新型コロナの影響で業績不振に陥る会社が増えてきました。場合によっては、雇用していた従業員やアルバイトを、会社都合で解雇する必要も出てくるでしょう。そうした時に解雇を予告するために必要な書類として解雇予告通知書があります。
この記事では、解雇予告通知書はどのような書類で、どのような場合に必要か、書類を出さなかったらどうなるのかなどの疑問を解消していきます。
解雇予告通知書とは何か
解雇予告通知書とは、文字通り解雇を予告するための書面です。解雇予告については労働基準法第20条に記載がありますが、例外的なケースを除いては、従業員を解雇する際は30日前までの予告が義務付けられています。そうした解雇を予告するための書面としてあるのが解雇予告通知書です。
解雇予告通知書は義務?
解雇を予告するためには、必ずしも書面での予告が義務付けられているわけではありません。口頭で解雇を予告しても法律上は全く問題ありません。ただし、解雇後の元従業員とトラブルになった際は、本当に解雇予告がされたかどうかということを口頭の場合は証明できないため、書面で通知し記録に残すことが大切なのです。
解雇予告が必要な対象者とは
解雇予告の対象者は、正社員だけではありません。アルバイトやパート、契約社員、派遣社員などにも適用されます。
- 1カ月未満の日雇い労働者
- 2カ月以内の短期労働者
- 季節的業務で4カ月以内の短期労働者
- 14日未満の試用期間中の労働者
労働基準法21条では、上記に該当する労働者には解雇予告しなくても問題とされていますが、ただし例外もあるので注意が必要です。
解雇予告の進め方
解雇する本人に解雇予告をするためには、まず社内で解雇の方針を共有したほうがいいでしょう。そして、できるだけ詳細に解雇理由をまとめたメモを作成します。それをもとに解雇予告通知書を作成し、解雇する従業員に解雇を伝えて渡しましょう。
解雇予告通知書と解雇通知書との違い
解雇通知書とは、会社が従業員に解雇の意志を示す書面のことを指します。解雇通知書のなかで、ある程度期間をあけて事前に解雇を予告する書面が、解雇予告通知書と呼ばれています。したがって解雇予告通知書は解雇通知書の一種と言えます。
解雇予告通知書の中身
解雇予告通知書には一体どのような内容を書かなければいけないのでしょうか。ここでは必ず解雇予告通知書に記載する必要がある内容をご紹介していきます。
解雇日について
必ず必要なのが解雇日です。解雇日とは、解雇の効力が発生する日のことです。解雇日を記載していない解雇予告通知書では、会社の想定している支払い以上に賃金の支払い義務や解雇予告手当の支払い義務が発生する場合があります。必要以上な支払いを防ぐためにも、必ず解雇予告通知書には解雇日を記載しておきましょう。
解雇内容について
解雇予告通知書を作成する際は、なぜ解雇を行うのかについて詳細で具体的な内容を記載する必要があります。裁判で争いになった場合でも、解雇通知書の時点でどれくらい正確に解雇理由が記載されているかにより、裁判の行方が左右されるといってもいいでしょう。
解雇予告手当の計算方法
解雇予告通知書を従業員に渡した翌日から解雇日までが30日未満の場合、足りない日数分の解雇予告手当を支払わなければいけません。計算方法としては下記になります。
解雇予告手当=賞与を除く直前3カ付きに支払われた賃金の総額÷3カ付き間の暦日数×解雇予告の短縮日数分
このようにして計算した解雇予告手当分を解雇者に支払いましょう。
解雇予告通知書の書き方
解雇予告通知書に一般的に記載されている例をもとに、予告通知書の書き方をご紹介します。
記載内容
主に通知書に記載する内容は下記5点となります。
- 解雇する従業員の氏名
- 会社の名称・代表者氏名
- 解雇予告年月日
- 解雇年月日
- 解雇理由
解雇予告通知書は法律で規定されていないため、記載内容はあくまでも一例となります。しかし最低でもいつ、誰を、なぜ解雇するのか、そしていつ通知したかを明確にしておきましょう。また解雇予告時点から解雇までの期間が30日未満の場合はあわせて解雇予告手当の金額も記入しておくことに留意してください。
解雇予告通知書(会社都合)の例文
解雇予告通知書に関しては、さまざまなホームページでテンプレートが用意されており、ダウンロードやコピーで使用が可能です。無料で使用できるところも多いので、自社の状況に応じて内容を変えながら、ぜひ活用してみてください。
ただし、ダウンロード前に、使用上の注意等は必ず読んでからダウンロードするようにしてください。参考までに解雇予告通知書(会社都合)の例文をご紹介します。
令和●年●月●日
東京都●区●丁目●番●号
株式会社○○
代表取締役社長 ×××× 印
解雇予告通知書
弊社は長引く景気停滞に伴う業績不振から、●●事業の縮小を余儀なくされる事態に陥ったため、▲▲工場を来る令和○年○月○日をもって閉鎖することになりました。
誠に申し訳ありませんが、貴殿を令和●年●月●日に下記の理由により解雇しますことをここに予告します。
記
1.解雇年月日
令和●年●月●日
2.解雇理由
業績不振により、▲▲工場を閉鎖とする為 。
以上
解雇予告通知書の交付後について
解雇予告通知書が作成できたら、次は解雇する従業員への交付です。交付に関しても、さまざまなポイントがありますのでぜひこちらで確認してください。
交付方法
解雇予告通知書は書面で行い、手渡しする際はコピーした通知書に受領の日付とサイン、印鑑をもらいましょう。手渡しができない時や印鑑をもらえない時には、内容証明郵便による送付がおすすめです。それは内容証明郵便であれば受領印がなくても解雇予告通知書を受け取った証明になるからです。
また、従業員が行方不明で送付できない場合は、公示送達という制度が利用できます。裁判所に申請をして、裁判所の掲示板に解雇予告通知書をはりだしてもらう制度ですが、2週間経てば従業員の手元に届かなくても、法律上届いたものとみなされるためぜひ活用してください。
交付する際の注意点
上記では解雇予告通知書を交付する方法をお伝えしましたが、特に注意したいのは書面の送付に関することです。書類を内容証明郵便で送ったものの、相手に受け取りを拒否されれば届かないまま、解雇予告通知としての十分な機能を果たさなくなる可能性があります。そこで、追跡サービスで配送を確認することや普通郵便でも送っておくなど、常にリスクを回避するように心掛けておきましょう。
交付後の対応について
解雇予告通知書は、会社として従業員を解雇する際に最低限必要である書面です。最低限というのは、解雇予告通知書を交付し、従業員が受け取ったからといって、解雇が正当化される理由にはならないからです。つまり、解雇予告通知書1つでは強制力が発揮されるわけではないので、従業員の対応をみて次のステップに進むようにしましょう。
解雇予告通知書でトラブルを回避しよう
解雇予告通知書には、交付の方法やテンプレートなど、留意する点がいくつもあります。会社としての責任をしっかり果たし、交付後にトラブルにならないためにも、交付前にしっかりと通知内容を見直していきましょう。