さて、「拘る」という漢字を読めますか? 常用漢字ではありますが、あまり見慣れない漢字のために読み方を迷う方も多いでしょう。じつは「拘る」には「こだわる」と「かかわる」の2つの読み方があります。

文中に「拘る」の漢字を見つけて読み方が分からなくても、言葉の意味を理解できていればそれほど困ることもないでしょう。この記事では意味や類語、英語表現などを紹介しますので、ぜひ読んでビジネスシーンなどで役立ててください。

  • 「拘る」とは? 2つの読み方を解説

    「拘る」の意味や読み方について解説します

「拘る」とは? 2つの読み方を解説

「拘る」には「こだわる」と「かかわる」の2つの読み方があります。詳しく見ていきましょう。

「こだわる」の意味

「拘る」を「こだわる」と読んだときの意味には「些細なことに気持ちがとらわれる、必要以上に気にする」、「妥協せずに物事をとことん追求する」などがあります。

前者は「こだわる」本来の意味でありマイナスのニュアンスを含んだもの、後者はあとから加わった意味でプラスのニュアンスを含んでいます。

「かかわる」の意味

「拘る」を「かかわる」と読んだとき、「関わる」の漢字をイメージする方もいるでしょう。「関わる」は「関係をもつ」「重大なつながりをもつ」などの意味がありますが、「拘る」となった場合はこれらの意味に加えて「つまらぬことにこだわる」というマイナスの意味が加わります。

しかし、「拘る(かかわる)=つまらぬことにこだわる」という意味だと理解できていれば、文中に「拘る」と出てきてその読み方に迷った場合も、意味は理解して読み進めることができるでしょう。

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    「拘る」の意味を理解しておきましょう

「拘る」の使い方と例文

「拘る」の読み方と意味を確認したところで、次に使い方について例文を交えて紹介します。

「こだわる」の使い方

「こだわる」は「いつまでもこだわる」という意味では、物事に執着して融通がきかないマイナスなイメージがあります

  • マニュアルに拘ると、柔軟な対応が難しい。
  • 生活リズムに拘るあまりに時間の融通がきかない。

また、「妥協せずに追求する」という意味では、プラスのニュアンスで捉えることが可能です。

  • 産地など食材に拘って作られた料理です。
  • くらし課題に拘ったサービスを提供しています。

このように同じ「こだわる」でも、文脈によってマイナスにもプラスにも捉えられます。

「かかわる」の使い方

マイナスにもプラスにも捉えられる「こだわる」に対して、「かかわる」と読んだ場合はマイナスのニュアンスになります。

  • つまらないことに拘っている場合ではない。

「拘」の字には「自由を奪う」という意味もあるため、同じ読み方の「関わる」よりもさらに強く執着するさまをイメージすればよいでしょう。また、以下のように「かかわらず」の表現に使うこともあります。

  • 努力にも拘らず、結果はついてこなかった。
  • 「拘る」の使い方と例文

    意味を理解して、誤った表現を避けましょう

「拘る」の類語表現

「拘る」の読み方である「こだわる」と「かかわる」の類語を、それぞれ紹介しましょう。

「こだわる」と似た意味の表現

「こだわる」に似た表現には「心に決めたことを押し通す」「執念深くこだわる」など、頑固さや我の強い印象をもつ言葉が多くあります。

  • 意志を貫く

「意志を貫く」は「心に決めたことを最後までやり抜くさま」を表します。「貫く」には考えや態度を変えずに保ち続けるという意味があり、こだわることと同様の意味で捉えることができます。

・周囲からとめられていたが、意志を貫いて最後まで走りきった。
・彼がプロとしての意志を貫き、仕上げた作品だ。

  • 固執する

「固執する」は「意見や考えを主張して譲らないこと」です。過去の出来事が忘れられず、こだわっているさまを表すときにも使います。

・過去に固執しているばかりでは前に進めない。
・なぜ彼女にそこまで固執するのですか。

「固執する」と「こだわる」は意味は似ていますが、「固執する」はマイナスなニュアンスを含みます。誉め言葉のつもりで使うと相手に失礼にあたるので注意しましょう。

「かかわる」の類語

「かかわる」と読むときの類語には、同じ読み方の「関わる」と「係わる」があります。どちらも常用漢字ではありますが、「係わる」を「かかわる」と読むのは一般的ではないため、教科書などでは使われていません。

なお、辞書によれば「関わる」も「係わる」も意味は同じです。以下に例文を紹介します。

  • 関わる

・その研究に関わるため、現在の業務を縮小した。
・あの人とは相性が合わないので、関わるのはやめた。

  • 係わる

・人命に係わることだから些細な変化も見逃さずに報告してください。

  • 「拘る」の類語表現

    「拘る(かかわる)」「関わる」「係わる」は同じ読みです

「拘る」の英語表現と例文

「拘る」の英語表現にはいくつかあります。例文とあわせて紹介します。

be particular about

「be particular about」で「こだわりをもつ」「こだわる」という意味があります。

  • I am particular about the color.(私はその色にこだわりをもっている)
  • I am very particular about the research to disturb rhythm of my life.(生活リズムを乱すほど、その研究にこだわっている)

「particular about」の前に「become very」をつけると、「~にとてもこだわるようになる」となります。

picky

「picky」は「えり好みする」「気難しい」という意味があります「~にこだわる」と表現するときは「be picky about ~」と表します。

  • My father is picky about language.(私の父は言葉遣いにうるさい)
  • My son is picky about food.(私の息子は好き嫌いが激しい)

「ちょっとうるさいな」「細かいことにこだわるよね」という表現をしたいときに使える英単語です。

not compromise

「not compromise」は「妥協しない」という意味です。

  • She didn’t compromise her ideas.(彼女は自分の考えに妥協することはなかった)
  • My boss has no compromise on anything.(上司は何事にも妥協を許さない)

stick to

「stick」には棒きれなどを表すほかに、「貼り付ける、動かない状態にする」という意味もあります。

  • If you stick to that way of thinking, people will leave from you.(その考え方にこだわっていると、皆が離れていくよ)
  • 「拘る」の英語表現と例文

    「こだわる」の英語表現も同時に覚えましょう

「拘る」の読み方は2つある

一見すると何と読めばいいか困ってしまう「拘る」ですが、その読み方は「こだわる」と「かかわる」の2つあることを紹介しました。

「こだわる」と読む場合には「些細なことにとらわれる」というマイナスのニュアンスと、「妥協せずにとことん追求する」というプラスのニュアンスがあります。

「かかわる」と読む場合には「つまらぬことにこだわる」というマイナスのニュアンスが。この機会に2つの読み方をマスターしましょう。