映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(9月10日公開)の公開記念舞台挨拶が11日に都内で行われ、黒木華、柄本佑、金子大地、奈緒、風吹ジュン、堀江貴大監督が登場した。
同作はTSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2018 準グランプリ受賞作品で、脚本・監督は堀江貴大が務める。少女漫画家・佐和子(黒木)の新作漫画のタイトルは「先生、私の隣に座っていただけませんか?」それは、結婚5年目になる佐和子の夫・俊夫(柄本)と編集者・千佳との不倫現場をリアルに描いたものだった。さらに物語は、佐和子と自動車教習所の先生との淡い恋へ急展開。完全な創作か妄想か、それとも夫の不貞に対する佐和子流の復讐なのか、恐怖と嫉妬に震える俊夫は、やがて現実と漫画の境界が曖昧になっていく。
黒木は、柄本と結婚5年目の夫婦を演じたが「違和感なく(柄本の)そばにいることができたと思います。『いるな』と思いながら、互いを変に意識せずにいられた」と語り、柄本も「僕も同じ印象で、すんなり夫婦の感じを出せたなと思います。役柄の話とかはほとんどせず、漫画の話とか世間話をする方がお芝居につながっていたのかも」と自然体のままで夫婦でいられたと振り返る。
柄本が演じる俊夫は、佐和子の担当編集の千佳(奈緒)と不倫をしており、観客に嫌われそうな役どころなのだが、どこか不思議な憎めなさを醸し出している。柄本は「とにかく、俊夫が100%よくないんです。こんな事態を起こしてるから。でも、監督と最初に話をして、ただの悪人じゃなく、観終わった方が『しょうがねぇヤツだな……』と人間的な方向に落とし込めたらと思っていました」と語る。それに対し堀江監督は「俊夫が悪いんですけど、断罪はしたくない。こんな愛すべきキャラになったのは、柄本さんが演じてくださったおかげ」と柄本を称えたが、柄本は「黒木さんのシルエットというか……ホントに何考えてるのかわかんないんです。なので、身を任せて黒木さんを見てれば、こちらが自然と不安になるし、汗がにじむんですね。引っ張っていただいたのは、黒木さんによる部分が大きいかなと思います」と感謝の気持ちを口にしていた。
一方で、黒木は奈緒が演じる編集者・千佳のパーソナリティに言及。「あっけらかんとしてて『これは、俊夫さんが(千佳の元に)行ってしまうだろうなと思わせる説得力があった」と明かし、柄本も「撮影現場でも『結局、一番楽しんでるのは千佳じゃないか?』という話になった」と黒木の指摘に同意し「こんなに健康的に不倫する人いるんだ? 爽やかな不倫だなと思いました」と感嘆する。
その千佳を演じた奈緒は当初、不倫相手の女性役と聞いて「どういう女の子なのかな?」と思ったそうだが「こんな不倫相手は見たことない! というくらい、違うベクトルで突っ走ってる子でした」と笑う。「(演じていて)すごく楽しかったですけど、楽しめたのは黒木さんと柄本さんに受け止めてもらえて自由にやれたからです。黒木さんとの対面シーンは、本当に佐和子先生が何を考えてるかわかんなくて、俊夫さんは冷や汗かもしれないけど、千佳としては担当編集者として嬉しくなる、ワクワクする感じで、お芝居してて楽しかったです」と振り返った。
金子は自動車教習所の新谷を演じたが「本読みをして、監督に新谷のことを聞いたら『現実にいるかどうかわからない青年をやってくれ」と言われまして……。佐和子が漫画を描いているので『漫画から飛び出したような?』と聞いたら『いや、そうじゃない』と言われ、どういうことなんだろ…? と。でも、ギリギリまで監督が寄り添ってくださって演じられたかなと思います」と充実した表情を見せた。
佐和子の母を演じた風吹は、撮影を振り返り「現場がなごやかで、合宿のようでした。柄本さんの人柄も大きかったと思うけど、畳のところにいると和やかでおうちにいるみたいでした。懐かしいです」と笑顔で振り返った。