毎日、仕事や何かしらの予定で埋まっていて、他のことをする余裕もない……。このような状態を言い表すには「立て込む」という表現が好ましいでしょう。直接的な「忙しい」という表現よりも角を立てずに多忙な状況を表現できます。
意味や使い方、例文をしっかり把握して、自分の状態を丁寧に伝えられる社会人になりましょう。
立て込むの意味とは
ビジネスシーンで耳にする機会が多い言葉でもある「立て込む」は、多くの用事が一気に重なってしまうことを意味しています。複数の仕事が入ってしまい、忙しい状態を表現するのに使います。
「立つ」はある場所にまっすぐな状態でいること、「込む」は詰まっている様子を表していることから、ある場所に物事が詰まっている意味になりました。
「たくさんの人が集まっている状況」についても使うことができる
仕事においては、その日の予定が詰まっていることや忙しい状態を表しますが、たくさんの人が集まって混みあっている様子を表現する場合にも使われます。ひとつの場所に大人数が集まってしまい、混んでいることを意味します。
「あのお店はお昼時になると立て込んでしまう・あのエリアは立て込んでいるので急いでいるときには通らないほうがいい」といったように、場所を対象に使います。ただ、場所を対象にしているときは、混んでいると表現するほうが一般的なので、あまり使わないかもしれません。わかりやすい表現を使うのであれば、「混んでいる・混雑している」という言葉を使ったほうが好ましいでしょう。
「立て込んでおります」で目上の人に使える敬語表現に
自分が忙しい状況をあらわす「立て込んでいる」という言葉を敬語で表現すると「立て込んでおります」になります。「今は忙しいです」というのは言葉足らずで失礼に感じさせてしまうことがあるので、目上の人には「今は立て込んでおります」というのが適切でしょう。
より丁寧にしようと「お・ご」などをつけてしまうと不自然な言葉になってしますので、そのまま使うようにしてください。
「忙しい」との違い
「立て込む」は、丁寧なだけでなく「(複数の要件が一度に重なったため)外的な要因によって忙しくなっている」というニュアンスを含んでいます。つまり、要望に応えたいけれど自分ではどうすることもできない状況なので対応できないという意味なのです。
それに対して「忙しい」は「(自分の処理能力不足など)内的な要因で要件を片づけられない」というニュアンスを感じさせてしまいます。
そのため、ビジネスシーンで「忙しい」を使ってしまうと、能力が低い人や要領の悪い人だととらえられてしまうかもしれません。また、「忙しい」と断られるより、「立て込んでいる」と断られたほうが、柔らかいニュアンスにも感じられるでしょう。
立て込むの使い方と例文
ここからは適切な場面で「立て込む」を使えるように、例文と一緒に紹介していきます。ビジネスシーンではよく使われる言葉なので、しっかりとマスターして、失礼のないビジネスパーソンになりましょう。
仕事やイベントの参加を断る場合
仕事だけでなく、会社で開催されるイベントなどを断る場合にも使える表現です。
「せっかくのお誘いですが、その日は立て込んでおりますので欠席させていただきます。また別の機会にお誘いをいただければ幸いです」
「大変申し訳ございません。仕事が立て込んでおり、対応が難しいです」
仕事を断る場合には、謝罪の言葉と一緒に伝えましょう。本意では対応したいが外的な要因によってできないという表現になるので、相手に悪い印象を与えずに断ることができます。
メールの返信が遅れた場合
送るべきメールが送れなかった場合や、返信が遅れてしまった場合に、謝罪の言葉を述べましょう。
日程変更などをしてもらいたい場合
自分の都合で会議や面談などの日程を変更してもらいたい際にも使える言葉です。
外的な要因によって参加できないことが伝わるので、相手も無理強いすることなく調整してくれることでしょう。代わりになる日程を提示しておくとスムーズかもしれません。
電話で使う場合
他社から電話をもらったけれど、つなぐ相手の都合が悪い場合は、立て込むを使って事情を伝えましょう。
立て込むの類語
続いて「立て込む」と似ている言葉について解説していきます。言い換えができるかどうかを知っていると、毎回同じ言葉を使わなくてすむので表現の幅が広がります。
「バタバタ」
ビジネスシーンで使うことはあまりありませんが、日常生活で誘いを断るときに使える表現です。「バタバタ」という言葉を使えば、やることが追われていて非常に忙しい様子を伝えられます。
「今バタバタしていて飲み会には参加できなそうだ」と連絡すれば、忙しい様子が伝わってきます。「ごたごた・~に追われている」という表現も適しているでしょう。
「取り込む」
「取り込む」は、予定にはない不意な仕事や出来事で忙しいという状態を意味します。ビジネスシーンにおいては、不意な出来事がなくても使う場合もあるので、相手への配慮を表したいときに使ってみてください。尊敬をしめす「お」と一緒に使うと、目上の相手に対してもマナー違反にならずに使えるので「お取り込み中、恐れ入ります」というように使いましょう。
また、自分自身が忙しい際にも使うことができ、「ただいま取り込み中ですので…」といったように「お」を外して使います。
「ご多忙」
これは非常に忙しいことを意味しており、相手が忙しい場合に使います。丁寧を表す「ご」がついているので、敬語表現になっており、目上の人に対して使っても問題ありません。上司や取引先の相手の忙しい状況に配慮している様子を表現できます。
「ご多忙とは存じますが、ご連絡いただければ幸いです」のように使えば、忙しいところ申し訳ないという気持ちを伝えられます。自分自身には使えないので、誰が忙しいのかを考えて使うようにしましょう。
立て込むの対義語
立て込むの対義語についても把握していきましょう。意味としては「暇・時間がある」などが対義語になりますが、ビジネスシーンで暇という表現を使うのは不適切なので、シチュエーションに適した言い換えが必要です。自分が暇なのか相手が暇なのかにわけて、それぞれの対義語を紹介します。
自分が暇なとき:「都合がつく」
自分が暇である状況なら、都合がつくという表現をしましょう。今現在忙しくても、いつなら暇になるのかを伝えるのにもつかわれるので、ビジネスシーンではよく使われる言葉でしょう。
「今日中は立て込んでおり対応が難しいですが、〇日でしたら都合がつきます」と伝えれば、日程調整もしやすく、自分が無理のない範囲で仕事を引き受けることができるでしょう。
自分が暇なとき:「ひと段落した」
自分の仕事が落ち着いたときには、「ひと段落した」と表現しましょう。ビジネスシーンよりも、日常のシーンで使うことが多いかもしれません。
「やっとひと段落したので、食事でも行きましょう」のように、一般的にも使うことができます。
相手が暇なとき:「お手すき」
反対に相手が暇なときを表現したい場合は、「お手すき」を使いましょう。相手のタイミングで対応してもらえばいいというニュアンスを含んでいるので、緊急の用事を頼むときには使わないようにしてください。
「お手すきの際にご確認のうえ、ご返信ください」で、「急ぎではないので都合がよいときに返信してほしい」という意味が伝わります。
相手が暇なとき:「お時間があれば」
こちらも相手が暇なときに、相手のタイミングで用件に対応してくれるよう促す表現です。
「お時間があればご対応いただけますでしょうか」と聞くことで、相手の予定を尊重しながら依頼している表現になります。もちろん、日常の場面で食事の誘いをしたい場合などにも活用できます。
立て込むと建て込むの違い
「立て込む」と同じ読み方で「建て込む」という言葉があります。文字入力で「たてこむ」と打つと、予測変換でこの2つが候補に出てくるので迷ってしまう方もいるでしょう。
一見同じ意味のように思えますが、「建て込む」は住宅などの建物が密集して立ち並んでいる様子を意味する言葉。「立て込む」のように用事が重なって忙しい状態を表す意味はありません。間違って使わないように注意が必要です。
立て込むの英語表現は?
立て込んでいることを英語で表現したい場合には、どのような言葉が適切でしょうか。立て込むの英語表現について解説します。
busy / hectic
最もベーシックな表現としては、「busy」でしょう。忙しいという意味をもつ単語なので、直訳では間違っていません。「I'm so busy」と言えば、忙しいことが伝わることでしょう。もっと忙しい、猛烈に時間がないという状況下なのであれば、「hectic」を使いましょう。どのくらい忙しいのかによって、この2つを使いわけてみてください。
caught up / swamped
「忙しさから身動きが取れない」という意味をもつ表現で、比ゆ的な表現になります。「be caught up」「be swamped with」という表現を使えば、忙しすぎて何もできないという状況を伝えることができます。
have my hands full
直訳すると、手いっぱいになっているという意味になり、転じて忙しさを表現しています。忙しくて何もできない状態を意味しており、日常会話でも使われます。「I have my hands full with my job」と、「with」以降に何で忙しいのか要因をつけることで、どうして忙しいのかも表現できます。
忙しい状態は立て込むを使って丁寧に表現しよう
忙しいという状況を目上の人に伝えたい場合は、「立て込む」という表現を使うようにしましょう。特にビジネスシーンでは、「忙しい」ではなく、外的な要因によってスケジュールがいっぱいになっているというニュアンスの「立て込む」を使うことで、自分の状態を上手に知らせることができます。