コロナ禍による巣ごもり需要の高まりに合わせて、調理家電にも人気が集まっています。そんな中で筆者が最も注目しているのが、J-FUNの「abien MAGIC GRILL(アビエン マジックグリル)」です。
こちらは2020年にクラウドファンディングで登場し、1,800万円以上の支援を受けてプロジェクトは成功。2021年春に一般発売がスタートしました。人気がすさまじく、しばらく欠品が続いていましたが、7月中旬から販売を再開しています。8月中旬の時点では、公式オンラインショップや楽天市場の公式店で在庫があるようです(価格は19,800円)。
今回、クラウドファンディングのときから気になっていたabien MAGIC GRILL(以下、マジックグリル)をお借りして、実際に使ってみました。
わずか3mmの超薄型プレートが最大の特徴
マジックグリルの最も大きな特徴は、超薄型プレートを採用したそのフォルムです。一般的なホットプレートは、鉄製やアルミ製のプレート下にシーズヒーターが設置されており、ヒーターの熱でプレートを加熱する仕組み。プレートの下には、シーズヒーターの設置スペースと、熱をテーブルに伝えないための断熱スペースが必要になります。
でもマジックグリルには、シーズヒーターが収まるスペースも断熱スペースもありません。その秘密は、独自技術のラミネートフィルムヒーターを採用していること。
厚さがわずか3ミリのプレート部分は6層構造になっており、(1)鉄製のプレート表面、(2)絶縁シート、(3)ラミネートフィルムヒーター、(4)絶縁シート、(5)熱を反射するプレート、(6)底面プレートで構成されています。極薄のラミネートフィルムヒーターを挟み込んでいるため、プレート自体を薄く、同時に熱効率も高くできるというわけです。
プレートの表面にはラミネート加工が施されているため、食材がこびりついたり、焦げついたりしにくくなっています。使うときは、スタンドとなるスイッチと、電源部分を兼ねたコントローラーを接続する仕組みです。
本体サイズはスタンド込みで、おおよそ幅400×奥行き300×高さ83mm、重さは2.5kgです。プレート部分の厚さは33mmとなっています。プレートはA3用紙くらいのサイズです。
薄いだけでなく、低消費電力で高火力なのも魅力
さっそく、マジックグリルで焼いてみました。まずはダイヤルを回して電源をオンに。火力設定は2段階のみというシンプルな設計です。「弱(約180℃)」か「強(250℃)」に設定できます。消費電力は770Wと、ホットプレートとしてはかなり低めです。立ち上がりは非常に早く、ほんの数分でプレートが熱くなってきました。
プレートの上に手をかざしてみて、熱さを感じたら準備はOKです。肉や野菜を並べてみましょう。温度設定は「強」です。このとき、油をひかなくてもいいのもマジックグリルの魅力。コーティングのおかげで、こびりつくことがほとんどなく、短時間で香ばしく焼けるというわけです。脂の多い肉の場合は、肉から出た油分だけで焼けます。
面白いのは、電源を入れるとプレートがわずかに反って真ん中が凹むこと。マジックグリルにはプレートの端に立ち上がり(いわゆる堤防)がなく、長辺にわずかな盛り上がりがあるだけ。プレートを反らせることで、肉を焼いたときに出る脂や肉汁を両端からこぼれないようにしています。
ストレートな焼肉のほかに、同時にご飯を炒めて焼肉ライスを作ってみました。プレートの中央にご飯を置き、その周りで牛肉を焼いていきます。コーンやガーリックをまぶして、焼肉のタレを絡めたらあとは混ぜ合わせるだけ。
火力が高いため、肉がすばやくカリッと焼けます。ご飯もパリッとしたおこげのように焼けるのも、このメニューの魅力。マジックグリルはフラットプレートなので、食材を混ぜるときに落としてしまわないか心配でしたが、こぼさず焼けました。こういう料理は、プレートに乗せる食材を気持ち少なめして、ていねいに焼きたいところ。
試用中は何度か焼肉をしましたが、焼けるペースがとても速く、たとえば2人で調子に乗ってばんばん肉を焼くと、食べるのが追いつかなく……。焼くのを少しストップするくらいでした。これまでも多くの家庭用ホットプレートを試してきましたが、焼けるスピードの速さはトップクラスといえます。
このすばやい焼きの理由は、ラミネートフィルムヒーターがプレート全面を効率よく加熱していることにあるようです。一般的なホットプレートは天板を交換できるようにするため、ヒーターとプレートの密着が不十分なことが多く、熱効率という意味では損をしている構造だったりします。一方で、ヒーターとプレートが一体化したマジックグリルは、熱効率が高いのです。
マジックグリルに限らず、ホットプレートに食材を乗せると、プレートの表面温度が一気に下がります。焼きムラになったり、美味しく焼けなかったりする理由のひとつです。熱効率がよいマジックグリルは、食材を置いてプレート表面温度が下がってきもすばやく高温に戻り、食材を加熱できます。お好み焼きも焼いてみましたが、豚バラ肉がお店のようにカリッと焼き上がりました。
温度設定の「弱(約180℃)」は、ホットケーキなどを焼くのに最適です。バターを少しひいて、あとは生地を流すだけ。焦げることなく、きれいに焼けました。生地をうまく作れれば、お店のようなホットケーキが焼けそうです。
マジックグリルは薄型でかさばらず、さっと使えるので朝食にも便利。焼きソーセージや目玉焼きも手軽に作れます。また、プレートでチーズを溶かしてパンや野菜、じゃがいもなどに乗せる、なんて食べ方もできます。
油が出る食材やプレートの傾斜にやや注意
今回はマジックグリルで色んな食材を焼いてみましたが、注意したいポイントがいくつかあります。ひとつは、加熱するとプレートが弓なりに曲がるため、食材によっては滑りやすいこと。たとえば目玉焼き。黄身が真ん中に向かって流れることがありました。丸く焼きたい場合は、シリコンやパプリカの枠を使うか、最初はプレートの真ん中で焼き、白身が固まってきたら場所を動かすのも手です。
もうひとつは、脂の多いホルモンや豚バラ肉を焼くと、大量の脂がプレート上に溜まってしまうこと。あふれる前にキッチンペーパーで拭き取る必要がありました。マジックグリルでは脂の多いホルモンもカリッと焼けて美味しいのですが、流れ出た脂や肉汁のケアが欠かせません。サムギョプサル用のホットプレートなどには、油を落とすため斜めになっている製品がありますが、次の製品には脂を落とせる傾斜スタンドと脂受けが付いたらいいなと思いました。
メンテナンスと片付けの問題も解決したマジックグリル
ホットプレートを使う上で面倒なのが後片付けです。焼肉や焼きそばを楽しんだあとは、プレートや本体を洗って、棚などに収納する必要があります。
近年はコンパクトなホットプレートも多く登場していますが、それでもそれなりの収納スペースが求められます。ホットプレートは上に物を乗せたりできないので、平置きできてある程度の面積がある場所というように、家庭の中では意外と難しかったりするのです。しかし、マジックグリルにはこうした問題がありません。幅5cmぐらいのスペースがあれば、立てかけて収納できます。
マジックグリルを使い終わったら、プレートが熱いうちにキッチンペーパーで拭くだけで、ほとんどの汚れを拭き取れます。プレート自体は中性洗剤で洗えるので、残った油が気になったときもさっと洗えるのはグッドです。
薄型スリムで収納しやすく、それでいて高火力で食材を加熱できるマジックグリル。とても使い勝手がよく、筆者宅では食事テーブルに半ば常駐するくらいの存在感で頻繁に使っています。
普段の食事だけでなく、買ってきたお惣菜でちょっと一杯にも大活躍。焼き鳥を香ばしく焼き直したり、コロッケやカツも衣をカリカリに温め直せるのが便利。2~3人世帯の普段遣いから、ホームパーティーまで、幅広く活躍してくれるでしょう。