「常務取締役」は、部長や課長の役職とは異なる「役員」という立ち位置で、従業員とは立場が異なります。多くは業務で成果を出してきた人が任されるポジションであり、会社の経営スキルをはじめ、部下から信頼される高い人間性が求められる役職です。
この記事では「常務取締役」の役割や仕事内容、年収について解説しますまた、「取締役」との違いや、「常務取締役」の英語表記なども紹介するので覚えておきましょう。
常務取締役とは
「常務取締役」は、業務執行において意思決定権がある「役員」という立場にあり、「部長」や「課長」など従業員の管理職とは異なります。
「役員」は会社法で規定されており、常務取締役を含む「取締役」以外に「監査役」、「会計参与」で構成されます。あくまで経営側のポジションであり、従業員とは明確に区別される役職です。
会社における序列は一般的には以下のようになります。
1 | 代表取締役社長 |
2 | 専務取締役 |
3 | 常務取締役 |
4 | 本部長(事業部長) |
5 | 部長 |
6 | 次長 |
7 | 課長 |
8 | 係長 |
9 | 主任 |
10 | 一般社員 |
「常務取締役」は、事業部を取りまとめる「事業部長」の上のポジションであることがわかります。ただし、役職の名称などは企業や組織によって異なるため、参考程度に覚えておきましょう。
常務取締役の役割
「常務取締役」は、「取締役」として会社全体の意思決定も行いつつ、会社のトップである社長を補佐するのが仕事です。「常務」として通常の現場業務も行うため、経営側と現場の中間的な役割を担います。
常務の仕事は会社ごとに異なり、複数の業務を任されていることも少なくありません。配下である部長や課長の管理業務も行うため、従業員をまとめる統率力と経営マネジメント力が必要です。
「常務取締役」と「取締役」の違い
「常務取締役」と似た名称として「取締役」があります。この2つのポジションについて解説します。
「取締役」は法的な正式名称
会社法では「取締役」「会計参与」「監査役」の3役が「役員」として定義されています。「取締役」は株式会社の業務にあたり、意思決定を行う役職です。「取締役」のトップは「代表取締役」であることから、経営面にて補佐を行う「常務取締役」の正式な役職名称は「取締役」となります。
また、役員という呼び方であっても「執行役員」は会社法で定められた役員ではないため、あくまで従業員の扱いです。会社によっては「取締役」と「執行役員」を兼任しているケースもあるので覚えておきましょう。
「常務」は社内外での肩書き
会社の役職は、会社法に基づいて決定されています。前述のとおり「常務取締役」の正式な役職名は「取締役」であり、「常務」は業務上の役割を明確化させるために会社側が付けた肩書きに過ぎません。
「常務取締役」は「常務」+「取締役」として、日常業務をこなしながら従業員の管理業務を担う2つの役割があります。
「常務取締役」と「専務取締役」の違い
「常務」と混同されやすいポジションに「専務」があります。より経営者に近い業務をこなす「専務」は、日常業務をこなす「常務」よりも立ち位置は上です。そのため、肩書きが「専務」となる「専務取締役」は、「常務取締役」よりも上のポジションになることを覚えておきましょう。
ただし、企業の規模や組織によっては「常務取締役」と「専務取締役」の立ち位置に差がない場合もあります。
常務取締役の年収
「常務取締役」は従業員ではなく「役員」と位置づけされるため、役員報酬が支払われます。役員報酬は、毎月同額の報酬を支給する定期同額給与が原則です。通常、従業員の給与よりも高く設定されるケースが多いですが、支給額を自由に決められるわけではありません。
会社法では、役員報酬について定款または株主総会の決議によって定めるとあります。人事院が発表した「民間企業における役員報酬(給与)調査」より平成30年の各役員の平均年間報酬をまとめてみました。
会長 | 副会長 | 社長 | 専務 | 常務 | 専任取締役 | 部長等兼任 |
6,354万円 | 5,246万円 | 4,622万円 | 3,189万円 | 2,461万円 | 1,944万円 | 1,703万円 |
常務取締役は、従業員に支払われる給与と異なり、役員報酬には残業手当など各種手当を含めることはできません。雇用契約ではなく、委任契約になるため雇用保険や労災保険も適用外です。
しかし、役員であっても賞与の支給や退職慰労金制度の導入など、待遇が充実している会社もあります。
常務取締役の英語表記
「常務取締役」を表す正式な英単語はありませんが、「Managing director」や「Executive director」として表現することが可能です。
Managing director
「経営の・取りしきる」という意味を持つ「Managing」と、「管理者・取締役」の意味を持つ「Director」を組み合わせて「常務取締役」と表現できます。ただし、企業によっては「専務取締役」の意味で使用されるケースがあることも覚えておきましょう。
Executive director
「管理者・取締役」の意味を持つ「Director」に、「執行する・経営などで実行する」という意味を持つ「Executive」を組み合わせて、「常務取締役」と表現することも可能です。
「Manager」や「Director」の前につく「Executive」は、上級役職であることを表します。ほかにも「Director」がつく役職や役位は、「常務取締役」以外に「部長」の英語表記にも使用されるため、間違えないように注意しましょう。
常務取締役は会社によって呼称が異なる
「常務取締役」は、管理職など会社で長く成果を出してきた人が任されるポジションです。「常務取締役」という名称は正式な名称ではなく、会社によっては「常務」や「取締役」と呼ばれることもあります。
将来、経営を担うキャリアアップを目指している方は、会社の仕組みや役職を理解することが大切です。まずは、ビジネスシーンで名刺を受け取ったときに失礼のないよう、この記事で紹介した「常務取締役」の立ち位置や役割について、しっかりと理解しておきましょう。