LegalForceは、企業法務における契約書レビュー業務を支援するクラウド型ソフト「LegalForce」を提供している。同製品は契約書のリスクを検出するAI自動レビュー機能や、データベースから必要な条文を取り出す検索機能、自社のひな型を基準と比較する機能など、法務の実務に即した機能を備える。

同社で製品開発を行うチームには、データエンジニアやプログラマーだけでなく、法律の専門家として弁護士の資格を生かしながら活躍する社員がいる。そこで今回は、弁護士のキャリアからリーガルテックの世界に踏み込んだという法務開発部門統括 奥村友宏氏に、異業種でのキャリアを歩み始めたきっかけと、エンジニアと共に仕事をする苦労や楽しさを聞いた。

  • LegalForce 法務開発部門統括 奥村友宏氏

プロフィール
慶應義塾大学法学部法律学科在学中に旧司法試験に合格し、2011年弁護士登録。同年長島・大野・常松法律事務所入所。2017年 Duke University School of Law(LL.M.)修了、2018年ニューヨーク州弁護士登録。ニューヨーク、バンコクでの弁護士としての勤務を経て2020年4月LegalForce参画。法務開発部門を統括。

--リーガルテックの製品開発に携わろうと思ったきっかけは何ですか

奥村氏:私は元々、法律事務所で企業法務の仕事をしていました。主な業務は、企業間の買収や海外展開のサポートなどです。その中で、似たような案件や異なる会社でも似ている契約書に対して、同じようなレビューをする場面が多くありました。

一つ一つの案件は楽しかったですし、それらの業務に注力することで感謝の言葉を頂けることは非常にうれしかったです。しかし、1人で抱えられる案件数には限りがありますので、企業法務の業界自体に私自身が与えられる影響が小さいことに課題を感じ始めました。

人が行う仕事ですから、同じ契約書に対するレビューでも、ベテラン弁護士の回答と新人弁護士の回答が異なる場合があります。そのような業務のばらつきや、ヒューマンエラーに対して、改善する方法が必要と思うようになってきたのです。

そのような悩みを持っていた2017年頃から、リーガルテックという言葉が徐々にはやり始めました。リーガルテックであれば、これまでとは違った角度から法務業界全体に影響を与えられる仕事ができると、漠然と感じたのを覚えています。

その後もそうした気持ちは持っていて、2019年の秋頃に当社CEOの角田と話す機会がありました。私が法務業界に感じていた課題を彼も感じていたようで、彼が持つビジョンに非常に共感できたのです。角田の話を聞いた時に、私の経験が法務業界の課題解決に貢献できると思いました。

当時の私は、テクノロジーを活用して課題を解決するための具体策を持っていたわけではありません。しかし角田と話す中で、リーガルテックが法務業界を大きく変えると、今後のビジョンを楽しそうに語る内容が腹落ちしたのが、LegalForce入社の決め手になりました。

--現在の業務について教えてください

奥村氏:当社の開発部は、大きく3つのチームで構成されています。1つ目はAIのアルゴリズムを実装するチーム、2つ目は製品のUI/UXを開発するチーム、3つ目は製品のコンテンツの中身を作るチームです。私は現在、3つ目のチームに所属しています。

主な業務の内容としては、どのような契約書類に対してどのようなアラート通知が必要かといった検討や、契約書のどの部分がリスクになりやすいかをAIに覚えさせるためのチェックリストを作っています。このチームには私のような弁護士のほかに、企業法務部の経験者も所属しています。

AIのアルゴリズムを作るチームと議論をする機会もあります。「機械学習のもとになる教師データはどのような形式が適しているのか」「AIがより正確にレビューできるようになるためにはどのような改善が必要か」といったことを話しています。

  • 以前は1年間に10社程度を担当しており、業界への貢献度をさらに高めたいと感じていたという

--今の仕事のやりがいはどういったところにありますか

奥村氏:大きな影響力を感じられた時に仕事のやりがいを感じますね。当社製品のLegalForceは、AIが契約書を自動レビューするのが大きな売りです。この機能を気に入ってもらえないと製品を導入してもらえません。そのくらい大事な機能の開発に携わっていることに誇りを持っています。

また、AIの自動レビュー以外にも製品の機能を日々追加しています。利用者から「この機能のおかげでできることが増えた」といった声を頂けた時や、社内の営業担当者から「この機能のおかげで導入してもらえた」と言われた時にも満足感があります。

現在の利用者は2割が法律事務所で、残りは企業法務の方です。私も営業担当者と一緒に顧客を訪問する機会があるのですが、その際に「この機能を使っています」といった、現場の声を聞けるのはすごく楽しいです。