NTTデータ経営研究所は9月15日、従業員50名以上の企業に勤めている1,022名(男性515名、女性507名)を対象に実施した「働く人のメンタルヘルスとサービス・ギャップの実態調査」の結果を発表した。
同調査の目的は、メンタル不調者のうち、新型コロナウイルスのまん延以降にストレスや悩みが増加した人の実態を明らかにし、メンタルヘルス領域におけるサービスのうち、多くの企業において実施されているストレスチェックテストと社内外の相談窓口へ着目し、サービス・ギャップの実態を明らかにすること。
同調査では、WHO-5精神的健康状態表を用いて調査参加者の精神的健康状態(メンタル不調の程度)を測定し、合計点数が13点未満の参加者を「精神的健康度が低い」と見なした。集計の結果、463名(45.3%)において精神的健康度が低い状態にあることが分かったという。
さらに、「コロナまん延以降にストレスや悩みが増加しましたか」と尋ねたところ、精神的健康度が低い人の6割に当たる277名がコロナまん延以降にストレスや悩みが増加していることが分かった。
特にコロナのまん延以降にストレスや悩みが増加した人は、長く企業に勤め、テレワークを定期的に行える環境におり、同居者もいる40-50代だった。生活が安定しており社会的に成功しているように見える人々において特にストレスや悩みが増加していることが明らかとなった。
この結果について、同社は「40-50代で雇用が安定しており、テレワークができて同居者もいるという状況は、安定した生活を送っているように考えられる。しかし、昨今の社会情勢の大きな変化に伴い、これまで安定した環境に長くいた分、かえって環境変化に対するストレスや悩みを感じやすくなっている」と推察している。
同調査では、精神的健康度が低く、コロナまん延以降にストレスや悩みが増加している人々における、メンタルヘルスケアへのサービスやギャップの実態についても聞いている。
精神的健康度が低い人々のうち、コロナまん延以降にストレスが増加した群(以下、ストレス増加群)とストレスの増加はみられない群(以下、ストレス増加なし群)とで比較分析を行った。その結果、ストレス増加群はストレスチェックテストや社内外の相談窓口を認知しているものの、回答したり利用したりすることへ抵抗を感じていることが分かったとしている。
ストレスの増加有無にかかわらず、6・7割が社内外の相談窓口を利用したことがないことも明らかになっている。
こうした結果について、同社は「健康経営の一環で多くの企業がメンタルケアサービスを提供しているにもかかわらず、利用されない要因として、損失回避や認知不協和、限定注意などの認知バイアスが関わっている可能性があるため、ナッジの活用を含め行動科学に基づく行動デザインによりサービス利用を促すアプローチが必要だと考えられる」とコメントしている。