--DXに向けた大変興味深い取り組みですね。DXを推進するにあたり、どのようなスタッフが関わっているのですか

塩谷氏:当社の特徴として、DX本部だけではなく、事業本部も含めて全社でDXを推進している点が挙げられます。

テクノロジー人材だけ、あるいはビジネス人材だけでDXを進めてはいけないと考えています。DXには、幅広いスキルが求められるので、いわば総合格闘技のようなイメージですね。しかし、ビジネスとテクノロジーの両方に精通した人材は限られているのが現状ですよね。

そこで私たちは、ビジネス側の人材とテクノロジー側の人材が一体になってDXの推進に取り組んでいます。「データ活用」と一言で言っても、データを活用する手段も目的も理解していなければいけませんし、ビジネスプロセスもわかっている必要があります。

私たちはこれまで数多くのDX事例に取り組んできましたので、今の当社は「DX2周目」と位置づけています。DX1周目ではKPIがあやふやなまま取り組んだ事例もたくさんありましたが、2周目である現在は、しっかりと勝ち筋が見える事業を育てていくためのプランを検討しています。

他社様の例を見ていると、社内にDX推進部門を新設したり、IT子会社を作ったりするようなアプローチが多いように感じます。しかし、当社にはもともとシステムを担当するグループ会社がなく、DXを推進するために情報システム部が自己変革を遂げてきた歴史があります。

以前はアウトソース一辺倒で、ITに詳しい人材が社内にほとんどいませんでした。5年ほど前からIT系のスキルを持った社員の採用を強化していて、今ではDX本部に所属する100名程度のメンバーのうち、過半数がITスキルを持つ人材です。

今になって思えば、もともと社内にITに詳しい人材が少なかったため、テクノロジー人材とビジネス人材がお互いに相談しながら事業を進める雰囲気が自然に出来上がっていたことは、DXを進めるうえでは非常に良かったのではないかとも思います。

--テクノロジーを担当する人材としては、どういった方がいらっしゃるのでしょうか

塩谷氏:DX本部の前身が情報システム部だったこともあって、従来の情シスが受け持つような業務も担当しています。その他にも、当社のお客様が使うシステムの開発や、新規ビジネスの創造など業務の幅が広いので、所属するスタッフのスキルセットも多様ですね。

データサイエンティストもいますし、セキュリティを専門に取り組んできた人もおります。リサーチ企業でデジタルマーケティングに携わっていた人もいますね。その中でも多いのは、もともとはSIerでシステム開発に従事していて、そのスキルを活用して当社で活躍してくれている人たちですね。

今はまだ構想中なのですが、今後はビジネススキルを図示化できないかと考えています。テクノロジーの知見がある社員には事業設計や事業開発の知識を身に着けてもらい、反対に、事業開発の知見を持った社員にはマーケティングやデータ活用の知識を身に着けてもらうイメージです。DX人材に必要なスキルを取得できるような道筋をイラストで示せないか、検討中です。

--DXを進める上で、どのようなことが大切なのでしょうか

塩谷氏:事業を進める際には、まず自分たちがやりたいことを1枚の絵で図示するのが大切だと思っています。すごろくのように次のステップがわかるイメージですね。漠然とゴールだけを思い浮かべるのではなく、スタートとゴールの間にどのようなイベントがあって、何がどう変化したら次のマスに進めるのかを可視化して、不確かながらも定量的に目標設定することが大切です。

何事も小さく初めて検証を繰り返すことが大切だと思うのですが、定量的に評価できないと、失敗から学べませんし、そもそも何が失敗なのかがわかりません。私たちはDX2周目だと思っていますので、過去の失敗を糧にして少しずつ改良を加えながら事業化に向けて取り組んでいきたいです。