Pixel 5a (5G)は、誰でも使いやすい充実したスペック、GoogleがチューンしたAndroid OS、AIの力で夜景やズームに強いカメラが特徴のスマートフォンです。Google ストアでの価格は51,700円。携帯キャリアではソフトバンクが取り扱います。
最高峰のハイエンドモデルでもなければ、とりわけ尖った機能もありませんが、生活を共にするスマホとしては十分な機能を揃えています。新たに防水仕様となり、お風呂場で使ったり、水洗いしても安心な性能に。もちろんおサイフケータイ対応で、Suicaも利用可能。マスク装着時でも便利な指紋認証対応です。
「オトナ向け」のシックな色合い、親しみやすい手触り
外装は金属製で、表面にはすべすべとした梨地仕上げが施されています。触ってみるとクラフト紙のような質感があり、丸みのある形状も相まって、手によくなじみます。
右側面に電源ボタンと音量上下キーが並んでいますが、電源ボタンだけ凹凸がつけられており、押し間違いにくくなっています。
これまでのPixelシリーズのデザインでは、トリッキーな色使いも特徴的でしたが、今回のPixel 5a (5G)は真逆の方向性で、“オトナ向け”のシックな色合いです。Googleが名付けた色名は「Mostly Black(ほとんどブラック)」ですが、実際にはダークグリーンと呼ぶほうが適切でしょう。夏の明るい日差しの下では、落ち着きのある深緑色に見えます。
カラーバリエーションは現時点ではMostly Blackの1色のみとなっています。ただし、前世代モデルのPixel 4a (5G)では発売時の黒系色に加えて、あとから白系色が追加されたという例もあるため、今回のモデルも販売が順調なら、カラー追加も期待できるかもしれません。
充電器はACアダプターとUSB TypeーCケーブル(USB 2.0)が付属。ACアダプターはUSB PD準拠で18Wの急速充電に対応する高性能なタイプです。また、iPhoneや他のAndroidスマホからデータ転送を行うためのスイッチングアダプターが同梱されています。
スマホの装いに工夫を凝らしたい人のために、Pixel 5a (5G)では4色の純正ケースが用意されています(別売)。リサイクルプラスチックを使用した柔らかいケースで、本体を衝撃からしっかり守れます。ただし、厚みが11.8mまで増してしまい、指紋認証がやや使いづらくなるというデメリットもあります。
スマホの最先端を走る、夜景や手ブレに強いカメラ
Pixel 5aの背面カメラは、デュアルカメラで、広角77度と、超広角118.7度の2基を搭載。ハードウェアとしては最先端ではなく、2020年発売モデルと共通のセンサーとレンズを搭載しています。
ただし、Pixelシリーズのカメラの写りにはGoogleならではの工夫も盛り込まれています。具体的には同社の機械学習技術が、写真撮影のあらゆる場面で活用されています。
例えば、一般的にスマホのカメラでは難しい暗所撮影も、Pixel 5aなら難なくこなせます。夜の街並みを撮っても、ビルのディテールまではっきりと写し取ることができます。三脚を用意すれば、長時間露光で星空を撮ることさえ可能です。
また、デジタルズームの性能も優れています。望遠レンズが無いため、ズーム倍率は7倍相当に留まりますが、倍率を上げても写りの荒さが抑えられています。ズームでは、AIによって遠くの被写体を認識し細部の荒さを補完する処理を行っています。
細かな部分では、撮影時に暗いところ部分と明るい部分それぞれで、明るさを調整可能です。暗部を明るくして黒いモノのディテールを分かりやすくしたり、あえて白飛びを作って被写体を引き立たせたりと、表現したい写真にあわせて使える便利な機能です。
動画では手ブレ補正に強く、手持ちで撮ってもブレにくい映像が得られます。多機能ではありませんが、映画のカメラワークのようなパン動作をスマホで再現する「シネマティック撮影」など、ユニークな機能も盛り込まれています。
以下、撮影作例です。画像は横1,200ドットにリサイズしていますが、クリックで原寸大画像へのリンクが表示されます。
常に最新のAndroidで使える。今秋にはAndroid 12対応も
GoogleブランドのスマホであるPixelシリーズには、最新のAndroid OSがいち早く提供されるという強みもあります。
Google Pixel 5a (5G)の場合、2024年8月まで、最新のソフトウェア更新とOSバージョンアップの提供が保証されています。発売時はAndroid 11を搭載していますが、今秋にはAndroid 12も利用可能となる見込みです。Android 12には、自分好みのデザインに一瞬で設定できる「Material You」や、消費電力の削減など、使い勝手をよくする新機能が含まれています。
Aシリーズ初の防水対応に。画面はアルコール消毒もOK
今回のPixel 5a (5G)は、廉価版の「A」シリーズとしては初めて、防水対応となりました。IPX7相当で、規格上は水深1メートルの環境下で30分沈んでいても動作に支障はないレベルとなっています。丸ごと水洗いしてスマホを清潔に保てるようになったのは、清潔さを気にする人には嬉しい改善といえそうです。
なお、Pixelスマートフォンのお手入れについて、ヘルプページによると、画面側は眼鏡用クリーナーや70%のアルコール消毒液で清掃に対応。背面はせっけんで洗える仕様となっています。
また、Pixel 5a (5G)はおサイフケータイにも対応しています。他のAndroidスマホと同様に、おサイフケータイアプリとGoogle Payアプリの両方が使える仕様。Google Payでは複数枚のクレジットカードを登録して、QUICPayやiDとして使うことも可能です。
生体認証は背面に指紋センサーを搭載。インカメラを用いた顔認証にも対応します。
モバイル通信は国内4キャリア(ソフトバンク、NTTドコモ、au、楽天モバイル)の5G/4G LTEの周波数帯をサポート。nanoSIMとeSIMに対応し、2回線同時待受も可能です。例えば通話はY!mobileを使い、モバイル通信は楽天モバイルをメインで使うといった使い分けをすれば、料金を抑えつつ快適に運用できるでしょう。
なお、ソフトバンクで販売されるPixel 5a (5G)も、SIMロックがかかっていない(SIMフリー)の状態で販売されています。対応周波数も、Google Store版と同等となっています。
Pixel 5やPixel 4a (5G)とはどこが違う?
近年登場したPixelシリーズはモデル間の差が少なく、違いが分かりづらい状況になっています。今回のPixel 5a (5G)には、先に出た上位モデル「Pixel 5」と、前世代モデルの「Pixel 4a (5G)」という兄弟機が存在します。実のところ、この2機種とPixel 5a (5G)の性能はほとんどが共通しています。
Google日本法人の広報によると、今回のPixel 5a (5G)が発売を契機に、日本のGoogle ストアでは「Pixel 5」と「Pixel 4a (5G)」のSIMフリー版が販売が在庫限りで終了となる予定としています。今後しばらくは新モデルの「Pixel 6」と今回の「Pixel 5a (5G)」の2モデルが併売される状況となるかもしれません。
なお、Pixel 5はauやソフトバンクでも取り扱いがあり、Pixel 4a (5G)はソフトバンクで全国販売されています。
Pixel 5と比べると
2020年発売のフラッグシップモデル「Pixel 5」と比較すると、画面の大きさや素材の仕上げ、ディスプレイの一部の機能に差があります。Pixel 5の価格は74,800円と、Pixel 5a (5G)と比べると2万円ほど上回っています(Google ストアでの販売価格)。
Pixel 5の外装はアルミニウム素材で、厚みは8.0mmとコンパクト。片手持ちでのホールド感や、持ち歩く時の利便性ではこちらが上回っている印象です。
画面サイズはPixel 5の約6.0インチに対して、Pixel 5a (5G)は6.34インチとやや大きめ。どちらも有機ELディスプレイですが、Pixel 5のみ90Hz駆動の「スムーズディスプレイ」に対応しています。また、バッテリー容量はPixel 5a (5G)が4,680mAhで、Pixel 5が4,080mAhと、Pixel 5a (5G)の方が大きくなっています。
Pixel 5a (5G)にあって、Pixel 5は非搭載となっているのが3.5mmイヤホンジャック。Pixel 5ではUSB Type-Cアダプター経由で3.5mmジャック対応の有線イヤホンを利用できます。
その他のスペックの上の両機種の差はほとんど違いがありません。両機種ともチップセットはSnapdragon 765Gで共通。カメラの構成も同じです。
メモリはPixel 5が8GB、今回のPixel 5a (5G)は6GBと多少の差がありますが、どちらも十分な規模を確保しています。スマホゲームをヘビーに遊ぶ人でもなければ、普段使いで差を感じることはないでしょう。防水やおサイフケータイなどはどちらも対応です(防水性能はグレードに差分あり。下表をご参照ください)。
Pixel 4a (5G)との違いは?
前世代モデルの廉価版として、Pixel 4(5G)というモデルも存在しています。この機種も携帯キャリアではソフトバンクの独占販売となっており、今回のPixel 5a (5G)の直接の前身モデルと言えるでしょう。
画面サイズはPixel 4a (5G)が6.2インチ、今回のPixel 5a (5G)が6.34 インチで、後者が若干大きめ。どちらも有機ディスプレイ採用で、解像度もフルHD+と同じ。しかし、実機を見比べてみると、Pixel 5a (5G)の方が最大輝度が高く、白色や黒色を表示した時の色味もより正確だと感じました。おそらく、ディスプレイ製造技術の進化によって、より低価格で質の良い有機ELディスプレイを入手できたということなのでしょう。
Pixel 5a (5G)とPixel 4a (5G)との大きな違いは防水仕様で、それ以外のスペック上の差はほとんどありません。ただし、Google フォトに高画質な写真を無制限で保存できるという特典は、前機種のPixel 4a (5G)のみに付属しています。
なお、前世代には5G非対応の「Pixel 4a」というモデルも存在していますが、2021年モデルのPixel 5a (5G)には4G LTE版はそもそもラインナップされていません。
下の表は、Pixel 5a (5G)、Pixel 5、Pixel 4a (5G)の主な仕様をまとめたものです(※表の右端は横スクロールで表示されます)。
Pixel 5a (5G) | Pixel 5 | Pixel 4a (5G) | |
Google ストア価格 | 51,700円 | 74,800円 | 60,500円 |
カラー | Mostly Black | Sorta Sage Just Black |
Clearly White Just Black |
大きさ | 156.2×73.2×8.8mm | 144.7×70.4×8.0mm | 153.9×74×8.2mm |
重さ | 183g | 151g | 168g |
ディスプレイ | 6.34 インチ有機EL | 6,0インチ有機EL | 6.2インチ有機EL |
画面解像度 | 2,400×1,080ドット | 2,340×1,080ドット | 2,340×1,080ドット |
スムーズディスプレイ | ― | 対応(90Hz) | ― |
バッテリー容量 | 4,680mAh | 4,080mAh | 3,885mAh |
ワイヤレス充電 | ― | ○(Qi規格準拠) | ― |
防水性能 | IP67準拠 | IP68準拠 | ― |
チップセット | Snapdragon 765G(オクタコア) | Snapdragon 765G(オクタコア) | Snapdragon 765G(オクタコア) |
メモリ(RAM) | 6GB | 8GB | 6GB |
ストレージ | 128GB | 128GB | 128GB |
microSD対応 | ― | ― | ― |
メインカメラ | 広角12.2MP+超広角16MP | 広角12.2MP+超広角16MP | 広角12.2MP+超広角16MP |
インカメラ | 8MP | 8MP | 8MP |
5G | ○ サブ6 Bandn1/2/3/5/7/8/12/28/41/66/71/77/78 |
○ サブ6 Bandn1/2/3/5/7/8/12/28/41/66/71/77/78 |
○ サブ6 Bandn1/3/5/7/8/28/40/77/78 |
SIM | nanoSIM eSIM |
nanoSIM eSIM |
nanoSIM eSIM |
外部端子 | USB Type-C USB 3.1 Gen 1 |
USB Type-C USB 3.1 Gen 1 |
USB Type-C USB 3.1 Gen 1 |
イヤホンジャック | ○ | ― | ○ |
指紋認証 | ○ | ○ | ○ |
おサイフケータイ | ○ | ○ | ○ |
誰でも使いやすく、かつお求めやすい価格のスマホ
Googleが2021年秋に発売予定の新フラッグシップ「Pixel 6」は、デザインがガラッと変わります。背面カメラは望遠レンズが加わって3眼仕様となり、本体の形状もカメラを大きくアピールするものに刷新される予定です。現行のPixelシリーズのデザインを好む人には、Pixel 5a (5G)が最後のチャンスとなるかもしれません。
Pixel 5a (5G)は5万円強の廉価モデルとはいえ、前世代のフラッグシップPixel 5と引けを取らない処理性能とカメラを搭載。ディスプレイは大きく、手に馴染みやすい丸みのあるデザインは、個性的でありつつ実用的でもあります。防水への対応は、身の回りの清潔さが気になる昨今の状況では、待望の機能と言えます。
うれしい防水対応ですが、デメリットもいくつか感じました。Pixel 5と比べると、本体の厚みが0.8mm多く、重さは32g重くなっています(重さの違いはバッテリー容量の差も影響していそうです)。わずかな差ではありますが、長時間使った時の腕への負担はかなり変わってきます。
Pixel 4a (5G)と比べても、厚みがやや増しており、ディスプレイが若干縦長になった影響もあり、片手持ちでの操作は難しいように感じました。ただし、片手操作の使用感は、次期OSのAndroid 12で改善が予定されているため、半年もすれば気にならなくなるかもしれません。
いずれにせよ、5G対応で前年度のフラッグシップとほぼ同等の性能を備えつつ、価格を2万円ほど下げてきたPixel 5a (5G)のコストパフォーマンスは注目に値します。スマホにそこまで性能を求めないならば、この機種を選んでおけば、まず間違いないでしょう。
秋に出るPixel 6では望遠レンズも搭載し、カメラ性能がさらに向上します。チップセットもGoogle独自設計となり、AI処理の性能強化もうたわれています。より新しい尖ったスマホを求める人には、Pixel 6を検討する余地もあるでしょう。