育児休業を取る前に知っておきたいのが、育児休業の期間です。男女別でどれぐらいの日数が取得可能なのかや、職種によって取り扱いが異なります。今回はそんな性別や職業による育児休業の違いや、育児休業期間中の保険料や給料などを詳しくご紹介します。
育児休業と育児休暇とは
会社員が取得できる育児に関する休みは、育児休業と育児休暇があります。この2つについてまず見ていきましょう。
育児休業
育児休業とは、育児・介護休業法によって定められた休業制度です。「1歳未満の子どもを育てている」などの条件を満たせば取得可能です。条件を満たせば、正社員だけでなく、雇用期間が定められている人も取得できます。
育児休暇
育児休暇は事業主が独自に設置する休暇制度です。2017年に改正された育児・介護休業法では、事業主に向けて「育児目的休暇の設置」が努力義務として課されましたが、企業ごとにその導入の有無は異なります。
育児休暇と育児休業の違いとは
育児休業と育児休暇。似ているこの2つの言葉ですが、明確な違いが2点あります。それは「休暇の対象となる養育する子どもの年齢」と「法的な拘束力の有無」です。
養育する子どもの年齢
休暇の対象となる養育する子どもの年齢に関しては、育児休暇が「就学前の子ども」の育児をする労働者を対象としているのに対し、育児休業は「1歳未満の子ども(条件によっては2歳まで延長も可能)」の育児をする労働者が対象となっています。
法的な拘束力の有無
「法的な拘束力の有無」については、育児休暇は給与の発生や詳細について法的に決められているわけではなく、すべて企業の裁量に委ねられています。一方の育児休業は、労働者の権利として「育児・介護休業法」という法律によって定められているものなので、企業は必ず規定に従う必要があります。
この「育児・介護休業法」は、令和3年6月に改正されました。具体的には男性の育児休業の取得を促進するため、子どもが生まれた直後の時期を柔軟に対応できるよう、育児休業の枠組みが新たに創設されたり、育児休業を分割して取得できたりするようになりました。
さらに、有期雇用労働者が育児休業もしくは介護休業を取得する際に必要となる要件を緩和するなどの規定が新たに盛り込まれました。
産休と育児休業の違いとは
育児休暇と育児休業の違いを理解したら、あわせて産休制度についても把握しておきましょう。
産休とは、女性従業員が出産に向けて準備をする期間としてもらえる「産前休業」と、子どもを出産した後に体調を整える期間としてもらえる「産後休業」を合わせた休みのことを指します。
産前休業は、出産予定日の6週間前から会社に請求することで取得できる休みです。対して産後休業は、出産後8週間、必ず休まなければならないと法律で義務付けられているものです。本人が希望する場合は出産後6週間過ぎたのち、医師の許可を得て就業することが可能となっています。
そんな産休と育児休業の違いは「出産に関連する休暇か」「生まれた子どもを育てるための休暇であるか」という点にあります。出産後8週間までの休暇が産休、出産後9週目からの休暇が育児休業となっています。
育児休業の取得条件
2017年に改正された育児・介護休業法では、事業主に向けて「育児目的休暇の設置」が努力義務として課されました。ただ、あくまで努力義務なので企業ごとにその導入の有無が「格差」として存在ます。そのため、ビジネスパーソンが気兼ねなく育児休暇を取得できるようになるのはだいぶ先になりそうです。
一方で育児休業に関しては、労働者の権利として認められています。一般的な育児休業の取得条件は「1歳に満たない子を養育する労働者であること」ですが、有期雇用労働者が取得する場合にはいくつか条件があり、申請時の時点でその要件を全て満たしている必要があります。
以下に主だったものをあげています。
- 同じ事業主の下で1年以上勤務している
- 生まれた子どもが1歳の誕生日を迎えてからも、引き続き同じ事業主の下での雇用が想定されている
- 子どもが1歳6カ月に達する日までに、労働契約の期間が満了することが明白でない
このように、転職したばかりという有期雇用労働者や、日雇いで働いている人は育児休業の制度を利用することができません。
育児休業の期間はどれぐらい?
要件を満たしていることで初めて取得することが可能な育児休業ですが、育児休業として取得できる期間は性別や職種によってさまざまです。
男女別の育児休業の平均取得期間は?
平成27年度に厚生労働省によって行われた調査では、育児休業の取得期間は約90%の女性が半年以上であるのに対し、約80%の男性が2週間以下であるという結果が出ています。中でも6割近くの男性が5日未満と回答しており、女性と男性という性別の違いにおける、育児休業取得期間の差が顕著に現れた形になりました。
このような男女の差が生まれる背景には、男性の育児休業取得を推奨する雰囲気がない職場が多いなどがあげられます。
育児休業、男性はどれぐらい取得可能?
男性が育児休業を取得する場合は、原則子どもが生まれたその当日から1歳の誕生日を迎える前日までの1年間が最長となります。配偶者が出産してから8週間のうちに1回育児休業を取得した場合、特段の事情がなかったとしても2回目の育児休業を取得できるという制度である「パパ休暇」を利用すれば、条件付きで延長することも可能です。
育児休業、女性はどれぐらい取得可能?
女性が育児休業を取得する場合は、出産後の8週間は産休扱いとなります。そのため、原則産後9週目から、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの10カ月間が育児休業期間となります。
育児休業、公務員はどれぐらい取得可能?
公務員の場合は、一般の企業に勤めている従業員とは異なり、最長で3年間(子どもが3歳の誕生日を迎えるまで)育児休業を取得することが可能です。
ただし、休業中に給料に代わって支払われる「育児休業手当金」が給付されるのは最初の1年間だけです。「2年目以降は無給になってしまうの?」と思うかもしれませんが、「保育園に入れず待機児童になる」といったケースでは、一定の要件を満たせば子どもが2歳になるまで給付が延長されます。
育児休業中の悩み事
いざ育児休業を取得するとなると、育児期間中の社会保険料や給料がどうなるのか、また、保育園には応募できるのかなど、気になることがたくさんあるでしょう。そこで、育児休業中に関する悩み事をまとめてみました。
育児休業中の社会保険料
1つ目は、育児休業中の社会保険料についてです。育児休業を取得する従業員は、社会保険料が免除されます。免除期間は、育児休業が始まる月から終了予定日の翌日の月の前月までです。ただし、育児休業終了日がその月の最終日の場合には、育児休業終了月までとなります。
これらの手続きは、事業主が日本年金機構へ「育児休業等取得者申出書」という書類を直接提出することで自動的に免除されるようになるので、従業員がしなければいけない手続きは特にありません。
育児休業中の給料
2つ目に、育児休業中の給料についてです。これから子どもを育てていくとなると、今まで以上にお金が必要になります。会社を休んでどの程度給料がもらえるのか、育児休業を取得するにあたって不安な方も多くいるでしょう。
結論から言うと、企業の規定にもよりますが、育児休業中はほとんどの会社からは給料が支払われません。しかし、給料の代わりに育児休業中に受け取ることができる「育児休業給付金」というものがあります。
この給付金は、会社からではなく雇用保険から支払われます。育児休業中は毎月、通常の給料の50~67%を受け取ることができます。
育児休業中の保育園問題
近年、「待機児童」という言葉をニュースなどでよく耳にしますが、保育所に入所したい児童数が保育施設のキャパシティーを超えてしまっており、子どもを預けられる保育所が見つからないことが問題となっています。そんな状況であるため、育児休業中の両親を持つ児童の入所申請は基本的に認められていません。
育児休業の期間は延長可能?
原則として、子どもが1歳を迎えるまでの育児休業ですが、1歳を超えても保育所に入所できない場合は、例外として1歳半まで(もしくは再延長することで2歳まで)育児休業を延長することが可能です。
育児休業の期間を延長するための手続き
育児休業期間を延長するために必要な手続きですが、従業員の方ならば会社に育児休業期間の延長を希望する旨を伝えるだけ問題ありません。
育児休業はどれぐらいの期間がもらえるか、事前にチェックしよう
育児休業の法律で定められている休暇期間は、男女や職種によって異なりますが、そもそも育児休業を取得するためには、要件を満たしている必要があるので注意が必要です。
取得できる育児休業期間の目安を事前に知っておくことで、子どもが生まれてから職場復帰するまでのスケジュール管理がしやすくなるのでおすすめです。