そろそろ全国に「すき焼き前線」が到達する頃だろう。今年は9月から一気に気温が下がったので、例年より早くすき焼き前線を迎える地域も多いはずだ。ちなみに、東京はまさにすき焼き前線ド真ん中。そこで先日、この流れに乗り遅れまいと、さっそく近所ですき焼きが食べられるお店を探し、サクッと食べてきたのだが……ちょっと笑えるほど美味しかったので、ここにその一部始終を記したい。

そのお店とは、和食のファミレスチェーン「華屋与兵衛」。関東を中心に39店舗を展開しているので、ぜひ近くのお店で食べてほしいのだが……いやほんと、その美味しさったら、今思い出してもムフフと笑みが溢れるほど。これを知らずしてすき焼き前線をやり過ごすなんて、損どころの話じゃないですぞ。

そもそも「すき焼き前線」とは何か

「いや、その前に『すき焼き前線』ってなんだよ!」というツッコミが聞こえてきそうなので、簡単に説明しよう。

すき焼き前線とは、すき焼きが売れ始めるタイミングを示す「商品前線」のひとつで、ビッグデータマーケティングを扱う企業・True Dataがそのデータを発表している。今年はというと……

  • (データ出典:True Data)

このような予測になっている。8月にすき焼きが食べたくなるかというと微妙ではあるが、9月半ばとなった今はもう、(少なくとも関東までは)美味しくすき焼きが食べられる時期に差し掛かってきたと言えるだろう。

かくいう筆者も最近まで「すき焼き前線」なる言葉など知らなかったのだが、一度知るとこうして使ってみたくなるし、実際に食べたくなる。しかし、9月半ばではまだすき焼きを展開している飲食店も少なく、かと言って自分で作るのもどうかと悶々としていたのだが、なんと華屋与兵衛が早くもすき焼きを出しているというではないか。

これは行くっきゃない。

「華屋のすき焼き定食」が美味しすぎて優勝した

現在、華屋与兵衛の平日ランチでは「華屋のすき焼き定食」が味わえる。

肉は国産牛と黒毛和牛で選択可能で、えーっと、値段は……

税抜990円、税込だと1,089円からだと? う~ん、これはなかなか良心的なプライスに思えるが、質が少し不安だな。と言っても国産だから、それなりにいいはずだ。量が少なめなのかな? でも、追加料金を払えば、肉の大盛り(1.6倍)にも対応してくれるらしい。

今日はとりあえず最もベーシックな「華屋のすき焼き定食」の国産牛、肉の量は普通盛りで注文。店員さんによると、ライスの大盛りは無料で、プラス110円で味噌汁をしじみ汁か冷やし蕎麦(小)に変更可能らしい。蕎麦か~、いいね。食べたいかも。じゃあ、それに変更で。

すき焼きがくるまでの間、パラパラとメニューをめくっていると、他にも美味しそうな牛肉料理がチラホラ。特にこの「黒毛和牛と魚介の陶板焼き御膳」なんてスゴそう……肉にこんなにサシが入っちゃって。しかも1,639円! これも内容を考えたら、お手頃価格に思える。

店員さんによると、「釜めし」もお店のウリなのだそうだ。生米から炊き上げるんだってさ。すごい、本格的。うわぁ、これも食べてみたいな~。松茸の釜めしもある。美味そう……。

数分後、ゴトゴトと何かが近づいてくる音が。

こ、これは……!! 配膳台!! ヤバい、この料亭のような演出、なんかテンションが上がる。

そうして目の前に並べられたのがコチラ。

まずは、カセットコンロに乗せられたすき焼き鍋。

そして、大盛りのライスとお新香、生卵。

小サイズの蕎麦。そして……

なんと、別皿にまた国産牛が! ちょ待てよ、豪華過ぎやしないかい? 「量が少ないのかも」なんて思ってたけど、全然そんなことない。むしろ、その逆である。あ、さては味か? 豪勢な見た目に反して、味は普通なのかも?

まぁいい。そんなことより、カセットコンロにカチッと火をつけ、鍋が煮立つまでの間に生卵を溶いておこう。おっと、ツヤと弾力に溢れている。新鮮なのだろう。実に美味しそうな卵だ。

おっ、鍋がいい感じにグツグツいってきた。ああ、湯気から甘じょっぱいいい香りが漂ってくる……!!

よし、ここまできたら、あとはしゃぶしゃぶして……

よ、よし……こんなもんか? う、美味そうすぎないか? ゴクリ……

これを生卵にくぐらせて……では、いただきます。

こ、これは……ゆ、優勝だ。今、このすき焼きは、俺のなかの何かに優勝した。

うっっっっま!! 何これ!? いや、もちろん国産牛を注文したから、これは当然国産牛なんだろうけど、めちゃくちゃ美味いぞ。

口に入れた瞬間に舌でトロけるタイプではないが、実に絶妙な柔らかさ。むしろA5ランクの霜降り牛よりも食べごたえがあるので、こちらのほうが好みだという人も少なくないのではないだろうか。しかも、肉が一枚一枚かなり大きい。噛みしめるたびに口中に広がる肉の濃厚な旨みがもうたまらん……ああ、うっっっめ~。

ライスとの相性も最高。割り下の甘さとしょっぱさのバランスもめちゃくちゃいいのだろう。タレの味が染みた肉や野菜、そしてこれらをまろやかに包み込む生卵、完璧である。食欲がどんどん湧いてくる!!

肉以外の食材は、白菜、舞茸、えのき、三つ葉、長ねぎ、水菜、焼き豆腐。野菜はシャキシャキと歯ごたえがよく、味付けもしっかりしているので、これだけでもご飯が進む。

よし、肉を追加だ。全部で合計5~6枚くらいあるようだ。一枚のサイズが大きいので、一口ごとの満足度もものすごい。

ハッキリ言って、1,089円という値段設定はバグっているとしか思えない。

今、牛丼チェーンなどでもすき焼きを出すお店が増えている。値段は大体700円くらいだろうか。もちろんそういうお店で食べるすき焼きも美味しいのだが、プラス300円で華屋与兵衛のすき焼きが食べられるなら、間違いなく300円でランクアップさせるだろう。

1,089円でこれが食べられるなら、本当に安いものだ。個人店なら1500~600円くらいは取るだろうし、それでこの味、量なら、決して高いとは思わない。価格と味のバランスを考えたとき、華屋与兵衛の「華屋のすき焼き定食」は確実に優勝である。なんでもっと話題になっていないんだ? 不思議で仕方がない。

ちなみに、蕎麦も美味かったことも記しておこう。蕎麦は本格派の二八蕎麦で、しっかりとしたコシと蕎麦の風味が感じられた。これで110円は安い。すき焼きと合わせて、もう本当に満腹である。

こうして、今年はすき焼き前線の最前線ですき焼きを堪能することに成功。まだまだすき焼きを出す店は少ないが、華屋与兵衛なら間違いのないすき焼きを早くも味わえる。肉の量を増やすもよし、黒毛和牛にランクアップするもよし、旬の味覚を存分に味わってほしい。