ビザ・ワールドワイド・ジャパンが、キャッシュレス化に関するオンライン説明会を開催。コロナ禍における業界の概況やキャッシュレス化への取り組みなどについて同社のスティーブン・カーピン代表取締役社長が登壇した。
衛生面でも注目される「非接触決済」
カーピン代表取締役社長は、以下のように語った。「Visaのビジョンとは、世界中どこでもいつでも、誰からも選ばれ受け入れられる決済手段となること。そして、経済の発展のためにもっとも革新的で安心かつ安全な決済処理ネットワークを通して、世界を繋ぐことをミッションとしている。
そしてVisaは単なる決済手段ではなく、誰でもどこでもグローバルな経済にアクセスできるようにするネットワークであり、デジタルファーストな現代の商取引において公平かつ公正であることを約束する。そのネットワーク構築こそが社会にプラスになるはすだ。
昨今のコロナ禍によって、企業個人を問わず世の中のデジタル化が大きく加速している。オンラインショッピングでは多くの場合、キャッシュレス決済を求められるが、オンラインでも実店舗と同じように決済できることに価値があると多くのユーザーは考えている。
当然、信頼できるセキュリティもユーザーから必要とされている。非接触な決済方法として、『Visaタッチ』の利用も拡大。非接触決済は、決済スピードや高セキュリティといった点から、高評価の決済方法になっており、コロナ禍によってさらに衛生面でも重要な手段ととらえられている。
コロナ禍は、消費者意識を大きく変化させた。実店舗での安全な決済方法として、消費者の49%がタッチ決済を希望しており、47%がタッチ決済できない店では買い物をしたくないと回答している。多くの消費者が、現金やペンなどに触れることなく決済できる方法を求めていることがわかる。
アジア太平洋地域においては、対面での非接触決済の割合が半数を初めて超えた。また非接触を導入している加盟店も増加しており、非接触決済対応のカードだけでなく、スマートフォンやスマートウォッチなど非接触決済が可能な端末が広く普及したことによって、その割合はどんどんと増えている。特に、オーストラリア、ニュージーランドでは95%以上、シンガポール、台湾などでは75%以上が非接触決済になっている。
今後、全世界でタッチ決済は、2021年を基準として2026年には22.0%増の3,530億件に、取引金額は24.7%増の9.4兆米ドルにまで拡大すると見込んでいる。決算ツールとして最もニーズがあるのは非接触カードで、2021年時点で77.4%を占めている。
日本でもキャッシュレス決済市場は年々増加傾向にある。特に、Eコマース市場では2020年度に大幅な伸びを示しており、前年比で20.1%も増加している。これは、食品などステイホームによる消費が増えたことによるものとみられる。日本での決済におけるキャッシュレス比率は29.7%となっており、まだまだ増加すると考えられる。
Visaは日本政府によるキャッシュレス化推進に賛同しており、すべてのPOSで非接触決済ができるように取り組んでいく。日本の人々も、コロナ禍による生活の変化で、キャッシュレス決済で支払う機会が増えたと実感しており、セキュリティの安全性や決済スピード、どこでも使えることを求めているが、Visaでそれを満たすことができると考えている。
キャッシュレス決済の中でも『Visaデビット』の普及は、大きな戦略のひとつ。日本の個人口座における出金のうち、およそ半数がATMからとなっている。
現金での決済は、銀行口座からキャッシュカードを使ってATMから現金を出金し、そのお金をレストランやショッピングで支払うという、多くのステップが必要になる。だが、Visaデビットは支払いの際に銀行口座から直接引き落とされるため、ATMに行く必要が無くなる。現金に比べ、決済スピードがおよそ8秒短縮され、非接触のため衛生的だ。
さらに、Visaデビットは実店舗だけでなくオンライン決済にも対応する。現在、日本市場でVisaデビットは急速に広がりつつあり、それは今後も続くと考えられる。
デジタル商取引へ重要性が高まる中、安全性はデジタル決済の基本的な要因のひとつ。電子商取引の件数が増加し続ける中で、トークン化は非常に重要なファクターとなっている。Visaトークンは、カード番号をVisaだけが解除できる技術でトークンにおきかえるもの。トークンによってカード会員の決済情報をネットワークから排除し、セキュリティ上の不正から守ることができるため、今後もトークンの基盤を最適化し、構築を進めていく。
デジタル社会を実現するためには、すべての人がアクセスできる経済活動こそが発展の源となると考え、オープン・エコシステムはそれを叶えていくもの。デジタル社会の理想的なビジョンを実現するため、パートナー企業と協働して実現を進めていきたい」
地方銀行がキャッシュレス促進のカギに
説明会にはVisaのパートナーのひとつとして、石川県の地方銀行、北國銀行の杖村修司代表取締役頭取も登壇。キャッシュレスおよびデジタル社会の創出についての取り組みを発表した。
近年、地方銀行ではキャッシュレスなどのカードビジネスに前向きに取り組んでいるケースが報道されている。「地方銀行があまり儲かっていないからカードビジネスに積極的なのだと捉えられている。それを否定するわけではないが、もっと長期的なビジョンで取り組んでいる」と杖村頭取。
同行では、豊かな地域社会を持続させるために、知恵と資金を活用して、地域の人々と協業していくことをイメージしており、顧客と銀行双方の生産性を大幅にアップさせ、5年後10年後も地域が持続的に発展していくための基盤づくりとして、キャッシュレス化などのカードビジネスを推進しているという。
Visaからの支援を受け、「Super Cashless Regionプロジェクト」を発足し、いつでも・どこでも・誰でも安全にキャッシュレス決済が利用できるようなデジタル地域社会の創出に取り組んでいる。
「北陸地域では、人口あたりのVisaタッチの決済数がおそらく日本で一番多い」と杖村頭取は話す。高齢者が多い田舎でキャッシュレス化は進みにくいのではと考える人も多いが、例えば石川県珠洲市は、現在人口1万5千人を割り、そのうち65歳以上の高齢者が半数を超えているが、北陸地域の中でも非常にキャッシュレス決済の比率が大きい市となっている。「先入観にとらわれずに取り組めば、まだまだ普及していくはずだ」と杖村頭取。
同行では5年ほど前からVisaとともにキャッシュレス化の推進するカード事業を展開しており、Visaのプリンシパルとしてタッチ決済が可能なカードの発行だけでなく、加盟店業務も行っている。銀行が加盟店業務も実施することで、小規模事業者にも対応することができ、カード発行枚数、加盟店数ともに右肩上がりで普及。利益も大きくなってきている。
ただキャッシュレス化を提案するだけでなく、ライフスタイルの中でキャッシュレスを推進していくストーリーが大切だという考えから、北國銀行の中核サービス「HOKKOKU LIFE+」や運営しているECサイト「COREZO」など、ひとり一人のストーリーに寄り添ってデジタル化を進めることで、地域社会のDX化を支援していく。銀行業務とともに、コンサルティングやリースやカード事業、ECサイトなど地域総合会社として、地域と一体化して地域発展に努めたいとしている。
杖村頭取は、「キャッシュレス化事業とは大手がやるもの、という認識があるかも知れないが、地域のキャッシュレス化は地域に任せてほしい」と話す。加盟店の多くは銀行の取引先で、ただキャッシュレス化を進めるだけでなく、加盟店の生産性を上げることもともに行っていくことができる。「地方銀行が大きなシェアを持つVisaと組むことで、地域に大きなソリューションを生むことができる」と締めくくった。