「ご参考ください」という表現をビジネスシーンで使っている方は多いのではないでしょうか。この記事では、「ご参考ください」という言葉の正しい使い方や、言い換え表現について解説します。
「ご参考ください」は敬語として正しい?
ビジネスシーンでよく使用される「ご参考ください」というフレーズ。このフレーズは、敬語として正しいのでしょうか。
「ご参考ください」の意味
「ご参考ください」は判断や検討にあたって何らかの資料を共有する際に使われる言葉です。「この資料を参考にしつつ、検討してください」という意味で用いられますが、単語を分解してみると間違った表現であることがわかります。
「ご参考ください」は本来間違い
「ご参考ください」は、接頭語の「ご」に、名詞の「参考」、丁寧語の「ください」に分解されますが、「ください」については「○○して」という言葉を丁寧にしたものです。
つまり、丁寧語の「ください」は「して」と読みかえても意味が通る必要があります。
そう考えると、「参考して」という言葉はないため、「ご参考ください」は間違っている言い回しとなるのです。意味は伝わるかもしれませんが、正しい言葉遣いにするのであれば、「ご参考にしてください」と表現するようにしましょう。
(以後、本記事に出てくる「ご参考ください」という記載は、全て「ご参考にしてください」と読みかえてください)
「ご参考ください」のビジネスシーンでの使い方
「ご参考ください」という言葉を使う際には、以下のような点に注意しないと、相手に対して礼儀を損なってしまったり、自分の意図しない意味で相手に伝わってしまったりする恐れがあります。
もし今まで「ご参考ください」という表現をビジネスにおいて多用していた人は、注意してください。
■「ご参考にしてください」と表現するようにする
上記で解説した通り「ご参考ください」という表現は日本語として誤っていますので「ご参考にしてください」「ご参考になさってください」という正しい表現にしましょう。
相手との関係性などもありますが、間違った言葉を使う人だと思われてしまうと、業務上不利益を被る可能性は十分に考えられます。
■目上の人へは「ご参考になさってください」
「ご参考ください」を目上の人に使用する場合は、「ご参考になさってください」が適切な表現です。「する」の尊敬語が「なさる」です。
■相手に確認してほしい時は別の表現を使う
これまで何度か述べている通り、「ご参考ください」という言葉には強制力や誘導する意味はまったく含まれていませんので、言われた相手は資料を見ない可能性も十分に考えられます。
もし本当に相手に確認してほしい資料を共有した際は、「ご参考ください」ではなく、「ご確認ください」「ご覧頂けますと幸いです」など、相手に見てほしいことが伝わる表現を使うようにしてください。
また、確認しないと相手が不利益になるような重要な書類であれば、「【要確認】」などの文言を資料タイトルの先頭に付けることで、見てもらえる可能性が高まります。
その資料の重要度や必要性に応じて使いわけるようにしましょう。
「ご参考ください」を使うシーンと例文
「ご参考ください」は、主にビジネスで使われる言葉です。 対面でも非対面でも用いられるため、それぞれのシーンと例文を紹介します。
■直接言葉で伝える場合
会議の場や商談の際には、資料配布中か配布後に以下の例文のように使います。
こちらをご参考にして頂ければと思います
資料を参考にすることは強制するものではなく、あくまでも相手の判断に委ねるというスタンスでいないと、相手に不快感を与えかねません。
「不必要かもしれませんが、私は参考にしていただきたいと思っています」といった、相手を思いやる気持ちを伝えられるように心がけてください。
■ビジネスメールで伝える場合
メールで伝える場合は、文法もさることながら、どれだけ余計な装飾を付けずに伝えられるかが重要になります。
ご参考になりましたら幸いです
直接伝える時と同じように、相手に強制させないことを意識しつつ、「参考にしてくれたらうれしい」という思いを伝えられますので、相手に資料を確認してもらいやすくなる文章です。
一方、参考にするかしないかは相手の判断に委ねられてしまいますので、本当に資料を確認してほしい時は、後述する別の表現に言い換えることをおすすめします。
■さらに丁寧に伝えたい場合
「ご参考にしてください」と言い換えたとしても、「して」という言葉が、相手によっては「参考にしろと命令された」と受け取られてしまう危険性があります。 そうしたコミュニケーションミスを防ぐためにも、次のような言い方がより好ましいと言えます。
ご参考になさってください
「してください」の「して」は「する」という言葉から来ています。そのため、「する」の尊敬語である「なさる」を使うことで、命令と受け取られるリスクを無くすことができます。
「ご参考になさってください」であれば、二重敬語の問題もありませんし、誰に使っても失礼だと思われることはありません。
「ご参考ください」の類語・言い換え表現
「ご参考ください」という言葉は、同じような意味で別の言葉に言い換えられます。
「参考」という言葉が文中で連続してしまう場合は、類語への言い換えを検討しましょう。
■「ご参照ください」
「参照」とは、「物事を検討するための手がかりとして、他の情報と見比べること」「理解を進めるために用意された資料に目を通すこと」といった意味があります。
「参照ください」は一見すると「参考ください」と同じような文言であり、誤っているように感じてしまいますが、「参照する」という単語がありますので、間違った言葉ではありません。また、「参照」という言葉の意味から、データがまとめられた資料を共有する時に用いるとより効果的です。
■「ご確認ください」
シンプルに伝えたい時には、「ご確認ください」がベターです。 嫌味なく資料の確認を促せますので、そこまでかしこまらなくてもいい関係性であれば、「ご確認ください」を使うのがいいでしょう。
■「ご一読ください」
「一読」という「一通り読む」という意味の言葉を用い、「ご一読ください」と表現することもできます。繰り返し見返す必要がなく、文章がメインの資料を共有する際におすすめの言い換え表現です。
「ご参考ください」の英語での言い方
「ご参考ください」を英語で伝えたい時には、次のような英文になります。
■ Please refer to~
「Please refer to~」はビジネス上だけでなく、ソフトウェアの説明書などにも使われています。「to」の後には名詞が来ますので、確認してほしい書類のタイトルなどを入れれば文章が完成します。
また、「お願いします」を意味する「Please」を先頭に置いていますので、目上の人にもそのまま使える言い回しです。ただし、この英文から「Please」を抜いてしまうと、「参考にしろ」と命令してしまうことになりますので注意してください。
■ Please use this as a reference
“参照”という意味を持つ「reference」を用い、「Please use this as a reference」とややかしこまった表現も可能です。 直訳すると、「これを参照としてお使いください」となりますので、「Please refer to」よりも、より丁寧な伝わり方になります。
「ご参考ください」の正しい使い方をマスターしよう
「ご参考ください」の正しい言い回しは、「参考にしてください」ですので、使用する場合は注意が必要です。
また、「ご参考」は強制力のない表現なので、どうしても相手に確認してほしい場合は、本記事で紹介した別の表現を用いるようにしましょう。