「取り急ぎご報告まで」という表現は、メールなどで急いで要件だけを伝えたいときに便利。日常的に使っている人も多いのではないでしょうか。しかし、丁寧そうに見えて実は敬語ではないこの表現、目上の人に対して使うと失礼だと思われてしまうことがあるなど、注意点がいくつかあることをご存知でしょうか。

今回の記事では、「取り急ぎご報告まで」という表現について、意味や使い方、目上の人に対する言い換え表現、英語表現などをご紹介します。

「急いでいる時に要点や結果だけを伝えたい!」という時のメール表現に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

  • 「取り急ぎご報告まで」の意味

    結果や要点だけ伝えたいときに有用な「取り急ぎご報告まで」

「取り急ぎご報告まで」の意味

「取り急ぎご報告まで」とは、「とりあえず、急いで報告だけします」という意味のメール・手紙表現です。主に文末で使われ、結果や要点など相手に対して必要なことのみを伝える際に使用します。

「取り急ぎ」とは「挨拶や詳細などを省略して、とりあえず急いで」という意味。そのため、「取り急ぎ」を使う場合は、要件だけを簡潔に送りましょう。癖のように多くのメールの文末に付ける人もいますが、本当に急いでいる場合にのみ使うようにしましょう。

「取り急ぎご報告まで」は丁寧な表現? 上司には使える?

急いでなにかを報告したり連絡したりする場合に便利な「取り急ぎご報告まで」ですが、目上の人には使えない表現であるため注意しましょう。というのも、「取り急ぎご報告をいたします」を短縮している表現なので丁寧ではなく、敬意に欠けた表現とみなされるからです。

使用頻度も高く使いやすい表現でありますが、特に取引先やお客様に使用するのは避けましょう。

  • 「取り急ぎご報告まで」は目上の人に使えない

    上司に「取り急ぎご報告まで」は避けましょう

「取り急ぎご報告まで」の使い方

ここでは、「取り急ぎご報告まで」の使い方を解説します。

「取り急ぎご報告まで」を使った後は詳細を送る

「取り急ぎご報告まで」とメールしたということは、本来は「本当であれば必要な詳細や経過などを送らなければいけないが、急な用事などがあり対応できないため省いている」という意味です。そのため、後で詳細を付け足して補う必要があります。

この作業を省いてしまうと、「本来するべき報告をしないとは雑な人だな」「もしかして、挨拶などを書くのが面倒だから『取り急ぎ』を使った?」などと捉えられかねません。できるだけ追って詳細を付け加えるようにしましょう。

「取り急ぎご報告まで」に返信は必要?

「取り急ぎご報告まで」とするメールを受け取った場合、返信すればよいか迷うかもしれません。前述のとおり、本来なら「追って詳細をお伝えします」というニュアンスが含まれるため、もう一度連絡が来るはずだからです。

しかし、何もリアクションがないと相手が不安に思ってしまうこともあります。「とりあえず確認した」という意味で「承知いたしました」「報告ありがとうございます」と返信しておくといいでしょう。

  • 「取り急ぎご報告まで」の意味

    「取り急ぎご報告まで」とメールした場合は後で詳細を付け加えよう

「取り急ぎご報告まで」の例文

例文を見て、実際の「取り急ぎご報告まで」がどのように使えるのかを確認してみましょう。

  • A社の契約が取れました。取り急ぎご報告まで。
  • 明日の会議が14時からに変更になりました。取り急ぎご報告まで。
  • (知人向け) 私事ですが昨晩出産し、母子共に健康です、取り急ぎメッセージのご報告で失礼いたします。
  • 「取り急ぎご報告まで」の例文

    至急連絡を取りたいときに「取り急ぎ」を使いましょう

「取り急ぎご報告まで」の丁寧な言い換え表現は?

上司や目上の人に対して、「取り急ぎご報告まで」と同じ意味のメールを送りたい場合の言い換え表現を紹介します。

取り急ぎご報告いたします

「ご報告させていただきます」という表現を省略せずに書くことで敬意を示し、「取り急ぎご報告まで」と同じニュアンスを伝えることができます。

  • 10日のA社訪問予定ですが、先方都合により中止になりました。取り急ぎご報告いたします。
  • 3日後には部品の生産を再開できそうとのことです。取り急ぎご報告申し上げます。

まずはご報告のみにて失礼いたします

「とりあえず」という意味の「取り急ぎ」を「ひとまず」「とにかく」という意味の「まずは」に書き換えることで、おざなりな印象が和らぎます。

また、文末に「失礼いたします」をつけることで、「本来はもっと詳細に説明すべきであろうところを簡潔に済ませてしまい申し訳ありません」という気持ちも伝えられます。

  • 研修の日程ですが、4日から8日に決定しました。まずはご報告のみにて失礼いたします。

省略しないことで丁寧さが増す

「取り急ぎご報告まで」が省略されているため敬語として適さないことからわかるように、丁寧に伝えたい場合はできるだけ省略せず書くことを心がけましょう。

取り急ぎご報告までのニュアンスに含まれている、「詳細は後に伝える」「急ぎで申し訳ない」という部分まで伝えるといいでしょう。

  • ミーティングが6日に決定したので、取り急ぎご報告いたします。時間や場所等詳細につきましては、改めてご連絡申し上げます。
  • 用件のみのメールで恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
  • 「取り急ぎご報告まで」を丁寧にすると?

    取り急ぎを「まずは」に変更することで、おざなりな印象が和らぎます

「取り急ぎご報告まで」を英語にすると?

英語で「取り急ぎご報告まで」としたい場合には、「just」や「hasten(急がせる)」などの単語を使います。

  • This is just a quick note.
    これ単体で「取り急ぎご報告まで」とできるだけでなく、that節を続けて「~ということを取り急ぎご報告いたします」という意味にも使用できます。

  • I just want to let(tell) you (that~)
    直訳すると「ただあなたにお知らせしたかった」となり、「取り急ぎご報告いたします」と同意表現として使用されます。

  • I hasten to inform you about~
    「~について取り急ぎお知らせします」という意味になります。

以下、例文を参考にしてください。

  • Today's event has been postponed due to rain. This is just a quick note.
    (本日のイベントは雨天のため延期となりました。取り急ぎご報告まで)
  • I just want to tell you that the meeting place has been changed from the nearest station to Tokyo Station.
    (取り急ぎ、集合場所が最寄り駅から東京駅に変更になったことをお伝えします)
  • I hasten to thank you for your help.
    (あなたのご助力に取り急ぎ感謝申し上げます)
  • 「取り急ぎご報告まで」を英語にすると

    「取り急ぎご報告まで」の英語表現には「This is just a quick note」などがあります

「取り急ぎご報告まで」を有効に使ってメールしよう

要件だけを簡潔に伝えたい時、メール文末などにつけて使う「取り急ぎご報告まで」。これだけでは省略形で敬意に欠けてしまうため、上司などの目上の人に使う時は「取り急ぎご報告までさせていただきます」と最後まで丁寧に書くようにしましょう。

「取り急ぎ」は、シーンによって「取り急ぎご案内申し上げます」「取り急ぎご連絡まで」などの表現にも使えます。ビジネスシーンや日常生活で、適切に使いましょう。