「折衝」は、話し合いを経てお互いの妥協案を見つけるという意味の言葉です。主にビジネスシーンで使われることが多いですが、社会人になって初めて見聞きしたという方も多いはず。
本記事では折衝の意味を、例文や類語との違いを踏まえつつご紹介します。あわせて折衝を含む言葉もまとめました。
折衝とは
折衝の読み方は「せっしょう」で、「利害が一致しない相手と、お互いが納得する解決方法を見つけるために話し合うこと」を指します。相手との駆け引きが必要となり、ビジネスはもちろん外交や政治分野など正式な協議の場でも使用されることが多い言葉です。
■利害が一致しない相手に使用する表現
折衝は主に、利害が一致しない相手を対象とした話し合いに使用されます。
お互いの要求を擦り合わせつつ、自分の利益に結びつけるための妥協策を見つけていくとの意味合いが強い言葉です。利害が同じ相手との話し合いを折衝と表現するケースはありません。
■由来:矛先を折る
折衝の語源は、利害の異なる相手が衝いた矛先を折ることです。利害の異なる相手からの攻撃を押し返す「折く(くじく)」と、衝く矛先をあらわす「衝」から生まれました。
折衝が登場するのは、中国の古典「晏子春秋(あんししゅんじゅう)」。斉の宰相である晏子の行動を評価した孔子の言葉によるものとされています。
■ビジネスでは話し合って折り合いをつける意味で用いる
ビジネスにおいて折衝は、企業間に生じた問題を解決するための協議をあらわすことが多いです。自分の立場が有利になるよう話を展開させ、折り合いをつけることが重要になります。
対象となる相手は社内の関係者や取引先、顧客などで、片方あるいは両者が個人の場合には折衝は使用しません。政治や資金調達などを目的とした、規模の大きな話し合いによく用いられます。
折衝の使い方
折衝には、妥協点を見つけるために駆け引きしながら話し合いを重ね、折り合いをつける、との意味があることがわかりました。次は実際に折衝を使用した文章を見ながら、正しい使い方を学んでみましょう。
■「折衝する」「折衝が行われる」が多い
折衝の主な使い方としては、「折衝する」「折衝が行われる」が定番です。「折衝できる」との形で使用されることもあります。
■折衝を用いた例文
ビジネスで折衝が使われるときの例文をまとめました。
・お客様と折衝することが私の役割です
・何度も折衝したおかげで、問題が解決しそうだ
・例の件について、これから先方と折衝が行われる
・幾度となく招待状を送っているのだから、そろそろ折衝の席に着きたいものです
折衝を含む言葉の意味
ビジネスシーンでは、折衝を含む言葉がしばしば使われることがあります。見聞きしたときに戸惑うことのないよう、意味とあわせて覚えておきましょう。
■折衝力
「折衝力」は、折衝する場面において要求を相手に伝える能力や話の落としどころを提案・調整するためのスキルのことです。折衝能力とも言います。
自分が有利になるよう話し合いを進めるために大切な能力で、相手の意見を尊重すること、代替案を提示する力などコミュニケーション能力の高さが求められます。
・まだ社会経験が浅いから、彼は折衝力が低い
・有利に話し合いを進めるためには折衝力を高める必要がある
■折衝業務
「折衝業務」とは、名前の通り仕事として折衝を行うことを指す言葉です。顧客と話し合い、取り引き内容を調整する役割のことを「顧客折衝」と呼び、主に納期や見積もりなどの合意点を探ることが必要になります。
自社と顧客、両者の利益を考慮する必要があるため、スムーズに話し合いが進まないケースもあるでしょう。
・明日はお客様との折衝業務がある
・顧客折衝がうまくいかず長引きそうだ
■対人折衝
「対人折衝」は、さまざまな人間関係のなかで、物事を有利に進めるための駆け引きのことです。相手は社内外の仕事関係者から家族まで、ビジネスもプライベートも問いません。
・対人折衝力を高めて、コミュニケーションを上手に取れるようになりたい
・彼は対人折衝のスキルがあり、他者との駆け引きに長けている
折衝の類語
駆け引きや話し合いの意味を含む折衝には、複数の類語が存在します。意味が似ているため使い方が混同することも多いですが、細かい点は異なるので注意してください。
■交渉
「交渉」の意味は、ある問題の解決に向けて相手と話し合いを行うことです。折衝の類語においてもっとも意味が似通っており勘違いされやすいものの、利害関係のあり方によって使うべき言葉が変わります。
折衝は利害が一致しない相手との駆け引きに使用される言葉ですが、交渉には利害関係は関係ありません。利害が一致した相手との話し合いには折衝ではなく、交渉を用いるのが適切です。
正式な協議には折衝が使われる一方で、個人間で行われる話し合いには交渉が使われるなど、状況によっても適切な表現は異なります。折衝よりも交渉のほうが使用できる場面は広いといえるでしょう。
・これから処遇改善に向けて労働条件を交渉する
・家電を安く購入するために、店員さんと値引き交渉した
■談判
「談判」の意味は、事件やもめごとを解決するための話し合いのこと。折衝と同じく利害が一致しない相手が対象ですが、決着をつけることが目的で、内容もトラブルを前提としています。
・近隣の工場と騒音問題を談判する
・賃上げしてもらえるよう膝詰め談判した
■渉外
「渉外」は、外国や社外の相手など、外部と連絡を取って行う駆け引きのことを指します。金融機関や百貨店などでは渉外担当といった言葉で使われることが多いです。
金融機関も百貨店も特定の顧客への営業活動を渉外と呼ぶことが理由で、一部の業界では営業部の代わりに渉外部の名称が使用されます。法律の分野にも、二か国以上との契約を意味する渉外契約などがあるので覚えておきましょう。
・銀行に勤めるなら渉外業務に携わりたい
・部署が変わって渉外担当になった
折衝の英語表現
英語には折衝と同じような意味を持つ単語が存在します。ビジネスシーンで英語を用いる機会がある方は、誤った言葉を使わないよう正しく覚えておきましょう。
■negotiation
折衝を英語で表現する場合には「negotiation」が使われます。日本語では少々意味合いが異なる交渉も同じくnegotiationと表現されるので、あわせて覚えておいてください。
・We will negotiate with customers from now on. (これから顧客と折衝を行う)
・After negotiations, the problem was successfully resolved. (折衝の末、問題は無事に解決した)
折衝は利害が不一致の場合に用いる言葉
折衝はビジネスにおいて、利害が生じる相手と駆け引きしながら妥協策を見つけることをあらわします。折衝力が高ければ高いほど、話し合いを有利に進められるでしょう。 交渉は利害と無関係、談判は問題解決のための話し合い、渉外は外部との交渉を指します。意味の違いに注意して使いわけるようにしてください。