8月13日、米国のペブルビーチで開催されたイベントに姿を現したランボルギーニの新型スーパースポーツカーの名前は、なんとあの「カウンタック」だった。「LPI 800-4」のサブネームからもわかる通り、当時よりも相当なパワーアップを遂げている新型車だが、「アヴェンタドール」「ウラカン」「ウルス」の3本柱が好調な中、なぜ今「カウンタック」を名乗るクルマが発売となるのか。そして、どんな仕上がりなのか。同社CEOや技術担当者、デザイン担当者らのコメントから理由を考えてみた。

  • ランボルギーニ「カウンタックLPI 800-4」

    ランボルギーニが発表した新型「カウンタック」。伝説の名車はなぜ復活したのか

初代「カウンタック」とは

初代「カウンタック」は1974年に登場した。それまでのトップモデルであった「ミウラ」がスポーツカー然とした流麗なスタイルとミッドシップに横置き搭載したV12エンジンをセールスポイントにしていたのに対し、「カウンタック」はベルトーネデザインスタジオのマルチェロ・ガンディーニの手によるくさび型の近未来的なスタイルと、パウロ・スタンツァーニのエンジニアリングによるミッドシップに縦置きしたV12を搭載した独創的なスタイルが特徴だった。

  • ランボルギーニの初代「カウンタック」
  • ランボルギーニの初代「カウンタック」
  • ランボルギーニの初代「カウンタック」
  • イタリアのサンタアガタ・ボロネーゼにあるランボルギーニ本社の併設施設に展示されていた初代「カウンタック」。シザードアを開けるとアグレッシブなデザインのインテリアが見える。リアのエアインテーク側にはベルトーネデザインのロゴが

  • ランボルギーニ「ミウラP400-S」

    同じ施設内に展示されていた「ミウラ P400-S」

車名がイタリアはピエモンテ州の方言である「Coon-tach」(クンタッチ、驚きと感嘆を表す言葉)に由来しているのは有名な話。ランボルギーニの中で、闘牛に関連しない名称を持つクルマは珍しい。車名の綴りが「Countach」だったことから日本では「カウンタック」と呼ばれるが、今でも現地では「クンタッチ」と呼ばれている。

名前に続く「LP」は縦置きミッドシップを意味する「Longitudinale Posteriore」の頭文字。LPに続く数字は排気量を10分の1にしたもので、初代プロトタイプは5.0Lだったから「LP500」、市販モデルは4.0Lで「LP400」といった具合だ。

発売当時の1970年代~1980年代始めは、日本でもスーパーカーブームに火が付いた時期。カウンタックはその主役となり、大きく上方に開く「ガルウイングドア」(と呼ばれたが、正式にはシザードア)も話題になった。3年前にイタリアのサンタアガタ・ボロネーゼにあるランボルギーニ本社を訪問したが、併設の博物館では最も目立つ位置に美しいグリーンのLP400が展示されていた。

新型「カウンタック」は112台の限定生産

新型車「カウンタックLPI 800-4」は、カウンタックの50周年を記念して開催されたペブルビーチの「ザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング」に登場した。画期的なデザインとルールを破ったテクノロジーでアイコニックな地位を築いたカウンタックに敬意を表し、21世紀に合わせて進化させた未来的なリミテッドエディションとして製作された1台だそうだ。

  • ランボルギーニ「カウンタック LPI 800-4」

    50周年を記念する新型車「カウンタックLPI 800-4」

同社のステファン・ヴィンケルマンCEOは、カウンタック復活の理由を「カウンタックLPI 800-4は先代と同様、時代の先を行くモデルです。最も重要なアイコンのひとつとされるカウンタックは、ランボルギーニのデザインとエンジニアリングの信条を体現するだけでなく、何よりも『大きな夢がある』という哲学を表しています。LPI 800-4は、70年代と80年代を象徴するカウンタックが2020年代にはどのようなエリート・スーパースポーツモデルに進化するかを想像したモデルです。外観もサウンドも、そして何よりその走りが、常にインスピレーションとスリルをもたらすという、ランボルギーニの不朽の感動的なパワーを本質的に表現するモデルです」と語っている。

リミテッドエディションということで、生産台数は初代の社内プロジェクト名「LP 112」にちなんだ112台に限られる。LP 112はエンジン縦置き(LP)の最初(1番目)の12気筒モデルであることを表した車名だ。

  • ランボルギーニ「カウンタックLPI 800-4」

    「カウンタックLPI 800-4」は112台の限定生産。いったい、誰が手に入れるのだろうか…

初代を踏襲したデザイン

カウンタックのフロントからリアに流れる基本的なライン、鋭い角度、独特のウェッジシェイプという特徴的なシルエットは、のちに続く「ディアブロ」「ムルシエラゴ」「アヴェンタドール」などの歴代トップモデルをはじめ、近代スポーツカーのデザインに革新をもたらした。新型のカーボンモノコックボディはカウンタックらしい「顔」を印象付ける長くて低い長方形のグリルとヘッドライト、主張のあるフロントボンネット、六角形のホイールアーチをもち、グリーンハウスの鋭い傾斜は直線的で、パワフルなラインをフロントからリアへとつないでいる。

  • ランボルギーニ「ディアブロ」
  • ランボルギーニ「アヴェンタドール」
  • 左が「ディアブロ」、右が「アヴェンタドール」の最終モデル「LP780-4ウルティメ」

左右のドアはカウンタックが最初に導入したのと同じシザードアを採用。初代のデザインを純粋かつ斬新に解釈したモデルだといえる。ボディサイズは全長4,870mm、全幅2,099mm、全高1,139mmで、ホイールベースは2,700mmだ。

デザインチームヘッドのミイティア・ボルケルト氏は新型カウンタックについて、「デザインスタジオに展示されている初代カウンタックを見るたび、鳥肌が立つほど感動し、私やデザインチーム全員が、未来に向けたランボルギーニを作るためにここにいるのだということを思い出させてくれます。これは私たちのDNAの譲れない部分であり本質です。初代はランボルギーニのデザインDNAの基礎を作り、新しいカウンタックは型破りでエッジの効いたキャラクターを未来に向けて発信します」とコメントしている。

  • ランボルギーニ「カウンタックLPI 800-4」

    「カウンタックLPI 800-4」は伝統のシザードアを採用している

「シアン」用のマイルドハイブリッドシステムを搭載

搭載するパワートレインは、ランボルギーニが電動モデル「シアン」用に開発したマイルドハイブリッドシステムだ。6.5LのV12エンジンは最高出力780PS/8,500rpm、最大トルク720Nm/6,750rpmを発生。これに34PS/35Nmの電動モーターを組み合わせることで合計最高出力は814PS(モデル名では800と表記)となり、7速ISRトランスミッションとフルタイム4WDシステムによって0-100km/h加速2.8秒、0-200km/h加速8.6秒、最高速度355km/hというランボルギーニ最高クラスのパフォーマンスを発揮する。

電源となるのはリチウムイオン電池の3倍の電力を誇るスーパーキャパシタで、モーターと合わせた重量はわずか34kg。ボディの乾燥重量は1,595kgで、パワーウエイトレシオは1.95kg/PSとなっている。

チーフテクニカルオフィサーのマウリツィオ・レッジャーニ氏は「初代カウンタックを開発したチームは、ランボルギーニの先見的な技術アプローチを前進させ、予想もしない技術革新で市販車最高のパフォーマンスを実現しました。その精神がランボルギーニのR&D部門の原動力となり、LPI 800-4の先見的なハイブリッド技術に結実させ、ランボルギーニのV12モデルに求められる感動的なドライビングの最高級のパフォーマンスを生み出します」と述べている。

  • ランボルギーニ「カウンタックLPI 800-4」

    ランボルギーニ史上最高峰のパフォーマンスが期待できる「カウンタックLPI 800-4」

ところで、欲しければ買えるの?

ランボルギーニ・ジャパンによると、今回の新型カウンタックはイタリア本社、ランボルギーニ・ジャパン、正規代理店で話し合った結果、購入できる条件がそろっている顧客に向けてのみ声かけが行われたという。価格は220万ユーロ(約2億8,500万円)で、限定112台のうち10%以上が日本のオーナー向けとなるそうだ。デリバリーは2022年の第1四半期を予定している。