山梨県、東レ、東京電力ホールディングス、東京電力エナジーパートナー、日立造船、シーメンス・エナジー、加地テック、三浦工業、ニチコンは9月1日から、コンソーシアム「やまなし・ハイドロジェン・エネルギー・ソサエティ(H2-YES)」を構成し、大規模P2Gシステムによるエネルギー需要転換・利用技術開発に係る事業を開始した。

同事業は、グリーンイノベーション基金事業(再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造プロジェクト)における国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の採択を受けて実施する。

P2Gシステムは、再生可能エネルギー等由来の電力を活用し、水の電気分解から水素を製造する技術。カーボンニュートラル社会の実現に向け、再生可能エネルギーの導入拡大と温室効果ガスの削減において、世界的に期待されている技術であるという。

山梨県、東レ及び東京電力HDは、NEDOの委託事業として、P2Gシステムを山梨県甲府市の米倉山電力貯蔵技術研究サイトに構築し、6月から試運転を開始している。

同事業では、NEDOの委託事業における技術開発成果を活かし、再生可能エネルギーを安全・安心に水素エネルギーに転換できる固体高分子(PEM) 形水電解を用いて、水電解装置の大型化・モジュール化に向けた設備設計や各種試験を行う。期間は2021年度から2025年度までの5年間。複数箇所で、モジュール化したP2Gシステムを16MW規模で導入し、大規模需要家におけるボイラー等による直接的な化石燃料の利用を水素エネルギーに転換する実証を計画している。

今後、「水電解装置の大型化・モジュール化、及び優れた新部材の装置への実装技術開発」と、「熱需要や産業プロセス等の脱炭素化実証」を推進することにより、将来の再生可能エネルギーの大量導入に併せ、さまざまな地域や場所への当該システムの展開を目指していく。

山梨県は、県内で技術開発が進められたP2Gシステムのグローバルな展開により、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル社会の実現に向け、先頭に立って取り組んでいくという。東レは、同事業では同社が開発した「炭化水素系電解質膜」を実装した高効率大型水電解装置を実現し、グリーン水素サプライチェーンの構築を通じて、水素社会・カーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。

東京電力HD・東京電力EPは、同実証事業で再生可能エネルギー由来の電力も利用できる"水の電気分解による水素の製造"から、"工場等のお客さまが熱エネルギーや産業用ガスとして水素を利用する"までをサプライチェーンでサービス提供することと、電化の推進を通じてカーボンニュートラル社会の実現を目指すとしている。

日立造船は、再生可能エネルギーをグリーン水素へ転換する水電解装置の大型化・モジュール化の開発に取り組む。グリーン水素製造インフラの社会実装を目指すとともに、再生可能エネルギー電源の導入拡大、水素の燃料化サプライチェーン構築などのP2G製品・サービスの普及を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していくという。

シーメンスエナジーは、同実証事業に参画することにより、さらなるグリーン水素製造及び供給の実現に向けて取り組む。加地テックは同実証事業では、水素圧縮装置で培ってきた技術に関する知見を活かし、P2Gシステムで製造するグリーン水素の価値を向上させるシステムの開発に取り組んでいく。

三浦工業は、同実証事業においては再生可能エネルギー由来のグリーン水素燃料を活用した高効率な蒸気ボイラの開発を担う。熱需要の脱炭素化を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していくとのこと。ニチコンは、今回の実証事業では、水電解装置に最適な電力変換器の開発を進める。大型化・モジュール化・電力変換の高効率化等の課題に取り組み、価値ある電力変換システムの創出により、P2Gシステムのさらなる発展を目指す。