無理なく心地よく、自分らしく暮らす。長年、芸能界やファッション界で活躍し、そのきっぱりとした生き方や、魅力的なファッション、ライフスタイルが幅広い世代の女性から支持されている辺見えみりさん。多くの友人に恵まれる辺見さんは、どのように人とつきあってきたのか。若い頃と現在のつきあい方の変化、人間関係で最も重視することなどを聞いてみた。
■人づきあいにおける永遠のテーマは、距離感
若い頃って誰かと仲良くなると、ずっと一緒にいたいと思うじゃないですか。寝ても覚めてもその子と遊びたい、トイレまで一緒じゃなきゃ嫌なんて(笑)。これは女子の根っこにある特性だと思います。
私も10代、20代の頃はそうでした。親友とは何もするにも、どこに行くにも一緒で、離れている時間が少ないくらい。でもあまりにも距離が近いぶん、嫌な思いをすることもありました。べったりじゃなかったほうがよかったな、もっといい関係でいられたのにな、と悔やんでいます。
だから今の私が、何よりも人付き合いで心がけているのは適度な距離感です。仕事での人間関係は当然として、仲がいい友だちでも立ち入り過ぎると絶対につらくなります。
実際、20代の頃の仲間で、今でも連絡を取っている友人は数えるほどです。家族ですら触れてはいけない領域はあるから、どう距離をとるかは永遠のテーマですね。
今の若い人は、人との距離の取り方は上手だと思います。ただSNSが盛んだから、そのマイナス面として、時には知らなくていいことまで知ってしまったりするのはかわいそうかな。
楽しく遊んだ後に、友だちのインスタを見たらあまりいい感想じゃなかったり、自分抜きで仲間と出かけていたことを知ったり。繋がらなくてもいい部分が繋がるのは、私たちの頃にはない、ステキな出会いもきっとあるだろうけれど、面倒なこと、傷つくことも多いでしょう。そういう面で、人付き合いはけっこう大変な時代だと思います。
■譲れないポイントが一緒ならOK
人との距離の取り方にあたり、大事なのは許容力ですね。若い頃は私もそうでしたが、人付き合いに潔癖になりがちなので、たとえば相手の物の考え方や言動が、ひとつでも許せないと感じたらその人のすべてを否定してしまいます。
私もそれで付き合いをやめたり、逆に相手が遠ざかっていったことがありました。全肯定・全否定と極端に振れるのは、つまりは価値観や感覚がすべて自分と同じであることを求めているんです。でもそんな人はどこにもいないんです。
私の場合、何十年も続いている友人たちは、考え方も生き方もそれぞれに違いますが、ここだけは一緒、というポイントが共通しています。「ここ」というのは何でもよくて、人にされて嫌なことだったり、何を一番優先するかの基準だったり。
特に子育てをしていると、すごくよくわかりますね。たとえばママ友のお子さんがいたずらをしたとして、そのお母さんは叱るか叱らないか。その人の育て方だからどちらも間違っていないし、批判することでもないけど、自分なら叱るからそこは一緒だな、とか。
大事にしている部分が同じなら、ほかは受け流すことができるようになりました。
何もかも自分と同じ人は存在しない。でも感覚の違いで傷つくのも怖い。だから誰とも付き合わずに、ひとりでいるのが一番いい、とはならないでしょう?
心が通いあう喜びや、仲間と過ごすかけがえのない時間は、人間関係につきものの失望や違和感といったリスクを覚悟したうえで手に入るものです。年齢を重ねるにつれ、相手との違いが「まあいいか」と思えて楽になりますよ。
■戦略的なキャラづくり。自然体の若手はウエルカム
若い頃の私は「毒舌」を売りにしていました。もともとはっきり物を言うほうですし、よく出演するバラエティ番組では、ただ座ってニコニコしているだけでお仕事が来るタイプではないとわかっていたので、自分の特徴を生かして毒舌でいこうと戦略的を練った結果です。
当時、ほかにはそういったタイプの女性タレントさんはいませんでした。バラエティ番組でどんな風に生き残っていくかは、自分で考えなければなりません。周囲の理解や手助けもあって毒舌キャラを確立していきました。
ただ最近の若いタレントさんは、毒舌というか、普段から誰にでもタメ口だったりします。戦略ではなく、ありのままなんですね。私は「目上の人には敬語を使いなさい」というタイプではまったくないし、譲れないポイントは「そこ」ではありません。
だからむしろ面白がっていますし、タメ口で話しかけられると同世代みたいで嬉しいです(笑)。
自分がどんな人間がわかると生きるのがどんどん楽になります。私は友だちをお家に招いたり、逆に友人のお宅に招かれる時間を大切にしていますが、そのときはみんな自由気ままがルール。手土産もマナーではなく、自分の好きなワインやパンを一緒に食べたいから持ち寄っています。
おもてなしの料理も自分がすべて用意するほうが気を使わないし楽だから。友人たちもそんな私をわかってくれています。気兼ねなく、ほどよい距離の仲間たちと楽しく、心地いいひと時を過ごすのが、これまで〝重ねた時間〟のご褒美です。