8月28・29日に2夜連続計9時間にわたって生放送されたフジテレビ系大型バラエティ特番『FNSラフ&ミュージック~歌と笑いの祭典~』。松本人志、中居正広、ナインティナイン、千鳥、アンタッチャブルという豪華MC陣を迎えて“歌と笑いの融合”を掲げ、一流のアーティストと芸人が時にコラボしながらパフォーマンスを見せていく構成で、生放送ならではのドキドキ感も随所に見せた。

放送中はTwitterのトレンドを席巻し、視聴率は同局の重点ターゲットのひとつであるキー特性(13~49歳男女)で非常に高い数字を獲得、1日目は個人全体でも横並びトップだった。他局の制作者からも「フジテレビの底力を見た」といった声があがっている。

この成功でフジ社内の雰囲気も向上しているというが、今回の番組はどのようにして実現しのか。チーフプロデューサーの中嶋優一氏と、総合演出の萬匠祐基氏に、舞台裏を聞いた――。

  • 『FNSラフ&ミュージック~歌と笑いの祭典~』 (C)フジテレビ

    『FNSラフ&ミュージック~歌と笑いの祭典~』 (C)フジテレビ

■どぶろっくと想像以上の“本気”を見せたIMY

この番組の構想が持ち上がったのは昨年末。“歌と笑いの融合”というコンセプトは、「コロナ禍の中で、ずっと家にいらっしゃる方が楽しみに待っているものが、“笑い”と“音楽”だというのが明らかだったので、これが融合したお祭りであれば皆さんに楽しんでいただけるのではないか」(中嶋氏)という考えのもとで方向性が決まった。

様々なアーティストやお笑い芸人がパフォーマンスを繰り広げていく中で、この“融合”を象徴したのが、どぶろっく×IMY(山崎育三郎、尾上松也、城田優)のコラボステージだ。どぶろっくの歌ネタ「大きなイチモツをください」を、本格的なオーケストラ&バンド演奏を従えたIMYの3人が、ミュージカル仕込みの大迫力による美声で見事に歌い上げた。

萬匠氏は「歌詞に関してはお笑い班のスタッフがどぶろっくさんと考え、音楽班のスタッフは撮り方の演出部分を担うという形で作っていきました。『こんな画を撮りたいから、こんな動きにしてみるのはどうか』みたいなやり取りもありましたね」と映像面だけでなく、普段はあまり接点のないお笑い班と音楽班スタッフの融合も行われていたことを明かし、その中で、「IMYの3人からもアイデアをたくさんいただき、こちらが想像していた以上にノッていただきました」と演者を本気にさせた。

同じステージに立たないパターンでは、EXITがEXILEのネタで漫才を披露し、そのままEXILEのスタジオに振ると、EXILEが「EXIT」という楽曲をパフォーマンス。ミルクボーイは、次に控える浜崎あゆみのネタで漫才を披露したが、「浜崎さんの信頼を得ている音楽班のディレクターが、お笑い班のリクエストを受け止めて、浜崎さんの“あるある”みたいなものを漫才のネタに提案することで、浜崎さんご本人にも楽しんでいただけるようなことを考えました」(萬匠氏)という。

そして、パフォーマンス後のMCとのトークパートでは、「アーティストと芸人が共通して話せるテーマを作るべく、取材したりアンケートに答えていただいたりして、松本さん、中居さん、ナイナイさんから笑いを引き出していただけるような話題を設定しました」(萬匠氏)と、様々な場面で“融合”が行われていた。

中嶋氏は「かつてのドリフの番組でも、コントがあって、松田聖子さんの歌があって、ヒゲダンスがあってというような構成でしたし、クレージーキャッツもバンドマンですから、音楽と笑いというのは、親和性があるものだと思うんです」と強調。

一方の萬匠氏は「お笑いと音楽が段積みになる構成で、お笑いのお客さんと音楽のお客さんがそれぞれついてきてくれるのかという不安もあったんですが、結果としては良い形にできたのではないかと思います」と手応えを語った。

■MCのタレント力×フジバラエティの歴史

2日間の中でも大きな盛り上がりを見せたのが、1日目の生放送中にMC陣が生電話でゲストを緊急ブッキングし、2日目に急きょスタジオにやってきてもらうという企画。中居正広から呼ばれた笑福亭鶴瓶、岡村隆史から山田孝之、ノブから本田翼、そして松本人志から内村光良と、豪華な面々が次々にスタジオへ駆けつけた。

萬匠氏は「何か2日間の連動性がある企画ができないかと考えていた中で、スタジオからMCの皆さんが呼びかけて、その方がその声に応えて登場する…なんて発想から発展してああいう形になったんです。“生放送ならではのハプニング感”がほしいという思いもありました。このコーナーで、1日目・2日目に30分ずつ時間を空けていたので、正直『どうなるんだろう…』という思いだったのですが、2日目の昼過ぎくらいから、実際に来てくれる方が決まってきて、そこから構成を埋めていったという感じです。最終的に決まったのはギリギリのタイミングだった方もいらっしゃいました。MCの皆さんのタレント力や人間力、それからフジテレビのバラエティが培ってきた歴史というのも相まった気がして、思っていた以上の結果になりました」と興奮を隠せない。

特に、松本が内村に電話をかけるというシーンは、番組を盛り上げようという思いが強く伝わってくる場面で、「本当にありがたいです。もう感謝しかないです」と中嶋氏。今回と同様に“奇跡の共演”が実現した『笑っていいとも!グランドフィナーレ』(2014年)の直後に放送された『ワイドナショー』で、松本は「あれを見た若い人が『テレビって面白いな』とか『あんなステージ立ちたいな』ともし思ってもらえたら、それは本当に素晴らしいなって思う」と語っていたが、今回も根底にそんな気持ちがあったのではないかと想像されるシーンだった。

“奇跡の共演”と言えば、その『笑っていいとも!グランドフィナーレ』以来の絡みとなった、松本人志×爆笑問題も1日目のラストに実現。中嶋氏は「この3人のトークがどんな形になるのか、正直誰も見えなかったです」と振り返り、萬匠氏は「爆笑問題さんの席を用意したものの、座っていただけるのかすらイメージが湧かなかったので(笑)、実際に座っていただいて、あのスリーショットが撮れたのはすごくうれしかったです」と心境を明かした。