秋の果物の代表「梨」。シャッキリした食感と水分たっぷりでジューシー、さっぱりとした優しい甘さで誰にでも好まれる果物です。クセのない甘さの強い果汁なので糖質が心配とか、水分を摂るにはいいけれど、栄養価は期待できないのでは……と思っている方も多いことでしょう。実は梨には健康と美容に良い栄養価もたくさん含まれているんです。梨とその栄養価、健康効果について調べてみました。
梨とは
梨は、バラ科ナシ属の木になる果実です。原産地は中国で、日本に入ってきたのは弥生時代で、『日本書紀』にも登場する日本人には縁の深い果物です。『日本書紀』によれば、持統天皇が梨の栽培を勧める記述があり、大昔から女性は甘いものが好きだったのかもしれません。現在では、品種改良によってさまざまな食感や甘さを楽しめるようになりました。
梨の種類
梨には「和梨」「中国梨」「洋梨」の3種類があります。主に国内で生産されている和梨に対して、中国梨はあまり普及していません。洋梨は、最近スーパーなどにも並ぶようになった「ラフランス」や「ルレクチェ」などで、和梨とは違い、芳醇な甘さとねっとりとした食感を楽しめます。
私たちに馴染みの深い和梨は、果皮の色で「赤梨」と「青梨」に分類されます。
赤梨
赤梨は皮の色が黄褐色で「幸水」や「豊水」がこの仲間に入ります。赤梨はザラザラとした表面で、口当たりが柔らかく強い甘味を感じることができます。現在は甘みの強い果物が好まれるようで、生産量の6割は赤梨が占めています。
青梨
青梨の代表的な品種は「二十世紀」です。青梨は、ツルツルした表皮と丸々した形が特徴で、なめらかな舌触りと酸味も感じられるさっぱりした甘味があります。
梨の栄養成分
梨が出回るのは、種類によってばらつきがありますが、代表的な幸水は7月から9月初旬、二十世紀は8月中旬から10月中旬です。まさに夏真っ盛りから、夏の終わりまで食べることができる果物です。
梨の主な栄養成分(日本梨の可食部100gあたり)は以下の通りです(食品成分データベースより)。
- エネルギー:38kcal
- 水分:88g
- 食物繊維:0.9g
- ビタミンC:3mg
- カリウム:140mg
梨の摂取で期待できる効果・効能
梨の旬のシーズン、身体の健康状態で気になるのが「夏バテ」ですね。梨の摂取で期待できる効果と関連する成分をまとめてみました。
アスパラギン酸
野菜のアスパラガスから発見されたアミノ酸の一種「アスパラギン酸」が梨には含まれています。栄養ドリンクの成分にも使われていることからもわかるように、疲労回復に対しての効果が期待できると考えられています。
カリウム
ほとんどが水分でビタミン類はあまり含まれていないのですが、カリウムが多く含まれています。カリウムは身体からナトリウムを出す働きがあるため、むくみや高血圧症によいとされています。
ソルビトール
ソルビトールは他の糖分より血糖値の上昇が低く、低カロリー甘味料としても使われています。食物繊維と同じように整腸作用が期待できる半面、一度に食べすぎると下痢に陥ってしまうリスクもあるため注意しましょう。
これらの栄養価を女性目線で見てみると、カリウムでむくみを解消してデトックス、ソルビトールで腸内環境を整えて美肌を保つという美容効果が期待できますね。
梨のカロリーと糖質
梨のカロリーは100gあたり38kcalです。ただ、強い甘さのある梨なので、糖分が気になるという人もいるのではないでしょうか!?
100gあたりの糖質は8.3gで、りんごが100gあたり12.9gとりんごより低いです。食べた際、りんごより梨の方が甘みを感じるので、ダイエット中にどうしても甘いものが欲しくなったときには、梨を食べるといいですね。
梨の栄養は皮に多い
果物から栄養を余すことなく摂るには、皮ごと食べる方がいいという話をよく聞きます。梨の皮は、硬くジャリジャリした舌触りなので食べづらいと感じる方が多いでしょう。
ただ、ほかの果物同様に栄養素は皮と皮の周辺に多く含まれています。よく洗って皮ごと食べるのが栄養的にはよいのですが、どうしてもジャリジャリが気になる方には、スムージーの材料に混ぜるのがおすすめです。
梨が妊婦に必要な理由
梨に含まれる栄養は美容にも効果が期待できることがわかりましたが、同じ理由で妊婦さんにもうれしい効果があります。
妊娠すると便秘で苦しむケースが少なくありません。そのような際は梨に含まれるソルビトール腸を活性化して便秘の解消に期待したいですね。
妊娠中は血圧が上がりやすいので、高血圧に注意が必要です。日本産婦人科学会によると、妊婦さんの約20人に1人の割合で起こる妊娠高血圧症候群になると、母体の血管障害や臓器障害が起こり、悪化すると母子の命にまで関わる怖い病気です。
梨に多く含まれるカリウムはナトリウムを体外へ排出する働きがあるので、血圧降下に役立つ可能性があります。
とはいえ、妊娠高血圧症候群は普段から糖尿病、高血圧、腎臓の病気などを持っている人がなりやすいと考えられています。特に糖尿病の人は梨の摂取に偏りがちになってしまうのはNG。普段の食生活を見直すといった工夫をしながら、妊娠高血圧症候群を未然に防ぐようにしましょう。
おいしい梨の選び方
健康にも美容にも効果抜群の梨。スーパーで簡単に手に入るのも魅力です。できれば、たくさんある中からおいしい梨を選びたいですね。おいしい梨の選び方のポイントを形と色からご紹介します。
おいしい梨の形
梨はお尻の方(枝から離れている方)が甘みが強いので、やや扁平気味のどっしりしたお尻のものを選びましょう。
おいしい梨の色
幸水などの赤梨の場合は、色が薄茶色よりも少し赤みがかかった状態が食べごろです。
二十世紀などの青梨の場合は、みずみずしい緑色のものが新鮮で、黄色味を帯びるに従って甘みが強くなります。黄緑色の中に黄色い部分がまだらに入った状態がもっともおいしい食べごろです。
どちらの梨も追熟して甘くなることはないので、食べごろのものを買ってきたら、すぐに食べましょう。
梨の保存方法
新鮮なうちにできるだけ早く食べたい果物ですが、たくさんもらったときや安く手に入ったときの保存方法をご紹介します。
ポリ袋に包んで保存
梨はシャッキリした食感と、水分たっぷりが魅力の果物です。それを損なわないようにするには、乾燥予防が肝要。乾燥しないようポリ袋に包んで、冷蔵庫の野菜室で保存します。
ペーパータオルとラップを活用
少し手間がかかりますが、10日間保存できるという方法もあります。
まず、1個ずつペーパータオルで包みます。この際、梨は洗わなくて大丈夫です。さらにラップで全体を包んでから、ポリ袋に入れます。複数まとめて入れてもOK。ヘタを下にお尻側を上にして冷蔵庫へ入れましょう。
こうすると梨の「呼吸」が抑えられて、鮮度の劣化が緩やかになると言われています。2~3日に一度の頻度で中を確認し、ペーパータオルが湿っていれば取り替えます。
冷凍保存
冷凍保存もできます。梨のシャキシャキ感はなくなりますが、シャーベットのような食感を楽しめます。梨は皮と芯を除いてくし形にカットし、ラップで包みます。重ならないように4個くらいまとめて大丈夫。冷凍用保存袋にいれて、金属製バットに乗せて冷凍庫で保存すれば約1カ月は保存可能です。
食べるときは解凍します。この際、15分くらいの半解凍だとシャリシャリしたシャーベット風に、30分くらい解凍するとまるでコンポートのようなトロッと食感になります。室温によって解凍時間は変わるので、様子を見ながら解凍しましょう。
まとめ
梨は甘くジューシーなだけでなく、健康や美容効果があることがわかりました。みずみずしさが魅力の果物なので、新鮮なうちに生で食べるのか一番。ただ、あえて冷凍保存してシャーベットやコンポート風にして食べることもできます。自身にとって一番おいしい食べ方で秋の味覚を堪能しましょう。