現場が主導するインターン、必要なことは?
同社の今回の試みは、人事部門ではなく採用ニーズのある部署がカリキュラムの策定、進行などを行っているという。部署ごとのニーズ、スキルにあった内容にするためだ。
採用ニーズがある部署に、人事部門からインターンの受け入れを打診し、受け入れが決定した後に、人事部門からインターンのカリキュラム作成のガイドラインを示し、研究内容といった中身の部分は部署ごとに検討したという。
ガイドラインには、「事業理解ができるようなコンテンツを入れる」「クライアントとの打ち合わせに入れる」「1on1の面談を入れる」といったものから「オンライン会議ではできるだけ顔を見せる」といった具体的なアクションまで記載をしている。
そのため、現場には少々負担が増えるような気がするシステムと感じるが、インターンを取り仕切る人事部門ではどのようなことに気をつけたのか。
前出の大河原氏は、「人財獲得におけるインターンシップの重要性を各部門に理解してもらうことが1番大事だ」とする。
優秀な学生ほど入社してから自分が何ができるのかを意識しているため、ジョブを明確にし、事前に共有することが採用の観点でも重要だという点や、“適所適材”の観点でジョブと人材を見える化し、それをマッチングさせていくことの重要性を現場と共有することを大事にしたとのことだ。
採用ニーズのある部署に、“ジョブを理解したうえで就職を希望する学生“を採用することがミスマッチの防止や優秀な人材確保に、必要な投資であると説明したという。
また、他社で実施しているインターンと比較し、3週間と比較的長い間にわたって実施するため、学生に対しては、コミュニケーションの面に関して重点的に配慮したとのことで、ガイドラインにも、コミュニケーションの留意点を数多く盛り込んだとする。
そこには同社の「実際のジョブを経験し、社員とも接することで自分のキャリアを意識し、会社を選択してほしい」という想いがあるようだ。
現在は、技術職のみのジョブ型インターンの取り組みだが、今後はさまざまな職種に広げていく計画だとしている。
学生はこの企業で本当に自分がやりたいことができるのかを、企業側は職務と学生の適合を見極める期間としてジョブ型インターンが浸透すれば、双方の“こんなはずじゃなかった”の解決につながるのではないだろうか。
働く人がより働きやすい企業へ、日立が進めるこうした取り組みは、日本企業の人財活用のモデルケースとなれるのか、今後の動向に注目していきたい。
筆者注
本文中に「人材」と「人財」という表記がありますが、日立では従業員を大切な財産と考えることから「人財」との表現を使用しており、同社の考えや、部署名には「人財」の表記を使用しております。