Dynabookは9月7日、現場作業を効率化するモバイルエッジコンピューティングデバイス「dynaEdge DE200」を発表、受注を開始した。価格はオープンで、CPUやメモリなどの構成によって変わるが、同等スペックのPCと同じくらいの価格を想定している。本体カラーはホワイト。
dynaEdge DE200は、現場作業員が身に付けてハンズフリーで作業しながら、情報の閲覧やコミュニケーションに利用できるモバイルPCだ。左右どちらかの腰に装着し、ボタン操作によって現場作業に役立つ機能を利用する。情報の閲覧には頭部に装着するインテリジェントビューア「AR100」を組み合わせて運用する。
2018年初旬に発売した「dynaEdge DE100」の後継機で、基本性能を大きく底上げし、バッテリー駆動時間も向上している。最新の第11世代Intel Core i7-1160G7・Core i5-1130G7・Core i3-1110G4を搭載し、OSはWindows 10 Pro 64bit。
本体は縦幅が165mmから197mmへと長くなったが、増えた重さは30gに過ぎず(310gから340g)、横幅と厚みも変わらない。サイズや重さは従来機と同様であり、片手で十分持てる。本体前面に配置の5ボタンキーはやや大きくなり、上ボタンにリブが付いたことで、手で触れただけでボタンの配置を把握できるようになった。大型化したボタンは、グローブをはめたままの手でも操作しやすい。
インタフェース部も大きく変わった。充電はUSB 3.1 Type-Cに変更し、モバイルバッテリーからの給電も可能になっている。充電用以外には、USB 3.1 Type-CとUSB 3.1 Type-Aを1基ずつ装備。電源スイッチには誤操作防止用のロック機構を取り入れた。腰に装着したときに電源のオンオフが確認しやすいよう、本体上部に大きな青いLEDを配置している。
無線LANは新たにWi-Fi 6(IEEE802.1ax/ac/a/b/g/n)に準拠。SDカードスロットは省略され、5ボタンキーの下の指紋センサーはオプションで選択可能だ。
dynaEdge DE200ではバッテリー駆動時間を従来の約5.5時間から、約7.5時間に伸ばしている。従来同様バッテリーを取り外して交換できるので、長時間の運用でも不安がない。バッテリーの取り外し機構を改良し、スライドスイッチで持ち上がるようにした。
CPUを最新世代に刷新するにあたり、冷却設計を見直している。縦に長くなった形状を生かして側面の吸気と排気のエアフロー効率をアップ。ホルスター装着時の冷却性能を最大化できるよう新たに設計している。冷却ユニットも再設計し、ヒートパイプを採用してより冷やせるようになっている。
外周は衝撃吸収用のラバーバンドで保護。Dynabookの品質試験はもちろん、アメリカ国防総省MIL規格(MIL-STD-810H)準拠のテストも実施する予定だ。
従来機で用意していたオプションのインテリジェントビューア「AR100」と、メガネのように装着する「AR100フレーム」には引き続き対応。導入すると、両手を使って作業しながら情報の閲覧が可能だ。
拡張用の「ポート拡張アダプタ USB Type-C 2」も用意する。インタフェースはHDMI出力×1、D-sub15×1、LAN(RJ45)×1、USB 3.0 Type-A×1だ。
持ち運びや装着のためのホルスターとキャリングケースも新しくなった。「DE200ホルスター」は従来のホルスターよりも薄く、装着しやすい取っ手を付けた。キャリングケースはホルスターやAR100なども入れやすいよう、ケーブルを束ねる面ファスナーを用意するといった工夫も施している。
VESA規格に準拠した「VESAマウントキット」もリリース。ディスプレイの背面に取り付けることで、dynaEdge DE200を省スペースデスクトップPCとしても活用できる。また、雨天に利用するIP53レベルの防塵・防滴性能を備えたレインカバーキットもオプションで用意。
dynaEdge DE200の主な仕様は表のとおり。CPUだけでなく、グラフィックス、メモリ容量、SSD容量が選べ、表にはないが指紋認証とポート拡張アダプタ USB Type-C 2の同梱も選択可能。無線LANの届かない環境でも通信可能なLTEモデルも、2021年度中発売の予定でラインナップする。
ソリューションプラットフォームテクノロジー「現場DXプラットフォーム」
dynaEdge DE200ではハードウェアと同時に、dynaEdge DE200を活用するための「dynabook Edge AIエンジン」と「dynaEdgeコントローラー」を、ソリューションプラットフォームテクノロジー「現場DXプラットフォーム」として提案している。
本体に搭載するAIエンジンは、大量のデータに対する処理結果をいろいろなアプリケーションで活用しやすいよう、アプリケーションに送る前に生のデータに処理を施す。本体のCPUパワーを生かして処理することで、クラウドサービスのAI処理よりも高速なレスポンスとなり、現場の作業をリアルタイムでサポートできる。
たとえば「揺れ補正」では、頭部に付けたカメラが揺れても注目領域がセンターにくるようにフレーム間で固定する。ほかにも注目領域枠を表示して、対象物の移動に合わせて注目領域枠を移動させる「トラッキング」、効果適用カメラ映像を全画面に表示する「モニター」、逆光などの現場でも対象が見やすくなるよう明るさやコントラストを補正する「明るさ補正」といった機能が利用できる。
dynaEdgeコントローラーは、5ボタンキーでの操作を拡張する機能。メニューの呼び出しや、既存のアプリケーション操作を実現した。従来はdynaEdgeのボタン操作に合わせてアプリケーションごとに作り込みが必要だったが、これが不要となった(処理性能の高速化、ロングバッテリー化、USB Type-C給電などと並んで、従来機でユーザーから要望の多かったポイント)。
dynaEdgeコントローラーでは、アプリケーション起動メニュー、マウス操作、キー入力操作、カメラ設定、AR100ライトのオンオフ、AR100解像度の変更などに対応する。作業中にちょっと操作したい、設定を変更したいといったニーズに応えることで、よりスムーズに現場作業が進められる。
このほか、作業支援ソリューションとして「Vision DE Suite」も用意。写真やドキュメントなどを目の前に表示することで紙の資料を持ち歩かなくて済むようになる「ビューア」、作業の記録やエビデンス保存に利用できる「録画」、Microsoft Teamsに対応したコミュニケーションが可能な「遠隔支援」、さらに音声操作などの機能も利用できるようになる。
Dynabookによれば「dynaEdge DE200は従来機と比べて処理性能の高速化を図ったことから、画像処理や認識処理、IoTデバイスとの連携といった利用が広がると想定している」とのこと。これまで利用の多かった遠隔コミュニケーションの分野でも、よりスムーズなコミュニケーションが可能になり、定着が進むと見ている。また、カバーする業務範囲も広がり、企業ポリシーのもとで統一された現場標準端末として、同一企業内の複数部門での利用促進を目指していく考えた。