長引く景気の低迷に加え、新型コロナウイルスの感染拡大もますますその深刻さを増し、なかなか明るい未来像を描きにくい昨今。将来に備えた資産形成のために、日々努力を続けているという人もきっと多いことだろう。中には株やFXなどの金融商品を運用して、効果的に資産を増やしているという人もいるかもしれない。
さて、老後資金として必要な金額が2,000万円とも3,000万円ともいわれる現状では、貯金1,000万円は決して十分ではないものの、多くの人にとってひとつの目標となる金額だ。そこで今回は、 貯金1,000万円以上のマイナビニュース男女会員194人を対象にアンケート調査を実施。「所有している金融商品と、その理由」などを聞いた。
Q.あなたが所有している金融商品は次のうちどれですか?
1位「株式」(62.4%)
2位「投資信託」(50.0%)
3位「不動産」(29.4%)
4位「現金しか持っていない」(19.1%)
5位「債券」(15.5%)
5位「FX」(15.5%)
7位「その他(自由回答)」(6.2%)
Q.どうしてその金融商品を持っていますか? 持っている理由、メリットなどを具体的に教えてください(自由回答)
■「株式」
・「上がることを期待したいし、学ぶことができる」(35歳男性/物流・倉庫/技能工・運輸・設備関連)
・「寝かせておくよりも運用したほうが資産が生きるし、仮に損をしても勉強になる」(41歳男性/食品/営業関連)
・「現金も大事だが、思い切って資産運用をしようとするとどうしても現金では限界があるところ」(37歳男性/広告・出版・印刷/クリエイティブ関連)
・「教育資金、老後資金等々において、デメリットもあるが資産運用する事で将来に備えたい」(44歳男性/農業協同組合/技能工・運輸・設備関連)
・「若い時に株式投資に熱中していて、その流れで今もトレードしたりしている」(51歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「期待リターンが高いから。預貯金だけでは大きく資産を増やせない」(57歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「配当目的が一番大きく、値上がりしてくれればさらにありがたい」(55歳男性/サービス/事務・企画・経営関連)
・「配当がある会社なら株価の上げ下げはありますが、どの企業でも銀行利息よりも高い」(53歳女性/専門店/販売・サービス関連)
・「保有していれば配当金などが貰えるし、将来大幅に値上がりしたら売却して、その売却益も期待できる」(47歳男性/サービス/営業関連)
・「配当や株主優待がもらえる、低金利で銀行ではお金が増えない」(46歳男性/証券・投資銀行/事務・企画・経営関連)
・「銀行等に預けても利率が低くなかなか増えないので、リスク許容の範囲を考えながら値上がりや配当を期待できる銘柄に投資して、楽しみながらお金を増やしたい」(59歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「預金金利は低水準の昨今、配当利回りが良いので、預金しているよりも有利だと思ったので株式を持ちました」(53歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「現金で持っているよりもお金が増える。株主優待がある」(38歳男性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)
・「株主優待で、格安SIMの割引があったから」(41歳男性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)
・「定期預金などより利率がよく、また年に一回ぐらいの優待も楽しみがあるから。将来性を考えても、安心なものを選んで保有している」(59歳女性/官公庁/事務・企画・経営関連)
・「毎月、だいたい決まった金額を貯蓄していると、死ぬまでにだいたい幾らぐらい貯まるかわかる。その額じゃ少なすぎる。株なら、配当金と売却益の両方を狙えるから」(41歳男性/広告・出版・印刷/営業関連)
・「期待している企業の株式を持つことで応援したいから」(55歳男性/文具・事務機器関連/営業関連)
・「将来性を感じられる企業なので、これからも応援していきたいから」(37歳男性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)
・「現金を全部他の金融資産にしないで、一部の資産を株式運用しています。株は目減りしたときにストレスが係り気分が落ち込むから。一部にしたのは、ほぼ上場会社の倒産はないのでゼロにならないので、仮になってもいい金額を投資。当然、現金を持っていても増えないので利益獲得のため」(58歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「NISA利用で非課税貯蓄できる。株主優待券を使える。普通預金や定期預金よりも高い利回りを期待出来る」(53歳女性/総合電機/事務・企画・経営関連)
■「投資信託」
・「預金より利息が付くためです。リスクはあるが、運用していかないと老後が不安になる」(45歳男性/その他/専門職関連)
・「少しは運用しないといけないと思ったので。利息よりは多少ついたかも。放っておいてもいいし」(51歳男性/物流・倉庫/技能工・運輸・設備関連)
・「インフレヘッジに長期投資は有利。現金のみのほうがリスクです」(50歳男性/鉱業・金属製品・鉄鋼/技能工・運輸・設備関連)
・「将来に向けて資産運用する事で、少し余裕ある生活が出来ると考えているから」(47歳男性/精密機器/その他技術職)
・「ハイリスク・ハイリターンの商品を好みではなく、リターンとリスクの度合いを考えて、今のポートフォリオとなりました」(31歳男性/コンピューター機器/IT関連技術職)
・「証券会社に預けMRFで所有した方が、現金を銀行に預けるより若干だが利率が良いため。また銀行は1,000万のペイオフが関わるが、証券会社にはそれがないため。株式や投信投資は自己責任であるため、元本割れする場合もあり、必ずしも万人の方々ができる資産形成ではないが、投機ではなく投資と考え、下がった際のナンピンや長期投資へ視点を変えれば、すくなくとも配当、株主優待などの恩恵が得られる場合が多いと考えた」(59歳男性/教育/事務・企画・経営関連)
■「不動産」
・「家賃収入ですね」(55歳女性/教育/専門職関連)
・「安定収入を見込めるから」(52歳男性/不動産/営業関連)
・「親からの引継ぎ」(48歳男性/精密機器/メカトロ関連技術職)
・「相続したものや、老後やいざという時のために資産運用している」(59歳男性/総合商社/事務・企画・経営関連)
・「いろいろ資産運用に興味が出てきて、少しずつ考えながら、学んでいるところです」(55歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「不動産は自宅なので、住むため。以前は少し株式をやっていたが、リスクもあるのでもうやめた」(59歳男性/ガラス・化学・石油/営業関連)
■「債券」
・「資産運用が簡単に出来て、やりやすい」(45歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「利回りと安全性を考慮しました」(58歳男性/不動産/事務・企画・経営関連)
・「分散させておくことでリスクヘッジになるから」(41歳男性/建設・土木/事務・企画・経営関連)
・「リスクヘッジで、インフレに強いから」(50歳男性/フードビジネス/販売・サービス関連)
・「長期的に運用が可能。リスクがそれほどなく、効率もよい」(46歳男性/海運・鉄道・空輸・陸運/事務・企画・経営関連)
■「FX」
・「インターネットなどでの取引ができたり、手軽にできるようになったから」(45歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「儲かると思ったので持っているというのが本当のところですが、正直儲かっているかは微妙なところです」(41歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「お金が増えたら良いな〜と、なんとなく始めた株やFXなのですけど、持っている株式などは、つい応援したくなってしまいますね〜」(48歳男性/建設・土木/建築・土木関連技術職)
■「その他」
・「保険:わかりやすいから」(55歳女性/その他/事務・企画・経営関連)
・「貴金属:変動するものとしないものを分けて管理して、その場その場に応じて対応出来るようにしたいためです」(53歳女性/その他/事務・企画・経営関連)
・「暗号資産:現金を持っていてもインフレにより減価してしまうだけなので」(40歳男性/外資系金融/事務・企画・経営関連)
・「銀行預金:株とか投資とか全く興味がないので」(55歳女性/専門店/販売・サービス関連)
Q.現金しか持たない理由を具体的に教えてください(自由回答)
・「信用できるのは現金だけ」(47歳男性/海運・鉄道・空輸・陸運/その他・専業主婦等)
・「心配性だから」(44歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「リスクは取りたくない」(58歳男性/輸送用機器/営業関連)
・「リスクがあるのは怖いから」(47歳女性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)
・「運用損が嫌なので」(57歳男性/海運・鉄道・空輸・陸運/事務・企画・経営関連)
・「投資で減っても、誰も補填してくれないから」(49歳男性/医療・福祉・介護サービス/専門サービス関連)
・「投資には興味ない」(53歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「金融には詳しくないから」(43歳男性/フードビジネス/販売・サービス関連)
・「投資先を考える時間が無い」(58歳男性/建設・土木/建築・土木関連技術職)
・「知識がないので投資してない」(40歳女性/医療・福祉・介護サービス/専門サービス関連)
・「投資は勉強していないから」(34歳男性/警察・消防・自衛隊/公共サービス関連)
・「現金以外の管理コストや売却益への課税・申告の手間を考えると、現時点では現金での保有が無難」(58歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「将来のために株式投資か投資信託を考えてはいるし、金融機関からも行くたびに勧められますが、生来の臆病さと、所詮儲かるのはセレブと上級国民だけだとの思いがあるので躊躇してしまいます。結局、貯金のみです」(49歳男性/ホテル・旅館/事務・企画・経営関連)
■総評
調査の結果、貯金1,000万円以上のマイナビニュース会員が所有している金融商品の1位は(複数回答可)、6割以上が挙げた「株式」(62.4%)となった。以下、2位「投資信託」(50.0%)、3位「不動産」(29.4%)、5位「債券」「FX」(各15.5%)と続く。「現金しか持っていない」は19.1%で、第4位となった。
どうしてその金融商品を持っているのか、その理由を聞いた。回答の全体的な傾向としては、「現金を持っているだけでは資産は増えず、将来に備えた運用が必要」という考え方があることがわかる。
その上で、「株式」に関しては「運用益が期待できる」「配当がある」「株主優待がある」ことなどを理由に挙げる人が多かった。そのほかには、「その企業を応援したい」というものもあった。当然、デメリットも考慮されており、対策として分散投資や、他の金融商品と組み合わせて運用しているという人も目立った。
「投資信託」に関しても同様に、預金金利以上の利回りを期待しているという人が多い。株式投資と異なり、一般に「投資信託」はハイリスク・ハイリターンな商品ではなく、あらかじめポートフォリオが組まれている点にメリットを感じている人もいるようだ。
リスクを取らずに預金金利以上のリターンを期待できるということで、「債券」を推す人もいた。安定的に、長期的に運用したい場合には魅力的な商品かもしれない。インフレに備え、資産の目減りを軽減できるという効果も期待できる。
「不動産」に対しては、積極的に活用している人はやや少ない印象だ。遺産承継などで物件を得て、賃貸に出す、というのが通常のパターンなのかもしれない。
対して「FX」では、ある程度のリスクを覚悟してでも、ハイ・リターンを狙いたいという意思がうかがえる。また、「FX」参入の動機としては、近年ネット環境が整備され、FX取引開始へのハードルがぐっと低くなっていることも大きな要因だろう。
ただ、実際には単一の金融商品に偏ることなく、「株式は長期用と短期用で分けて運用している。長期用は老後等のため。FXは短期取引で利益を得るために取引している。投資信託はインデックス投資で将来老後のために積み立て投資している」(36歳男性/教育/公共サービス関連)などのかたちで、賢く分散投資を行なっている人が多いようだ。
「その他」の金融商品としては、「保険」「貴金属」「暗号資産」などが挙がった。中には、「銀行預金」「普通預金」との回答もあった。一般的には「預金」は「現金」は「流動資産」という同じカテゴリーに含まれるが、ここでは「手持ちのキャッシュ」と「銀行預金」はあくまでも別物ということだろうか。
一方、「現金しか持たない」理由はなんだろう。ここでの回答は、「リスクを取りたくない」「投資には興味がない」「投資の知識がない」などが主なものとして寄せられている。原資を減らしてしまう可能性がある投資に対して、少なくとも現金を所持している限りはその心配はない。「信用できるのは現金だけ」というコメントは、まさにそれを端的に表しているといえるだろう。
今回の調査では、貯金1,000万円以上のマイナビニュース会員の多くが「株式」や「投資信託」などの金融商品を所持しているという結果となった。「現金しか持たない」は2割に満たず、大多数の人はある程度のリスクは覚悟で、積極的な資産運用を行なっていることがわかった。
長引く景気停滞に加え、昨今のコロナ禍でますます先行きが見えなくなっている日本経済。貯金1,000万円以上といえども安穏とはしていられず、誰もが将来に備え、資産形成に知恵を絞っている。今回は、そんな実態がうかがえるアンケート結果となった。
調査時期: 2021年8月3日
調査対象: 貯金1,000万円以上のマイナビニュース男女会員
調査数: 194人
調査方法: インターネットログイン式アンケート
※写真と本文は関係ありません