりも手早く撮影できて、固定もできるので色々なシーンで役立つ機能です。

開いた状態でも、フレックスモードではカメラのUIが変化し、地面やテーブルなどに置いた状態で撮影しやすいようになります。ローアングルモードにすると、ライブビューが画面の下側に表示されるので、ギリギリまで閉じた状態でも構図を確認しながら撮影が可能です。

  • 通常時のカメラUI

    通常時のカメラのUI

  • フレックスモード時のカメラUI

    フレックスモードにすると下半分にカメラのコントロールが集約されます

  • ローアングルモード時のカメラUI

    ローアングルモードにするとライブビューが反転して下側に表示されます

地面に置いて下からあおるような撮影もできますが、どちらかというとウェストレベルで見上げたような写真が撮れる方が、普段の使い方としては便利です。

  • ローアングルモードの撮影画像

    地面すれすれからローアングルモードで見上げるように撮影

  • 普通にかがんで撮影した画像

    こちらの普通にかがんで撮影したものより、ローアングルモードのほうが迫力が出ました

カメラは12MPのデュアルカメラで、奇をてらったところのない、いたって普通のスマホカメラという印象。Galaxyらしいこってり目の色のりでSNS向きですが、従来に比べて特徴的な新たな撮影機能があるというわけではありません。

それでも、フレックスモードによる撮影の幅の広さはフォルダブルスマートフォンならでは。そうした撮影の楽しさ、便利さが光ります。

  • メインカメラで撮影
  • 超広角カメラで撮影
  • 同じ場所からメインカメラと超広角カメラで撮影

Galaxy Z Flip3 5Gは、「単にスマホを折りたたんだだけ」ではありません。コンパクトで持ち運びしやすいボディは、特に大画面と持ち運びやすさを両立させたい人にお勧めですが、折りたたむことで、従来のスマートフォンよりさらに使いやすくなる工夫が随所に盛り込まれている点が特徴です。

背面にはおサイフケータイもあり、折りたたんだ状態でもそのままタッチできるので、小さな財布を取り出してそのままタッチする、ぐらいの感覚で非接触の決済が可能です。

  • Felicaのロゴ

    背面にはFeliCaのロゴ。おサイフケータイやGoogle Payを使った非接触決済をサポートしており、全部入りのフォルダブルスマートフォンです

新たに防水にも対応しているので、お風呂に入りながらスマートフォンを置いてSNSや動画を楽しむ、といった使い方も快適。ケースなどのポップなアクセサリー類も用意されていて、特に女性をターゲットにしているような印象ですが、男女を問わず、折りたたみによる便利さを体験して欲しい端末です。