日本航空が新たにスタートさせた「JALマナーレッスン」。本物の客室乗務員が講師となってビジネスマナーを教えてくれる、とても画期的なサービスだ。

マイナビニュースの若手社員もさっそくこのサービスを利用し、前回は「第一印象」をアップさせる方法を教わった。

今回は、ビジネスパーソンが身に付けるべき「話し方」について、日本航空のチーフキャビンアテンダント、兼ビジネスサポートアドバイザーの榎本真純さんに教わった。

話し方は雰囲気が大切。語尾はしっかりと発音すること

  • 前回に続き、日本航空のチーフ客室乗務員、兼ビジネスサポートアドバイザーの榎本真純さんからレクチャーを受ける

    前回に続き、日本航空のチーフキャビンアテンダント、兼ビジネスサポートアドバイザーの榎本真純さんからレクチャーを受ける

ここでも大事にすべきは「おもてなし」の心。すなわち、「相手を思いやる気持ちを、相手に伝えるように表現すること」である。

「まず、話し方には“言葉遣い”も含まれます。『言葉遣いは心遣い』と心掛け、謙虚な気持ちを表現しましょう」

さらに榎本さんは、「大切なのは、温かく話しやすい雰囲気を作ること」だと続ける。

「皆さんも、柔らかな表情で温かい雰囲気の人には話しかけやすいですよね? また、話している最中はしっかりアイコンタクトをすると、『この人はちゃんと話を聞いてくれている』と思われます。一呼吸、間合いを入れながら話すと、より丁寧な印象になるので、ぜひ心掛けてみてください」

また、話すときは適度に呼吸を入れたり、抑揚を付けたりすると、相手が聞き取りやすくなるそうだ。そして、専門用語や流行語、若者言葉を使わないことも、ビジネスの場では大切だという。

「航空業界には、『ギャレー』という言葉があります。飛行機のとある部分を指す単語ですが、当然、お客さまに『ギャレーに来てください』と言っても伝わりません。専門用語を使わず、誰にでも伝わる言葉選びが大切です。ちなみに、ギャレーとは飲み物や食事を準備する台所のことです」

「明瞭な発言」であることも常に意識したい。榎本さんによると、「日本語は語尾まで聞かないとわかりにくい言葉」だという。文章の初めで、肯定か否定かがわかる英語と違い、日本語の場合、例えば「行きます/行きません」などは、語尾までハッキリと発音しなければ誤解が生じやすい。特にマスクで声がこもりがちの今は、なおさら注意が必要だ。

敬語は3種類を使い分けること! 「クッション言葉」も意識すべし

改めて敬語の基本もおさらいしよう。

日本語は複雑で、敬語にも3種類がある。

・丁寧語(言葉に「お」や「ご」を付けたものなど)

・謙譲語(自分や身内をへりくだる表現。自分が主語)

・尊敬語(相手の行為を敬った表現。相手が主語)

これらは状況に応じて使い分ければいいのだが、実際には簡単ではない。そもそも、普段使っている言葉をしっかり敬語に置き換えられるかも怪しいところだ。

例えば、

・ある=ございます、ございません

・いる/いない=おります/おりません

・そうです=さようでございます

・やる/やらやない=いたします/いたしかねます

・知っている/知らない=存じ上げております/存じ上げません

・わかった/わからない=かしこまりました/わかりかねます

特に「さようでございます」などは難しく、とっさに出てこない人も少なくないようだ。

ちなみに榎本さんによると、「わかりかねる」などで使われる「かねる」の意味は、「一所懸命努力したけど、できなかった」という意味合いが込められているという。

「できない」「わからない」などとキッパリ否定してしまうと、相手を傷つけ、冷たい印象を与えてしまいかねない。それを上手に和らげる効果が「かねる」には含まれているのだ。まさに日本語ならではの、相手を思いやる気持ちが込められた言葉である。

また、物事を頼む場合は「クッション言葉」を使うことも意識したい。

「『●●してください』と頼みたい場合は、最初に『恐れ入りますが』とクッション言葉を使ってから、『●●していただけますでしょうか?』とつなげると、印象もガラッと変わります」

例えば、

・待ってもらいたい場合
→「恐れ入りますが、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

・来てもらいたい場合
→「ご足労をおかけしますが、お越しいただけますか?」

といった具合だ。

「二重敬語」になっていない? 敬語を使う際の注意点

敬語を使い慣れていない人は、「二重敬語」や、尊敬と謙譲語の混在などに注意が必要だ。

「よく『お着きになられました』と耳にしますが、これは二重敬語。この場合は『お着きになりました』で十分です。また、尊敬語と謙譲語が混ざってしまうパターンも多くて、例えば『●●様でございますか?』は間違いで、『●●様でいらっしゃいますか?』が正解です」

他にも、気を付けたい表現としては、

・「ら抜き言葉」
×見れる、食べれる、来れる ○見られる、食べられる、来られる

・「さ、れ、入れ言葉」
×置かさせていただく、見させていただく
○置かせていただく、見せていただく

×行けれない、書けれない
○行けない、書けない

などがある。

よくあるフレーズの間違いとしては、

×コーヒーのおかわりは大丈夫ですか?
○コーヒーのおかわりはいかがでしょうか?

×1万円からお預かり致します
○1万円お預かり致します

×おつりになります
○おつりでございます

といった具合だ。

名刺交換、電話対応のマナーも社会人の必修スキル

最後は、最も基本的なビジネスマナーについてもおさらいしよう。

ビジネスの場で信頼関係を構築するためにも、ビジネスマナーの基礎は必修スキル。個人のビジネスマナーが、企業イメージや顧客満足度も左右することを肝に銘じておこう。

・クライアントを訪問する場合

ここでもまず大事なのは身だしなみだ。髪型を整え、服にシワや汚れがなく、清潔感があることを確認しよう。服装や時計、ネクタイの柄などは、周りと調和が取れていて、控えめであることを意識したい。

応接室に通されたら、明るい表情を心掛け、丁寧に挨拶し、その後はゆっくりとお辞儀をすること。名刺は両手で差し出し、両手で受け取ることが基本だ。

「モノの受け渡しは、心の受け渡しだと思ってください。名刺に限らず、モノの受け渡しはできる限り両手で行うことを意識しましょう。ただし、ペンのような小さなモノは、片手を添えるだけでも丁寧に見えますので、ぜひ試してみてください」

  • 名刺など、小さなものを手渡すときは、片手を添えるだけで丁寧な印象に

    名刺など、小さなものを手渡すときは、片手を添えるだけで丁寧な印象に

・固定電話に対応する場合

電話対応の第一印象は15秒で決まると言われている。

「電話は顔が見えないぶん、声と話し方で第一印象が決まってしまいます。電話は聴覚のみですから、聞き取り方、伝え方がより大切です」

榎本さんいわく、背筋をしっかり伸ばしたほうが声の通りもよくなるそうだ。そして、電話は「3コール以内」で出ることを意識しておこう。

「電話をかけた側からすれば、いきなり電話に出られるとビックリしてしまいます。電話は、3コールで10秒くらいかかると言われていて、もし、3コール以上待たせる場合は、電話に出てから『お待たせしました』と一言あるといいでしょう。もちろん、電話を切るときは、受話器をガチャッ! と置かないことも大切です」

ちなみに、最近ではZOOMなどのオンラインミーティングも増えたが、画面越しの場合、対面と違ってリアクションが伝わりにくいので、「反応は3割増し」を心掛けるべし。

繰り返しになるが、話し方もビジネスマナーも、大切なのは「相手を思いやる気持ちを表現すること」=おもてなしの心。これを態度や所作に込められれば、社会人として高い信頼を獲得し、会社にも大いに貢献できるに違いない。

榎本さん、今回はありがとうございました!