最近の人気系"男子"を聞かれたら「ポンコツ」だと即答をする。普段は常用漢字も読めない、会話もままならないようなおバカっぷりを発揮している彼ら。でもスイッチが入ると途端に表情が変わる。ここぞ、という時に決めることができなくても、どこか憎めない可愛らしさがある。そのような男子のことを示唆するのが"ポンコツ系男子"だ。
じわじわと来ているこのブーム、実はたくさんのスターが牽引し続けてきたものである。その傾向と対策を、昭和生まれの知識で探っていこう。
多忙な女性たちの心を救済するのは、彼らだ
先日も某女性ファッション雑誌の打ち合わせをしていた時に、"ポンコツ系男子"の話題で女性スタッフ同士が盛り上がった。
「ポンコツ=おバカだけど、イチから育てられるのは母性をくすぐられる」 「ポンコツだと思っていたけどステージに立ったら、即スイッチが入る姿を見るとギャップにやられる」
これはアイドルオタ活で顕著に見られる傾向で、ブレイク前から推しを青田会で発掘して応援する行動に似ている。最近、世間を騒がせている『プロデュース101』(TBS系)や『スッキリ』(日本テレビ系)で放送されていた『THE FIRST』は、傾向をそのまま番組が表している。
「肉食系とか男らしい人は一緒にいると疲れる。ならポンコツに癒されたい」
男女というカテゴライズはもうほぼ消滅した時代なので、異性に求める傾向も頼りたいから、癒されたい願望へと変わっている。少し前まではポンコツが"できない奴"と片付けられていたこともあっただろう。それが魅力になるのだから、本当にいい時代になった(しみじみ)。
この"ポンコツ系男子"の代表格として推薦したいのが、相葉雅紀さん(嵐)である。(記憶の限りで)突飛な食レポを始めてみたり、パソコンのキーボードが打てないととぼけてみたり、見事なポンコツぶりでその場を驚かせていた。でもその様子が30代の男性なのに愛らしく見えていたことも事実。
彼の「ヒヒヒヒッ」という特徴的な笑い声を思い出すと、純度の高さとは偉大だと思い知らされる。"愛されポンコツ"を携えて、今では多くのレギュラー番組を持っている。さらにこの夏はオリンピックのキャスターも務めたという、グループ内……というよりはエンタメ界の頂点に上り詰めた。凡人には持つことのできない力だ。
そして相葉先輩に追いつけ、追い越せとばかりに事務所の後輩たちも、鮮やかなポンコツぶりを見せ始めている。もう言わずもがな、であるがKing & Princeのメンバーはセンターの平野紫耀さんを筆頭にして、私たちの予想を軽く飛び越えてくる。この夏も24時間テレビの番宣でよく見かけたけれど、大物司会者とまったく会話が噛み合っていない様子が散見された。でも見ていて楽しかった。コロナ禍で混沌とした最中を、富士山の湧水のように心を潤わせてくれた。
他にも藤井流星さん(ジャニーズWEST)や、俳優の山崎賢人さんなどそうそうたるイケメンのポンコツぶりは検索すればするほど情報があふれてくる。わたしも天然だと噂されていたタレントさんたちのインタビューで「……今……なんと?」と、突飛な発言に時間が止まった経験が何度かある。
ポンコツ男子、ついにドラマで頭角を表す
ポンコツでもいいのだ。だって彼らはスイッチを入れた瞬間に、経済を動かすスターになる。いや、ポンコツ中だって十分に動かしている。
そんな"ポンコツ系男子"ブームもついにドラマ界へ進出してきた。それが『推しの王子様』(フジテレビ系)だ。会社社長が拾ったのは、今にも乙女ゲームに出てきそうな五十嵐航(渡邊圭祐)。フリーターで借金を背負った生活をしてきた彼は"sausage"を「……サウサゲ?」と読むほどのポンコツ男子だった。それが社長・日高泉美(比嘉愛未)に見出されて、元々備わっていた絵画技術の才能を発揮して、ゲームクリエイターに育っていく。
最終回を控えて航は"仕事ができる男"までに成長。そう、ポンコツ男子は全般的に順応性が高い。何か材料を与られると、想像の範疇を超えた結果を出してくる。この作品には、そういったポンコツのおいしい部分がたっぷりと描かれていた。ラストは頼むから社長と年齢差のある恋にどっぷり落ちてほしいと願いつつ、毎週放送を楽しみにしている。
さてオーディションやバラエティー番組、ドラマとエンタメ界へ着々と進出している"ポンコツ男子"ブーム。芸人から生み出される笑いが養殖とするのなら、彼らが放出している和やかさは天然だ。ここからどの分野へ浸透していくのか、その様子を見守りたい。