WOWOWが放送する「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」は、東京・豊洲エリアの情報発信拠点「WHO I AM HOUSE」で、特別展「やさしくないミュージアム」を8月27日から3日間にわたって開催した。
これに先立ち事前取材会が27日に行われ、長野・トリノパラリンピック・アルペンスキー日本代表の野島弘氏、シドニーパラリンピック・車いすバスケットボール日本代表キャプテンの根木慎志氏らが登場した。
■「価値観が変わる体験を」
「WHO I AM」はWOWWOWと国際パラリンピック委員会(IPC)の共同プロジェクトとして2016年にスタートした、世界トップパラアスリートに迫るドキュメンタリーシリーズ。勝負の世界だけでなく、人生においても自信に満ち溢れるアスリートたちが放つ輝きや、彼らが目指す世界最高の舞台・パラリンピックでの勇姿などを描き続けてきた。
今年7月には多様性を認め合う未来社会に向けた情報発信拠点として、「WHO I AM HOUSE」を東京・豊洲エリアにオープン。今回、期間限定の特別展「やさしくないミュージアム」の開催に至った。プロジェクト立ち上げからチーフプロデューサーを務める太田慎也氏は、番組づくりなどを通して、自身も大きく価値観が変わる体験をしてきたと語り、イベント開催の経緯を紹介した。
「障害者に対する見方だけでなく、日頃の生き方や考え方、新しい価値観も私はたくさん教わってきました。新型コロナウイルスの流行の中でもパラアスリートたちからこの5年間教わったことをより多くの人に発信する機会をなんとか設けたいという思いで、今回、イベントを開催させていただくことになりました」。
特別展「やさしくないミュージアム」では来場者は車いすに乗って、数々のやさしくない仕掛けが施された展示を体験。20年以上パラアスリートを追い続けてきた写真家・越智貴雄氏の写真を鑑賞することで、パラアスリートの超絶プレーをリアルに実感できる工夫が施されている。
「障害者のことを知りましょうとか、パラアスリートを応援してあげましょうとか言うのは僕は嫌なんです。口にはしなくても、障害を持つ可哀想な人たちが頑張っているから応援してあげようといった価値観が社会にあるとすれば、その価値観こそが社会における壁だと、私たちは映像を通じてずっと訴えてきました。誰にでもやさしくない局面、困難にぶち当たる局面はあるもので、ご自身の人生や日々と重ね合わせて、今回の展示で色々なことを感じていただきたいです。まずは楽しみながら。アスリートとしてパラアスリートがいかに優れていて、輝かしい人生を送っているのか、ぜひ体感いただけたらと思います」
■「くまモン」も応援に
車いすテニスのチェアワークを体感できる「まっすぐ進めない展示」、車いすラグビーの激しいぶつかり合いを体感できる「重すぎる扉の先にある展示」など、数々のやさしくない仕掛けが施されている「やさしくないミュージアム」。
一般社団法人ZEN代表理事として、現在、障害のある子どもたちの自立支援やスポーツを通じた社会活動を行う野島氏は、「パラスポーツの醍醐味をよりリアルに楽しく体験できました。より楽しくパラリンピックを観戦するためにも体験していただきたいですし、この体験をもとに今後の新しい社会につなげていただけたら嬉しいなと思います」と語った。
また、今大会で選手村の副村長や競技解説者として活躍している根木氏は、「やさしくないという言葉に僕はゾクゾク、ワクワクするんですよね。困難に直面した時に『キツいな』『しんどいな』と思うだけじゃなくて、多くの人ができないような、諦めてしまいそうなことに『いっちょやってやるぞ』と奮起する。それがパラアスリートの姿なんだと思います」とコメント。次のように展示の感想を述べた。
「実際に競技をするわけではなく、違う角度からパラアスリートのすごさを感じさせる表現がされているなと思いました。特に車いすラグビーが印象的でしたね。車いすで思いっきり当たりにいきたくないな、そういう感覚がよく表現されていて、僕は車いすバスケでよかったなと(笑)。今回は3日間の開催ですが、これを機に多くの人に知ってもらうことで、今後もこのイベントが全国に発展していったらいいなと思います」
パラスポーツを紹介する熊本のイベントで、根木氏と1on1のバスケ対決もしたこともあるという「くまモン」も応援に駆けつけ、最後は「えい、えい、モン!」とポーズを決めて、会場を盛り上げた。