間もなく、iPhoneの新製品「iPhone 13」「iPhone 13 mini」「iPhone 13 Pro」「iPhone 13 Pro Max」の4機種が発売になります。2年ごとに大幅な改良を実施するiPhoneのルールを継承しており、今年のiPhone 13シリーズは昨年大きく一新したiPhone 12シリーズのマイナーチェンジ的な存在と考えてよいでしょう。
しかし、改良の中身を見てみると、カメラ機能やストレージ容量の底上げ、バッテリー駆動時間の延長など、マイナーチェンジというには大きな改良が施されていました。特にカメラは、初搭載のマクロ撮影やシネマティックモードで「ピント位置」や「奥行き」の演出を可能にしたのが注目。写真や動画に立体感や深みをもたらせる点が、SNSやYouTubeで一目置かれる作品を送り出したい若年層を中心に響くと感じました。
おもな改良点をおさらい
まず、今回登場したiPhone 13シリーズで注目すべき改良点をまとめてみましょう。意外と多くの有用な改良が施されていることが分かります。
機種名 | 注目の改良点 |
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iPhone 13/13 mini | 【カメラ】カメラ機能を底上げ。広角カメラに手ぶれ補正機構を搭載、センサーを大型化 |
iPhone 13/13 mini | 【ストレージ】ストレージ容量を底上げ。最小容量が128GBに |
iPhone 13 Pro/13 Pro Max | 【カメラ】超広角カメラがオートフォーカスに対応 |
iPhone 13 Pro/13 Pro Max | 【カメラ】被写体に最大2cmまで寄れる広角マクロ機能を搭載 |
iPhone 13 Pro/13 Pro Max | 【カメラ】望遠カメラを光学3倍(35mm判換算で77mm相当)に望遠化 |
iPhone 13 Pro/13 Pro Max | 【ディスプレイ】Super Retina XDRディスプレイにProMotionテクノロジーを追加、10Hz~120Hzの可変リフレッシュレートに対応 |
全機種共通 | 【カメラ】動画撮影に、撮影後にピント位置が変えられるシネマティックモードを追加 |
全機種共通 | 【カメラ】写真撮影に、「鮮やか」「暖かい」「冷たい」など4種類のスタイルを選ぶだけでトーンを変えられる「フォトグラフスタイル」モードを追加 |
全機種共通 | 【バッテリー】バッテリー容量の拡大や省電力機能の進化で、バッテリー駆動時間を延長 |
iPhone 13 Proシリーズのマクロ機能、ひとクセあるが楽しい
カメラ機能で特に注目なのが、iPhone 13 Pro/13 Pro Maxに追加されたマクロ撮影機能。最大約2cmまで被写体に近づいて接写でき、小さな物体を大きく鮮明に写し取れます。マクロ撮影は焦点がごく近い場所になるので、ピント位置の前後を大きくぼかして立体感のある表現にできる点も魅力といえます。
撮影はシンプルで、広角カメラでの撮影中にiPhoneを被写体にググッと近づけると、超広角カメラを用いたマクロ撮影モードに自然に切り替わり、接写が可能になる仕組み。いちいちマクロモードなどに切り替える必要がないのは、アップルらしいといえます。
肉眼で見るよりもはるかに大きく写せるマクロ機能は、身近にあるものを撮影するだけで新しい発見があって楽しいもの。子どもと一緒にあれこれ撮影すれば、新しいことへの興味が芽生えそう。ネイルアートやフィギュア制作を楽しんでいる人、仕事で電子部品などの小さなパーツを大きく撮影したい人にとっても待望の機能といえるでしょう。
注意したいのが、接写の際はパースがついて被写体がゆがんでしまうこと。マクロ撮影時は超広角カメラを用いつつ、画角的には広角カメラと同等になるようにデジタルズームで調整しているようで、本来の超広角カメラほどの極端なゆがみではありませんが、被写体によっては気になりそうです。ちなみに、最初から超広角カメラにしていても2cmまでの接写はできますが、13mmの超広角なので被写体がかなりゆがんでしまいます。
ゆがみ以上に気をつけたいのが、iPhoneの影が被写体に落ちやすいこと。影が落ちて被写体の一部が暗くなると失敗感やダサい印象が増すので、周囲の光の状況を見ながらできるだけ斜め上方向や横方向から撮るのがよいでしょう。また、意外と手ブレしやすいので、しっかりiPhoneをホールドすることも肝心といえます。
撮影できる被写体やシーンをある程度選ぶ機能といえますが、別途クリップ型レンズなどを装着する必要なくマクロ撮影に臨めるのは魅力。今後、InstagramなどのSNSで趣向を凝らしたマクロ写真が続々とお目見えし、マクロ撮影がブームになる可能性もあります。望遠側のカメラでマクロ撮影ができ、被写体からある程度離れても大きく写せる「テレマクロ」に対応すれば、撮影シーンはグンと広がるはず。将来のモデルでの改良に期待しましょう。
iPhone 13 Proシリーズは超広角カメラがAFに対応
前述のマクロ撮影機能は、iPhone 13 Pro/13 Pro Maxの超広角カメラにオートフォーカス機構が搭載されたことで実現できたものです。
従来の超広角カメラはピント合わせの機構がないパンフォーカスだったので、手前から奥までフォーカスが合った平坦な仕上がりになりがちでした。今回、オートフォーカスが備わったことで、背景ボケや前ボケを生かした立体感のある表現も可能になります。ただし、超広角でセンサーサイズが小さいこともあり、ボケを生かすには構図を工夫する必要がありそうです。
iPhone 13 Proシリーズは望遠カメラが77mm相当に延びた
iPhone 13 Pro/13 Pro Maxの望遠カメラは、両機種とも従来よりも少し望遠寄りになり、77mm相当の中望遠に改良されました。iPhone 12 Proは52mm、iPhone 12 Pro Maxは65mmと、望遠というにはいささか中途半端な焦点距離だったので、ポートレート撮影や圧縮効果を生かしたスナップ撮影がはかどりそうです。
焦点距離が延びたことで、レンズの明るさが従来のF2.0(iPhone 12 Pro)とF2.2(iPhone 12 Pro Max)からF2.8に若干暗くなっています。夜景など薄暗いシーンでは感度が上がって解像感が損なわれる場合があるので、静止している被写体ならナイトモードを積極的に活用するのもよいでしょう。
奥行き感のある動画が手軽に撮影できるシネマティックモード
まったく新しい機能として、iPhone 13シリーズの4機種すべてに搭載されたのが「シネマティックモード」です。動画撮影機能の1つで、フレーム内にいる人物などの被写体を検知し、フォーカスを合わせる人物をスムーズに切り替え、映画のように奥行き感のある動画が撮影できます。人物が横を向いたり後ろを向いたことを検出すると、その方向にいる人物にサッとフォーカスが移るので、ストーリーに合ったフォーカス移動が自動でなされるのが目新しい点といえます。
目を引くのが、写真のポートレートモードのように奥行き情報が保存されるので、撮影したあとにフォーカスを合わせる被写体やボケの大きさを自由に調整できること。撮影担当が1人だけでも、映画のような動画を撮影できるのです。
シネマティックモードは、ストーリー性のある映像を撮りたい場合に有効なので、「僕には必要ないかな」と感じる人もいるでしょう。しかし、iPhoneを三脚に据えたままで表現力の高い動画が撮影できるので、個人や少人数でYouTubeやSNS向けの動画を撮影している人にとっては腕利きのカメラマンが加わるようなもの。YouTuberやビデオブロガーは注目の新機能となりそうです。
ちなみに、人物だけでなく猫にもAFのフレームが合い、フォーカス位置の変更ができました。また、シネマティックモードは背面カメラだけでなく、前面のTrueDepthカメラを用いた自撮りでも使えます。
人物撮影でも違和感なく写真のトーンを変える「フォトグラフスタイル」
もう1つ、4機種すべてに搭載された新機能が、「鮮やか」「暖かい」「冷たい」など4種類のスタイルを選ぶだけで写真のトーンを変えられる「フォトグラフスタイル」です。写真全体の色合いを変えてしまうフィルターとは異なり、人物の肌や空のトーンは変わらないので、違和感のない仕上がりになるのがポイント。これは、被写体や撮影シーンを細かく解析しているA15 Bionicならではの機能といえます。
iPhone 13シリーズでもっとも大きな改良がもたらされたカメラ機能を中心にレビューしてきました。「手持ちのiPhoneでも十分きれいに撮れるので、カメラはもう進化しなくてもいい」と考える人もいるかと思いますが、iPhone 13シリーズのカメラ機能はマクロ撮影やシネマティックモードなど「これまでのiPhoneでは撮れなかったものが撮れる」ようになった点で画期的だといえます。特にシネマティックモードは、プロ向けのシネマカメラがないとできなかった撮影がiPhoneでできるということで、今後のYouTube動画やSNS動画のトレンドを変えてしまうかもしれません。
奥行き感のある写真や動画が楽しめるようになったiPhone 13シリーズの奥深さ、多くの人に体験してほしいと感じます。新次元のカメラ機能を満喫するならば、iPhone 13 Pro Maxと同じカメラ性能をコンパクトなボディに詰め込んだiPhone 13 Proがベストチョイスといえるでしょう。