安い初任給でアパートの家賃をまかなわなければならない地方出身者にとって、親が勤務地に暮らしていて親元から通勤でき、住居費や高熱費を節約できる人は、うらやまして限りだと思います。実家暮らしができる人はこの幸運を人生の中で最大限生かしたいものです。しかし多くは、その余力は日常の消費に使われてしまうのではないでしょうか。余力を今後の人生により良い形で生かすには、どのようなことに注意したらよいでしょう。
実家暮らしで生まれた経済的余裕金額を正確に把握しよう
現実に実家暮らしで生まれている家賃や光熱費などの節約額を正確に算出してみましょう。アパート暮らしで自活している同僚等の家賃や光熱費を参考に正確に算出してみます。そのうえで、年間いくらになるか、10年でいくらになるかを算出します。かなりの額になると思います。すべて親負担だとすると、おそらく余力額は年間100万円を超えるでしょう。
※一人暮らしに必要な費用の項目は過去のレポートを参照ください
「一人暮らし」は実家暮らしに比べてどれくらいお金がかかる? - FPが解説
下図はAさんが新卒と同時に年間20万円ずつ運用率4%で投資に回した際の65歳時の受取金額です。33歳で新規積み立てはやめて、それまでの原資のみを65歳まで運用します。
一方Bさんは37歳から同額積み立てを開始し65歳まで継続します。Aさん、Bさんともに65歳時の運用残高はおよそ1000万円です。Aさんが34歳以降も積み立てを継続すれば、65歳時の資産は2000万円を超えます。Aさんの33歳までを実家暮らしと考えれば、20万円の余力は難しくはないはずです。「運用の価値時間」とは、年月が価値を生み出してくれることで、当然若い時の蓄財の方が価値を生みだす期間が長くなり有利なのです。
実家暮らしで生じた余力だけでなく、ボーナスなどの臨時所得や禁煙などで生じた節約金額を別会計でプールしていけば、相当な金額が余力として生み出すことができるはずです。有効に生かすポイントは余力金額を正確に把握することなのです。
生活を広げ過ぎないことが大切!
本来は、実家住まいでも社会人になったら、相応の家賃や光熱費、食費を分担するのが原則でしょう。しかし、各家庭によって考え方はいろいろありますので、負担度合いはさまざまで、まったく負担しないケースもあるでしょう。仮にそれらをすべて相応の負担をしたとしてもアパートを借りるよりは割安であることには変わりがありません。
余裕分が日々の何気ない消費に消えてしまっては意味がありません。せっかく生まれた余力分は、きっちりと別会計でコントロールし、生活を広げ過ぎない工夫をしましょう。生活が広がってしまっては、結婚して独立したときに窮屈になりかねません。余力は自分の実力でなく、親の実力によるものですのですので、社会人たるものそれはしっかり自覚しておきましょう。
実家暮らしには明確な目的が必要
余力金額(=自分の強み)を正確把握すれば、次はそれをどう生かすかに目が行くはずです。長く商品開発に携わってきましたが、商品開発のポイントは弱点をカバーすることも必要ですが、他社の追従を許さない強みを最大限活用することなのです。「不測の事態に備えて少しで多くの預貯金を蓄える」「スキルアップの勉強の費用に充てる」「少しでも若いうちに持家を取得したいので、その費用を準備する」「起業の予定があるので、その資金に」……しっかりした人生設計があり、余力の金額を正確に把握すれば人生はより豊かになるはずです。
独立心を育みグローバルな競争力をつけよう!
住宅メーカーでのセールスの仕事やファイナンシャルプランナーとして相談業務を通じて、多くの家族を見てきました。その中で親の支援頼りの人には何かしらの危うさを感じました。上手に住まいづくりを行う上で大切なのは、しっかりした生活設計と共に営業や設計担当、工事担当などの様々な専門家とコミュニケーションをとり、上手に活用していかなければなりません。バランス感覚が大切なのです。
私は、子供には幼いころから「大学は基本的に自活して行け」と育てるべきだと考えています。世界的に見れば、大学は自活して生活費や学費を賄うのが一般的な国も相当数あるように思います。これからの時代親は早くから老後の資金を蓄えなければなりません。またグローバル化が進む時代に、早くから自立して生きていっている世界の子供たちと競争しなければなりません。親がかりでのほほんと過ごしてきた日本の子供達は果たして、そうした世界の子供達と太刀打ちできるでしょうか。実家暮らしは自分磨きの上では不利な面もあるかもしれないことを念頭に置いておいた方が良さそうに感じます。