スーパー銭湯のアイドルとして、全国のマダムを中心に絶大な人気を誇るムード歌謡グループ「純烈(酒井一圭、白川裕二郎、小田井涼平、後上翔太)」が主演を務めた特撮ヒーロー映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』(監督:佛田洋)の完成披露舞台挨拶が8月26日、新宿バルト9にて行われた。ステージには純烈の4人と佛田監督が登場し、つめかけた純烈ファンからの熱い視線やペンライトの光を浴びながら、本作の見どころを流麗かつダイナミックに語り合った。
本作は、3年連続でNHK『紅白歌合戦』出場を果たし、今や国民的スターとなったムード歌謡グループ「純烈」が特撮ヒーローとなり、温泉の平和を守るため大活躍する映画である。酒井一圭は『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001年)のガオブラック/牛込草太郎、白川裕二郎は『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)のカブトライジャー(電光石火ゴウライジャー)/霞一甲、小田井涼平は『仮面ライダー龍騎』(2002年)の仮面ライダーゾルダ/北岡秀一をそれぞれ演じ、当時の「イケメンヒーローブーム」を牽引した。あれから10数年、ムード歌謡の世界でマダムたちを魅了する彼ら純烈が、古巣である東映特撮ヒーローの世界にさっそうと凱旋を果たしたのが『スーパー戦闘 純烈ジャー』だった。
『スーパー戦闘 純烈ジャー』には、純烈メンバーを苦闘時代から支え、励ましてきた前川清や、『紅白歌合戦』での絢爛豪華な衣装が話題を集めた小林幸子といった日本歌謡界の大御所スターのほか、『忍風戦隊ハリケンジャー』でハリケンイエロー/尾藤吼太を演じ、本作の企画にも多大な貢献を果たした山本康平、『仮面ライダー〇〇〇/オーズ』(2010年)の仮面ライダーバース/伊達明役などで知られる岩永洋昭など、東映特撮ヒーローのOBも多数出演。敵・味方ともに個性豊かなキャスト陣を束ねる佛田監督は、ふだんは日曜の朝に放送されている「スーパー戦隊」や「仮面ライダー」シリーズで特撮演出を手がけており、さらには70~80年代の東映娯楽映画の魅力を知り尽くしている大の映画ファン。まさしく、特撮&ヒーロー&アクション&風呂といった娯楽要素が盛りだくさんな本作のメガホンを取るにふさわしい人物である。
MCを務める山本康平(本作では垢すり職人で純烈ジャーの秘密を知る人物、康助を演じた)の呼び込みで、純烈の4人と佛田監督がステージに現れた。
純烈メンバーの中で唯一、過去に「変身」の経験がなかった後上翔太は、本作で「純グリーン」に変身する役柄をつかみ、晴れて自身もヒーローになれたと喜んだ。後上は客席のファンを見渡しつつ「いつものコンサートのように、ペンライトを持ってファンの方がいっぱい来てくださっています。みなさんの力でこの映画ができたんだなあと改めて思います。映画がどうだったのか、また個別でお話ができるイベントが再開すれば、いろんな感想をいただきたいです。今はホッとするというか、不思議な感覚があります」と、自信を持って世に送り出した映画がファンの方々にどのような印象を与えたのか、その感想をひとりひとりに尋ねたい思いをあらわにしてさわやかな笑顔を見せた。
純烈のリードボーカルとして甘い歌声を聴かせる白川裕二郎は「純レッド」に変身。白川もまた、客席で熱い視線を送るファンの思いに応えて「昨年はコロナ禍の影響でコンサートがなくなり、ファンのみなさんとお会いすることができませんでした。今こうして、みなさんと喜びを分かち合えるような作品が完成して、今は嬉しく思います」と、澄んだ目を輝かせながらファンへの感謝を述べた。「純烈で映画を作る」と酒井から初めて聞いたときの印象を尋ねられると「また(酒井の)冗談かと思った(笑)」と、最初は信用していなかったことを打ち明けて、周囲の笑いを誘った。企画が本当だと知った後の白川は「ゲストもスタッフも、一流の方たちが結集されていますし、これはもう一生懸命やらないとバチが当たるぞと思って取り組みました」と、ふたたびヒーローを演じるべく気合いを込めたと笑顔で語っていた。
「純ブルー」に変身する小田井涼平は、映画の完成について「やっとみなさんに観ていただけることができて嬉しい。最近はコロナ禍でありながらも(感染対策に注意を払いつつ)ちょこちょこコンサートやライブをやっているんですけれども、公開前の映画の話をするときでは言えない情報がたくさんありました。この(完成披露の)タイミングで、映画の中身のことを踏まえてお話ができるようになります。撮影の思い出話もたくさんありますので、ファンのみなさんは今後、僕たちの撮影秘話がたくさん聞けるかもしれません。ぜひ純烈のコンサートにも足を運んでください!」と、晴れて「解禁」となった映画の撮影裏話も今後のトークでどんどん披露していく意欲を燃やした。
本作の企画を立ち上げた純烈リーダー・酒井一圭は「純バイオレット」に変身する。酒井にとって「純烈メンバーをメインにした映画を作りたい」というのは、「紅白歌合戦に出場する」夢の“その先”にあったもうひとつの夢だったそうだ。酒井は「健康センターやキャバレーでがんばっていたころから、ファンのみなさんに応援していただいて、紅白歌合戦にも出場させていただきました。この映画はまさに『紅白の向こう側』として、思い描いていた構想がかたちになったもの。みなさんに映画をご覧いただく日がやっと訪れました。今日はずっと感謝の1日です。たくさんの方が、もう一回観たいな、と思ってくれたら……」と、デビューから今日までの激動の日々を思い出しつつ、念願の「純烈の主演映画」が実現し、ファンに受け入れられたことをしみじみと噛みしめた。
映画製作について酒井は「昨年、コロナ禍の影響でコンサートができなくなり、グループの存続についてどうするべきか……と考えましたが“このまま負けてたまるか!”という気持ちになったんです。全国を回るスケジュールがぜんぶなくなったのであれば、この時間を使って別なことをしようと思い立ち、2020年3月上旬に、今日MCをやってくれている山本くんや東映ビデオの中野(剛)プロデューサーに集まっていただいて、こんなことやりたい!と希望を述べました。純烈ファンのマダムのみなさんも、ヒーローファンの方々も楽しめる映画、歌謡曲とヒーローが合体したような映画を作りたいんだけど……と相談したのが、キックオフの瞬間でした」と、コロナ禍によるグループのピンチを逆手に取り、かねてからの夢だった企画を実現させた経緯を語った。
佛田監督は最初のあいさつで「とんでもない映画を作ってしまいました」と話し、娯楽要素に満ち満ちた本作の完成を大勢のファンと一緒に喜ぶようすを見せた。そして「スーパー戦隊や仮面ライダーでがんばっていたみんな……後上くんは別だけどね(笑)……が立派になって、東映の現場に帰ってきてくれた。そして、こんなにたくさんの人たちに映画をご覧いただけて、感無量です」と、気の合った仲間たちと作り上げた映画が多くのファンたちに楽しんでもらえた嬉しさを、にこやかに表現した。
温泉施設で働く垢すり職人にして、純烈ジャーをサポートする人物「康助」を演じた山本康平は、大ベテラン歌手・前川清との共演シーンで「役者とは思えないくらい緊張していた」と小田井からまさかの爆弾発言を浴びせられ、少々うろたえてしまう場面があった。小田井は続けて「康平くん、前川さんから直々に演技指導というか、アドバイスを受けてたでしょう。それで、はいわかりました!ってもう一度演技したら、その前とまったく一緒だった(笑)」とたたみかけるように語り、山本をひたすら苦笑いさせた。
撮影で思い出深いエピソードは?の問いに対して後上は「去年の10月に誕生日を迎えたとき、女王フローデワルサ役の小林幸子さんからケーキをいただき、さらに『ハッピーバースデー』を歌ってくださったこと。あのときはすぐにブログにこのことを書きたい、誰かにこの嬉しさを語りたいと思いましたが“絶対に外に漏らすな!”とスタッフからキツく言われ、いまここでやっと話せることが嬉しいです。現場で撮ってもらった記念写真は、両親にだけ送りました。自分以上に喜んでくれました」と、激レアな体験をしたものの、情報を外に出せない日々を今まで過ごしていた辛さがあったことを打ち明けた。
マスコミ向けフォトセッションが始まる直前、純烈のメンバーは「純烈ジャー」に変身した状態でステージに上がり、カッコいい戦闘ポーズを決めてみせた。その上、今回限りの奇跡のビジュアルとして変身前の酒井、小田井、白川、後上も現れ、山本と佛田監督を交えての撮影タイムが設けられた。
『スーパー戦闘 純烈ジャー』は9月10日から全国劇場にて上映が始まる。最後の挨拶でマイクを手にした酒井は「もう今日からどんどんネタバレしていいと思いますよ(笑)。映画をご覧になった方はもう運命なので、どんどんどんどん宣伝していただいて、たくさんの人が笑顔になってもらえればと思います!」とファンの方々に向け、映画を大勢の人たちに知ってもらえるよう協力してほしいと呼びかけた。
小田井は「僕たちもそうなんですが、この映画にはヒーローを演じた役者さん(岩永洋昭、松本享恭、白又敦)がたくさん出てくれていますので、そういったヒーロー共演にも注目してください。また、僕たち純烈の名前を見てもピンとこないお年寄りの方たちには、小林幸子さんや前川清さんの知名度にすがり、お2人のお名前を出したらだまされて映画を観てくれるんじゃないかなと(笑)」と、ヒーローファンから演歌・歌謡曲ファンまで、幅広いジャンル・年齢層に映画をアピールするべく“策”を練っていた。
白川は「いろんな要素が詰まった幕の内弁当のような作品になっています。9月10日から公開されましたら、みなさんお友だちを誘って、また観に来てくだされば嬉しいです」と、密度の濃い映画だけに、何度もリピート鑑賞して楽しんでもらいたいと語った。
後上は「純烈ジャーは温泉の平和を守るヒーローということで、これまでスーパー銭湯や各地の温浴施設で活動してきた純烈らしさの延長上にあると思っております。純烈を『紅白』まで連れていってくださったのと同じく、ファンのみなさまのあたたかい応援でこの映画をいろんな方たちに広めていただけたら嬉しいです。また、お時間あるときには二回、三回とご覧になってください。本日はありがとうございました!」と、純烈を愛する多くのファンに改めて感謝の言葉を述べつつ、本作の大ヒットを願った。
『スーパー戦闘 純烈ジャー』は9月10日より全国劇場にて上映される。
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