仕事で手抜きすればどうなるのか?
はじめに、こんな質問をしてみたい。あなたは仕事をする際、一所懸命に仕事をしているだろうか。それとも適当に仕事をしているだけだろうか。
日々一所懸命に業務を遂行しないと仕事が回らない、毎日相応に大変だ……このような声が聞こえてきそうだ。中には、何を当たり前のことを聞いているんだ!と怒られそうな質問であるかもしれない。
仕事は真剣に取り組めば見返りがある
読者である皆さんの多くは、きっと日々の仕事に精一杯向き合っているに違いないと思って、この質問を投げかけてみた。
人は仕事をして、その対価としてお金を稼いでいる。そして会社は一所懸命な社員らによって収益を上げ、そして利益を生んでいる。だからこそ給与や賞与も支払われ、社員は貢献度などに応じた評価で出世するし昇給だってする。自営業者であれば一所懸命やればやっただけ所得に跳ね返ってくる。仕事は誰もがみんな真剣に取り組んでこなしている。社会に仕事で貢献したその価値が、お金という対価で支払われていることを誰もが知っていることなのだ。
日々汗を掻くからこそお金は稼げ、汗を掻かないような人はお金を得られないという当たり前の仕組みがこの日本にはある。これは実に公平だと私は思う。サボったり怠けたりするところにお金がやって来ることは殆どないことを改めて認識しておこう。
どんなことも慣れることが一番大事
あなたも私も子ども時代があった。とても小さな頃、自転車の練習をしたことがあるのではないだろうか。既に自転車に乗れる家族や友達などに教わりながら、転んで足を擦りむいて、泣きながら日が沈むまで練習をした人も多いだろう。
しかし、自転車に乗れるようになっても、暴走すれば事故を起こすこともある。そのために自転車のマナーや交通ルールなど、守るべきことがたくさんある。ここではルールについて一旦おいておくが、伝えたいことは、習ったら次に実践することが大事であるということだ。しかも習う時は「できる人から習うのが一番近道になる」ことも知っておくといいだろう。
投資も習ったら次は実践が大事になる。小さな知識を得たら、その知識を元に、まずは少額からでいいので実際に投資を行ってみる。この実践経験が必ず後の投資に生きてくる。
また投資を行う際は、投資に対するゴールを明確にして強い意志を持つことも忘れなければなお良いだろう。経験を積めば自転車同様に投資も徐々に上手になっていく。ただし、冷静さを忘れて暴走をしないことは言うまでもない。慣れてきた時が何事も要注意だ。
休むも相場なり
ところで、何をするにしても、休息することが大事であることを意識したことはあるだろうか。休息を取ることによってまたがんばれたり、時にステップアップにつながったりすることがよくある。
何事も同じことをただ繰り返しているだけでは疲れるし、ストレスだって溜まるものだ。だからこそ、「休む」ということが大事であり、リフレッシュにつながる。
このことは投資にも共通する。そんな教えを伝える投資の格言がある。「休むも相場なり」というものだ。これが意味するところは、年がら年中株式相場にのめり込んでいると、客観的に市場を見ることできなくなってしまうことがあるので、相場の状況によっては時に何もせず、冷静になって市場をただ見つめることも大事だという教えだ。
冷静さを持つことが、大きな失敗を起こさないで済むということ。いわゆるクールダウンは投資においても必要なことなのだ。
はじめに、人は一所懸命労働をするからお金を稼げるという話をした。次に何かを成し遂げるためには経験者から習って実践することが大切さだという話をした。そして最後に、何事も時に休むことが必要だという話をした。これらは全て投資にも通ずるということもあなたにも感じられたのではないだろうか。
投資は労働だと思え
さぁ、ここから投資に対する話をしていこう。騙されずに、自分の資産を増やしていくには何から始めればいいのだろうか。いざ投資となると、まずはここで悩むことが多い。最初にするべきことは何か。それは学ぶこと、つまり勉強だ。勉強と言っても試験勉強ではないので小難しいことではない。投資に関する基本的ことを1つ1つ積み重ねて行けばいい。
その次は慣れること、つまり実践だ。実践は卓上理論とは違って知識を吐き出す場でもあり、現実世界の投資による取り引き経験を積む場である。そこには労働と一緒で頭を使い、汗を掻くことが大事なのだ。失敗もあるだろう。
しかし、この汗は、自転車で言えば実際の練習であり、労働であれば日々の業務であり、投資力を高めるためにはとても大切な作業となる。
投資が労働と一緒だと言ったのは、楽をして儲けられるほど投資の世界は甘いものでないことを私自身が知っているからだ。いい経験も悪い経験もしたからこそ強く言える。くり返しなるが楽をして資産を増やせるのであれば、誰だった楽をして過ごしたいのだ。この楽をしたいという欲求を持つ人ほど、詐欺に合うと言っても過言ではない。私は大丈夫と思わずに、本当に気を付けてほしい。
それでは投資初心者が最初にするといい勉強とは何か。まず自分で読みやすい投資に関する書籍を1冊手に取り読むことから始めるといいだろう。
書籍の購入代金は数千円程度で自分への投資だと思えば安い教材だ。中古品ならもっと安いし、図書館ならお金も掛からない。教育は万人に与えられた平等の権利だ。その気になれば1冊の本から教育はたくさん受けられる。教育とは本人次第なのだと私は思う。
投資の勉強を一所懸命に続ければ続けるほど、多くの知識が身に付くことだろう。今はインターネットでさまざまな情報をたやすく入手できる時代だが、SNSなどの投資情報には良い情報と悪い情報が交錯し、投資初心者にはそれが良いのか悪いのかの判断がつかない場合も多い。
そうした情報を区別できるようになるために、まずは自ら投資の基本を学ぶことから始めることをお勧めしたい。ゼロから基本を学ぶことはとても大変だが、本人のやる気があれば年齢に関係なく人はいくらでも吸収できる。
知れば知るほど興味は湧いてくるもので、まずは基礎力を付けよう。時々、基礎学習をおろそかにして応用学習をする人がいるが、これは間違えだ。基礎力がなければ、応用力も付かない。知識を基礎から苦労して身に付けた分だけ、その後の資産の成長の役に立つはずだ。
投資を始める時は、とにかく基礎力を身に付けることにまずは集中しよう。投資で利益を上げるための最短コースは、急がば回れだ。
著者プロフィール:市川雄一郎(いちかわ・ゆういちろう)
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP。MBA/経営学修士。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)がある。