「心ばかりですが」はビジネスシーンでもよく使われる表現です。例えば取引先の担当者から手土産を手渡されるときの「心ばかりの品ですが」とは、どういう意味なのでしょうか。
この記事では「心ばかり」の意味や使用シーン、使い方の注意点や例文を紹介します。正しく使って、ビジネスパーソンとしてのマナーを身に付けましょう。金額の目安や目上の人に使えるのか、類語や英語表現もまとめました。
「心ばかり」の意味とは
「心ばかり」を漢字で書くと「心許り」となります。この「許り(ばかり)」とは範囲を限定する「~だけ」「~のみ」といった意味があります。
「心ばかり」とは、贈り物やお金を渡すときなどに使う言葉で、「ほんのわずかな気持ちを表したものであること」を指します。自分の贈り物に対する謙遜を込めた表現で、日常生活やビジネスシーンでよく使われています。人に何か贈り物を渡す際に「心ばかりの品ですが」などと添えると、大人の礼儀が身に付いた人だと感じてもらえるでしょう。
「心ばかり」の意味は「寸志」と同じ
「寸志(すんし)」がこの「心ばかり」と同じ意味で、自分の贈り物をへりくだって言うときに使います。お店でもらう景品などののし紙に、「寸志」と書いてあるのを見たことがある人もいるでしょう。
「心ばかり」はあくまで自分が贈り物をする際に添える言葉です。いただいた贈り物に対して使うのは失礼にあたるので注意しましょう。
「心ばかり」はどんなときにどう使う? シーンと使い方を解説
「心ばかり」は実際にいつ、どのように使うのかを解説します。
「心ばかり」は贈り物などをするときに使う謙遜表現
「心ばかり」は「ささやかで恐縮ですが」という、自分が贈ろうとする品を謙遜する言葉です。手土産を渡すとき、何かをしてもらったことへ感謝の気持ちを込めて品を贈るとき、お世話になった方が転勤するときなど、ビジネスシーンはもちろん日常生活の中にも、意外と使う機会があります。
「心ばかり」を贈り物をもらう側が使うのは失礼
繰り返しになりますが、「心ばかり」は謙遜表現です。あくまで自分が贈る品に対して使います。間違っても贈り物をもらった相手に「心ばかりの贈り物をしていただきありがとうございました」などと言ってしまわぬよう注意しましょう。
「心ばかり」の金額はいくら?
謙遜表現である「心ばかり」ですが、高価なものに対して使うのは不自然です。「ささやかな」という言葉にふさわしい品を贈る際に「心ばかりですが」と添えるといいでしょう。「心ばかりの贈り物」では何を贈るかではなく、感謝の気持ちを伝えることが重要です。
高価な贈り物の場合は「心ばかり」と謙遜せず、ストレートに感謝の気持ちを伝えるといいでしょう。
なお具体的にいくらくらいが「高価」となるかについては、明確な決まりはありませんが、1万円を超すものに「心ばかり」とするのはあまり一般的ではないかもしれません。「心ばかり」はあくまで、差し上げても相手の負担にならない金額と考えるといいでしょう。
目上の人にのみ使用するのが一般的
前述のように「心ばかり」にはへりくだった謙遜の意味があるため、目上の人に対して使うのが一般的です。部下や友人などに対しては「寸志」や「薄謝」、「ちょっとしたものですが」「ほんの気持ちばかりですが」などの表現がよく使われます。
「心ばかり」を使う際の注意点とは?
「心ばかり」という言葉を使う際はどんな点に注意すればいいのでしょうか。チェックして大人のマナーを身に付けましょう。
嫌味にならないように気をつける
前述の通り、「心ばかり」は「ささやかであること」という意味です。あまりに高価なものに対して使うのは不自然で、人によっては嫌味として受け取られかねません。「ほんの気持ち」という言葉がふさわしい品に対して使うようにしましょう。
謝罪の場合はお詫びから行う
「心ばかり」は感謝の気持ちを伝える以外に、謝罪のために贈る品に対して使うこともあるでしょう。これは謝罪のマナーでもありますが、いきなり「心ばかりの品ですが」と贈り物を渡すのではなく、まずきちんとお詫びをすることが大切です。
贈り物をする際に添える言葉として
「心ばかり」を使う際の注意点を挙げましたが、そこまで神経質になる必要もないでしょう。何か贈り物をする際に何を言おうか迷ったら、「心ばかりの品ですが、皆さまでお召し上がりください」などと添えるとやり取りもスムーズです。
もちろん、品物やお金がないのに言葉だけを贈るのは不自然です。
「心ばかり」の例文
例文を参考に、使い方のイメージをつかみましょう。
「心ばかりですが○○のお土産です。どうぞお受け取りください」
お土産や食事を用意したときなど、また内祝い(お返し)を必要としない、結婚祝いや出産祝いなどのちょっとした贈り物をするときに「心ばかり」を使用できます。食べ物の場合は「お口に合うとうれしいのですが」などと添えてもいいでしょう。
「心ばかりの品ですが、お礼の気持ちです」
「心ばかり」は何かをいただいたときのお返しや、してもらったことに対するお礼、お車代を渡すときなどにも使えます。「先日は○○をありがとうございました」「遠いところお越しいただきありがとうございます」など、感謝の気持ちとともに伝えましょう。
「心ばかりですが、ご霊前にお供えいただけますと幸いです」
「心ばかり」は、お祝いだけでなくお悔やみの場面でも使用できます。香典や、お花を渡す際に添えるといいでしょう。なお「霊前」という言葉は、浄土真宗以外の仏教においては四十九日前に使用し、四十九日以降は「仏前」を使用します。浄土真宗においては四十九日前であっても「仏前」を使用します。
「心ばかり」の類語・言い換え表現
では「心ばかり」と似た意味の言葉にはどんなものがあるのでしょうか。複数の言い回しを身に付けておくと、表現のバリエーションが広がります。
「ささやかでございますが」
「心ばかり」は「ささやかであること」とも言い換えられます。「ささやかでございますがお受け取りください」などのように、こちらから品を贈るときに使います。
「ほんの気持ちですが」
「ほんの気持ちですが」も、「心ばかり」と同じ意味だと言えるでしょう。
「つまらないものですが」
「つまらないものですが」という表現にも「心ばかり」と同じ意味があります。贈り物をする際の謙遜表現としてはもうおなじみですが、最近は「つまらないものを人に贈る」という表現に違和感をもつ人も。あまり積極的に使わないほうがいいかもしれません。
「心ばかり」の英語表現
外国企業の取引先へ贈り物をすることもあるでしょう。ビジネスパーソンとして英語表現についてもチェックしておきたいものです。
small
「small」には「ささやか」という意味があります。「心ばかり」も「small/little」などで言い換えられます。
<例>
- I will have a small party next week.(来週、心ばかりのパーティーを開く)
- I have brought a little something.(これはほんの心ばかりのものです)
ビジネスシーンにも使える「心ばかり」の意味やマナーをマスターしよう
「心ばかり」は「心のほんのわずかな一部を表したものであること」という意味で、自分の贈り物に対して謙遜する言葉です。ビジネスシーンでは取引先への手土産や、お世話になった方へ感謝の気持ちを伝えて何か渡す際に添えます。
大切なのは何を贈るのかではなく、感謝の気持ちです。「心ばかりの品ですが」と手渡すことにより、贈り物自体はささやかですが、ここに気持ちを込めましたと伝えることができます。