「ぬか喜び」は、同僚との会話などビジネスシーンでよく使われる言葉です。しかし、誤った使い方をすると失礼になるケースもあるので注意しましょう。
この記事では、「ぬか喜び」の意味や使い方、シーン別の例文を紹介します。また、類語や英語表現についてもまとめました。
「ぬか喜び」の意味と語源
「ぬか喜び」の意味
「ぬか喜び」とは「想像とは異なる結果になり落胆するような、一時的な喜び」のことを指します。一瞬のはかない喜びを意味しており、喜びの度合いを示しているわけではありません。うれしいことがあって喜んでいたものの、あとで勘違いだと知った場合に使える表現です。
「ぬか喜び」の語源として、いくつかの説があるので紹介します。
「ぬか喜び」の語源・由来1
「ぬか喜び」の「ぬか」は、漢字にすると「糠」で、「糠」とは穀物を精白するときに出る種皮や果皮のことです。接頭語として使用すれば「細かい」という意味をもちます。さらに「はかない」「むなしい」という意味をもつことから、ここに由来して「ぬか喜び」が誕生したといわれています。
「ぬか喜び」の語源・由来2
「ぬか喜び」は「糠に釘」ということわざから派生した説もあります。「糠に釘」とは「糠に釘を打ったときのように、手ごたえや効き目がないこと」です。糠に釘を打てたと思ったら、すぐに抜けてしまって落胆したことから派生して「ぬか喜び」が生まれたともいわれています。
「ぬか喜び」の語源・由来3
「抜けがら」は昆虫や爬虫類などの脱皮を指す場合が多い用語ですが、単に「中身のない状態」や「人がうつろな状態」を指すこともあります。「喜び」という感情表現に「抜けがら」の意味合いを組み合わせて「ぬか喜び」が生まれたという説も有力です。
「ぬか喜び」の使い方と例文
「ぬか喜び」の正しい使い方と例文について紹介します。「ぬか喜び」はビジネスシーンにおいて、同僚との会話やミーティングで役立つ表現です。また、紹介する例文はメールなどさまざまな場面で活用できるので覚えておきましょう。
「ぬか喜び」の使い方
以下は、最初は喜んだものの、あとで落胆したことを端的に伝えたいときに「ぬか喜び」を使って表現したフレーズです。
- ぬか喜びに終わる
- ぬか喜びする
- ぬか喜びになる
- ぬか喜びさせる
これらは現在形の言い回しですが、過去に起きたことを表現したい場合には、「ぬか喜びに終わった」など過去形に置き換えて使用できます。また、敬語として使う場合にも同様の表現で問題ありません。
「ぬか喜び」の例文
ビジネスでの会話やメールの中で「ぬか喜び」がどのように使われるのか、いくつか例文を紹介します。
・上司に話があると呼び出されたので、てっきり飲み会の話だと思ったら仕事の相談だった。ぬか喜びに終わった。
・自分の提案が採用されたと聞いていたが、ただの誤報でぬか喜びして自己嫌悪に陥った。
・顧客に契約したいと伝えたが、上司に相談したら断られてしまった。顧客にぬか喜びさせてしまった。
・顧客の反応はよかったが、契約締結には至らなかった。ぬか喜びだった。
・ ぬか喜びに終わらないよう、最後まで手を抜かずに進める。
・ぬか喜びになってしまう可能性もあるが、提案すべきだと思う。
「ぬか喜び」の類語表現
「ぬか喜び」を言い換えたいときは、どのような表現ができるのでしょうか。「ぬか喜び」の類語を紹介します。
空喜び(そらよろこび)
「空喜び(そらよろこび)」は、「ぬか喜び」と同じ意味の言葉です。「ぬか喜び」と同様に、以下のような言い回しができます。
- 空喜びに終わる
- 空喜びする
- 空喜びになる
- 空喜びさせる
「空喜び」には、「ぬか喜び」の意味とは別に、「なんとなくうれしい」という意味があります。2つの意味を覚えておきましょう。
小糠(こぬか)祝い
「小糠(こぬか)祝い」も「ぬか喜び」と同じ意味の言葉です。あまり一般的な表現ではないかもしれませんが、知っておいて損はありません。
・ようやく昇給したと思ったら勘違いだった。小糠祝いとはまさにこのことだ。
・プレゼンがうまくいったと思ったら契約できなかった。小糠祝いに終わった。
水の泡
「水の泡」とは、水面に浮かぶ泡がすぐに消えていく様子に例えて、「努力が無駄になること」を意味します。日常的によく使われる表現ですが、ビジネスシーンでも使いやすい言い回しです。
・わざわざプレゼンに向けて資料を作成していたのに、誤ってデータを消してしまった。これまでの努力が水の泡だ。
・大事な商談に遅刻してしまった。うまくいきそうだったのに、水の泡になってしまった。
・これまでの努力が水の泡にならないように、発表当日までは体調管理をしっかりしようと思う。
元の木阿弥(もとのもくあみ)
「元の木阿弥(もとのもくあみ)」は、「努力したものの、元の状態に戻ること」を意味しており、「無駄になる」というニュアンスを持つ言葉です。契約を取れそうだったのに失敗してしまったときなど、「ぬか喜び」と似たような場面で使うことができます。
・順調に進んでいたプロジェクトだったが、上司の一言で元の木阿弥になってしまった。
・取引先から連絡が入り、作成していた資料が白紙になってしまった。元の木阿弥だ。
・決裁が一向に承認されない。このままでは、考えたプランが元の木阿弥になってしまう。
「ぬか喜び」の対義語
「ぬか喜び」の対義語を紹介します。それぞれの意味と例文を押さえておきましょう。
杞憂(きゆう)
「杞憂(きゆう)」とは「心配に及ばないことを心配してしまうこと」です。「ぬか喜び」とは異なり、うまくいきそうなことに対して不安な気持ちを表すときに使います。
・はじめての外回りに不安を抱いていたが、杞憂に終わった。
・失敗しそうな予感がしているが、杞憂であってほしいと願う。
・到着が遅れるかもしれないと伝えたが、杞憂だった。
取り越し苦労
「取り越し苦労」は「杞憂」とほぼ同義の表現です。「どうにもならないことを心配する」という意味があります。
・取り越し苦労ならよいのだが、先方に正しく情報が伝わっていない気がする。
・いろいろと不安に感じていたけれど、取り越し苦労に終わって安心した。
・部下がミスしないようにチェックしていたが、取り越し苦労だった。
強迫観念
「強迫観念」とは「考えないようにしようとしても、考えてしまうこと」です。
・強迫観念にとらわれると、仕事が手につかなくなってしまう。
・ミスをしたら上司に注意されるという、強迫観念に取りつかれるようになった。
懸念
「懸念」は「将来に対して不安を抱くこと」です。ビジネスシーンでよく使われる表現で、会話だけではなくメールでも頻出します。
・退職希望者が増加することが懸念されている。
・会社の事業方針への懸念が高まっている。
・他社の商品の安全性に懸念を抱く。
「ぬか喜び」の英語表現
「ぬか喜び」を英語で表現すると「short-lived joy」になります。「short-lived」が「joy」を修飾しているため、「joy」は同義の英単語に置き換えられます。さまざまな表現ができて便利なので、使用してみましょう。
「ぬか喜び」の意味や例文・使い方をマスターしよう
「ぬか喜び」は、日常生活だけではなくビジネスシーンでも使いやすい言葉です。とくに、落胆の気持ちを共有したい場面で使えます。
ビジネスシーンなどでコミュニケーションを円滑にするためにも、類語や対義語も一緒に覚えておきましょう。