「ご足労」は「わざわざ来ていただいた」「お越しいただいた」という意味を持つ言葉で、ビジネスシーンでよく使われています。しかし、意味は知っていても正しい使い方を理解できていないという方も多いでしょう。
今回はご足労という言葉の意味や、正しい使い方を例文とともにご紹介します。注意点や誰に使用できるのか、自分が「ご足労」という言葉をかけられた際の返し方もまとめました。
ご足労の意味
ご足労という言葉は日常会話ではそれほど使われることがないものの、ビジネスシーンでは頻繁に耳にする言葉です。営業や打ち合わせの際などに日常的に使われているので、その意味や正しい使い方について深く考えたことがないという方もいるかもしれません。
丁寧な表現で、目上の人に使うご足労という言葉。まず、その意味についてご紹介します。
ご足労とは「足を運ばせる」の敬語表現
ご足労は「ごそくろう」と読みます。足を疲れさせる、または足を運ばせるという意味の「足労」に「御」という丁寧語の接頭語をつけた言葉です。足労だけではあまり使用せず、通常は「ご足労」という形で使用します。
意味は「わざわざ来る」という意味で、本来はこちらが足を運ばなければならないのに、相手の方から来ていただいたといった意味合いです。また、相手に対する感謝の気持ちを込めて、お礼の言葉を加えて使用します。
ご足労を使うタイミングは来訪の最初や最後、メールでのお礼のときなど
ご足労を使うタイミングは通常、相手が来訪してくれた際の最初の挨拶の段階になります。くわしくは後ほど例文でご紹介しますが、挨拶の際に「本日はご足労いただき、ありがとうございます」のように使います。また、最初の挨拶のみでなく別れ際に「ご足労いただきありがとうございました」といった形で使うこともあります。
また相手の来訪後に、メールでお礼を述べる際にも使用できます。さらに相手が来訪することが決まっている際に、事前にメールで「◯日はご足労をおかけし恐縮ですが、よろしくお願いいたします」などと使用することもできます。
丁寧な表現なので、取引先などの目上の人に対して使える言葉です。
ご足労の使い方を例文で
ご足労は目上の人に対して使う言葉なので、意味を理解するのみでなく正しい使い方を身に付けることが大切です。ここからは例文をあげながら使い方をご紹介します。
ご足労を使った例文
まずは具体的な例文と一緒にご足労の正しい使い方をご紹介します。
ご足労をおかけして申し訳ありません
来客時の挨拶などに使われる定番の言い回しです。最初の挨拶として使われることも多く、社会人であれば自然と使えるようにしておきたいフレーズです。
本日はご足労いただきありがとうございました
こちらは見送りなど、別れ際に使う言葉として定番の言い回しです。ポイントは来ていただいたことに対する感謝の気持ちを一緒に伝えることです。遠方から来ていただいたのであれば「遠方にも関わらず」「遠方よりはるばる」といった言葉を付け加えるのもいいでしょう。
ご足労いただくのは恐縮ですので
相手の来訪を断る際の表現の一つです。単に「申し訳ありません」や「都合がつきませんので」といった言葉よりも丁寧な断りの文句として使えます。相手の気持ちを考えた断り方の一つとして頭に入れておきましょう。
ご足労の誤った使い方
ご足労は丁寧な表現ではありますが、相手の来訪が確定する前に使用するのは、来てもらうことが前提になり失礼にあたります。基本的にご足労はこちらから求めるものではないことを頭に入れておきましょう。
それでも相手に来ていただきたい場合は「お越しいただけますでしょうか」という表現が一般的です。その際には「大変恐縮ではございますが」「申し訳ございませんが」といった言葉を付け加えるとより丁寧な表現になります。
ご足労を使う際の注意点
ご足労の使い方を間違えると失礼にあたるケースがあります。そこで使用時の注意点をご紹介します。
ご足労は目上の人に対して使う言葉
ご足労は基本的に目上の人に対して使う言葉です。そのため、同僚や部下に対して「ご足労ありがとうございます」といった言い回しはしません。基本的には取引先など、社外の目上の人に用いましょう。
もちろん、自分が相手の下へ伺う際に、「私が貴社にご足労いたします」などと使うのは間違いです。
来てもらうことが確定していないのに「ご足労」を使うのは避ける
先述した通り、来訪が確定する前に「ご足労」を使用すると、押しつけがましい印象を与えてしまうので控えましょう。
社外の人の前で自分の上司に使うのはマナー違反
また、社外からの来客がある場合に、同席した上司に対して「ご足労いただきありがとうございます」などと使用するのは、来客に対し失礼にあたりますので注意しましょう。
自分が「ご足労いただき」「ご足労をおかけし」と言われた際の返し方
逆に自分が取引先などを訪問した際に「ご足労いただきありがとうございます」「ご足労をおかけし申し訳ございません」などと言われた場合に、「はい、そうですね」などと返すわけにはいけませんね。
「こちらこそ、お時間を割いていただき感謝申し上げます」「とんでもないことでございます。こちらこそありがとうございます」など、こちらも感謝の言葉を述べるといいでしょう。
ご足労の類語・言い換え表現
ご足労はさまざまなシーン、さまざまな相手に対して使うことができます。近い意味を持つ類語や言い換え表現がありますので、覚えておくと表現のバリエーションをさらに広げることができるでしょう。
お手数
ご足労の場合、単に足を運んでくれたことに対するお礼として使われますが、それ以外にも手間をかけてしまった場合には「お手数」と表現することができます。「お手数」はご足労よりも、さらに幅が広くなります。例えば、来てもらったときだけでなく、何かをお願いした場合や、自分のために何かをもらった際には「お手数をおかけし、ありがとうございました」と、感謝の気持ちを伝えることがあります。
「お手数」という言葉も、目上の人や取引先など社外の人に対しても使える言葉です。さまざまなシーンで使えますので、ぜひ使いこなしたいワードの一つです。
お呼び立て
ご足労に近い言葉としては「お呼び立て」があげられます。この言葉はこちらから呼んで、来てもらった際に使う言葉です。ご足労と異なり、「お呼び立て」の場合はふいの来客などに使われることはあまりなく、やや使い方が限定的になります。「お呼び立てしてしまい申し訳ありません」というように使います。
意味合いはかなり近いものの、使い方が限定される分だけ、よりシーンに合った挨拶やお礼の言葉として使えるでしょう。
お越し
「お越し」という言葉もご足労と同じような形で使える言葉です。そのまま置き換えできるだけでなく、ご足労よりもさらに幅広い相手に対して使える言葉です。「今日はわざわざお越しいただきましてありがとうございました」などと使われます。
通常ご足労はビジネスシーンにおいて使う言葉で、取引先などに使います。それに対して、小売店やイベントなどに訪れた不特定多数の客などに対してはご足労よりも「お越し」という言葉が選ばれることが多い傾向にあります。
ご面倒
「ご面倒」も幅広いシーン、意味合いで使うことができる言葉です。「ご面倒」という言葉には来てもらうといった意味はありませんが、準備をしてわざわざ出向いてもらうことを「ご面倒」と表現できます。
「ご面倒」の場合も「ご面倒をおかけして申し訳ありません」と、謝罪の言葉と組み合わせて使われるのが一般的です。
ご足労の類語を使った例文
ご足労の類語を使った例文をまとめて紹介します。
・お手数をおかけして申し訳ありません
・ご面倒をおかけして申し訳ありません
・お呼び立てして申し訳ありません
「お手数」や「ご面倒」は「申し訳ありません」などの謝罪の言葉と組み合わせて使われることが多いです。相手に対して「お手数」や「ご面倒」をおかけしているので、謝罪と組み合わせるのが自然です。「お呼び立て」はこちらの希望で来てもらった、ということなので、こちらも謝罪の言葉と組み合わせて使います。
お越しいただきありがとうございます
「お越し」は感謝の言葉と組み合わせて使われることが多い言葉です。より幅広い相手に使える言葉なのでご足労と置き換える言葉として頭に入れておきましょう。
ビジネス用語「ご足労」を正しく理解し、失礼のないよう使いこなそう
ご足労はビジネスシーンを中心として広く使われる言葉の一つです。目上の人に使われることの多い言葉だけに、意味を知るだけでなく正しい使い方を身に付けることが大切です。同時に、類語なども頭に入れておくことによって表現の幅が広がり、コミュニケーションもより円滑にできるでしょう。