コロナ禍の長期化により、テレワークが常態化しつつある今、テレワーク向けのツールの需要が高まっている。そうした中、コクヨグループのカウネットが7月に発売した折りたたみブースデスク「オレルタ」が反響を呼んでいる。そこで、同商品を開発したMD本部商品開発部の有井宏氏と岩坂真奈氏に話を聞いた。
観音開きで出現する書斎風デスク
通勤時間を省略できるテレワークは魅力的だが、日本の住宅事情では、テレワークがしたくても、「自宅に集中できるスペースがない」「新たに机を置くスペースがない」といった悩みを抱える人は多いだろう。
カウネットが運営しているコミュニティサイト「カウネットモニカ」の調査では、在宅ワーカーの約69%(N=382)が自宅のリビングやダイニングスペースで作業しており、約69%(N=946)のワーカーが業務中に「周囲が気になって業務に集中できないと感じる」と回答していることがわかっている。そんなテレワーカーの困りごとを解決するために、「オレルタ」は開発された。
「オレルタ」は扉幅800mm×奥行320(使用時:696)mm×高さ1,350mmと設置スペースを抑えた構造で、扉を開くとコンパクトな書斎に変わる。扉を活用して、仕事に集中できる空間を創り出すというわけだ。また、奥行きが30cm強なので、扉を閉めておけば邪魔にならない。内部の有孔ボードはフックで物を設置できる仕組みとなっており、時計やヘッドホンなど、さまざまな小物を収納できる。ちなみに、内部の天板も折りたためるそうだ。
競合製品を上回る扉の高さが強み
岩坂氏に、「オレルタ」が開発された背景を聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
「まず、在宅勤務で必要なものということでデスクに目を付けました。デスクを新たに設置する場所がリビングと仮定した場合、『オンとオフを切り替える』ことが大事ということで、これをコンセプトにしました。そして、このコンセプトをどう実現しようかという話になりました」
そこで、観音開きにすれば、扉を閉じることで机を隠すことができるため、リビングにあっても邪魔にならないという結論に至ったというわけだ。
岩坂氏は「オレルタ」のさらなる特徴として、扉の高さが1,350mmであることを挙げる。他社の類似製品は高さが1,100mm程度であることが多いそうだが、この場合、座っている人の頭が外から見えてしまう。これに対し、オレルタは頭がすっぽり隠れる。
「オレルタ」の開発にあたって、Twitterでアンケートをとったところ、「高さがあるほうがいい」という回答が多かったとのこと。個人的には、オフィスならその場所にいることを示したほうがよいかもしれないが、自宅なら壁にしっかり覆われたほうが仕事に集中できそうな気がする。
通販向け商品ならではの配慮も
「オレルタ」はコクヨグループの通販サイト「カウネット」で販売されている。そのため、「運送会社の人に運んでもらえるサイズ」「箱を開けたらすぐに使える」ようになっている。
通販で購入できる家具(特に安価な商品)は購入者が組み立てるものが多いが、家具の強度や組み立ての手間を考慮して、「オレルタ」は完成品として販売されている。
また、見逃せないのは完成品ながら、3万2,780円という価格だ。最近、テレワークを推奨する企業の中には、自宅でテレワークをするための環境を整備するための手当を出す企業が出てきている。手当の額は企業によって異なるが、「5万円以内なら、手当でまかなえるケースが多いのではないでしょうか」と、有井氏は話す。
SNS効果も狙って、ネーミングも一工夫
実のところ、「オレルタ」は、消費者の困りごとを解決するため、カウネットが独自の工夫を加えたオリジナルブランド“「カウコレ」プレミアム”から在宅ワークをより快適に進めるため、今年6月に新たに立ち上げられた「WORK FIT HOME(ワークフィットホーム)」シリーズの新商品である。
カウネットは通常、オフィス向けの製品を販売しているが、「オフィスと一般家庭は空間が異なります。例えば、一般家庭では床がフローリングであることが多いですが、オフィスは違います。WORK FIT HOMEは、一般家庭でも使える、在宅勤務をしている人向けの商品の提供を目指しています」と、有井氏は話す。
WORK FIT HOMEでは、商品のつながりを出すために、商品の色の使い方やデザインを統一しているそうだ。また、家庭に浸透してほしいという狙いから、SNSも意識するとともに、機能も伝えることができるよう、名称も工夫している。「オレルタ」も商品の特徴が表れている。ちなみに、ネーミングも横軸の展開を前提としているとのこと。
既に、「WORK FIT HOME」の新商品の開発が進んでいるとのことだが、今後の展開について、岩坂氏は「オレルタ単品では、収納などの点で物足りない方もいると思います。オレルタと組み合わせて使えるワゴンなどがあってもいいですね。われわれとしては、お客さまが快適に働ける環境の整備をお手伝いしていきたいと思っています」と話していた。