背脂が浮いた濃いめの醤油スープにやや細めのストレート麺、具は薄切りのチャーシューと刻みネギーー「京都ラーメン」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのはそんな一杯だろう。まさに来々亭や魁力屋に代表される、あのイメージだ。

しかし、同じく京都ラーメンを掲げるチェーン店でも、「よってこや」は少し趣が異なる。

先日、たまたま「よってこや」を発見した筆者は、「よし、久しぶりに京都ラーメンでも食べるか」と思い立ってサクッと入店。そこで食べたのは、いわゆる「京都ラーメン」よりもまろやかで濃厚、それでいてキレのある満足度の高い一杯だった。

■特集『ラーメンチェーン名店巡礼』侮れない一杯はこちらから

「京都屋台味醤油ラーメン」と「えびとん」の二枚看板

今や京都といえば、全国的に見てもラーメン激戦区のひとつ。濃厚系から淡麗系まで、バラエティに富んだラーメン店がしのぎを削っているが、やはり関東人がイメージする「京都ラーメン」といえば、豚骨醤油ベースで背脂が浮いたラーメンをイメージする。

そして「よってこや」も、ざっとメニューを見た感じ、「やはり同じ系統なのだろうな」という印象を抱いたのが正直なところだ(もちろん、そんな京都ラーメンが好きで入店したのだから、文句などあろうはずもないのだが)。

それよりもメニューを見て気になったのが……

この「えびとん」なるメニューである。えっ、「海老しぼり」って……めちゃくちゃ美味しそうじゃないですか。「オマール海老から丁寧に抽出した海老出汁」をベースにしているらしい。想像しただけでタマラン。

でもまぁ、この店にきたのは初めてだし、まずは一番ベーシックと思しきメニューを頼むのが筋ってものだろう。この「京都屋台味醤油ラーメン」がそうだろう。

「創業から進化を続けてきた よってこや原点の味」だという。よし、間違いない。これが今日のターゲットだ。でもかなりの空腹度だからもうちょっとプラスで食べたい気分だな……。

おっと、ランチ限定のセットメニューもあるのか。よし、京都屋台味醤油ラーメンとチャーシューごはんがセットになった「チャーシューごはんセット」(910円)にしよう。

濃厚でコク深い京都ラーメン、その秘密は……

注文から数分で着丼。おほ~っ、うまそ~!

やっぱり背脂も浮いていて、見た目からも京都感が漂ってくるではないか。でも、なんというか……

思ったよりスープが黒くない……かも? まっ、細かいことは気にせず、さっそくいただきますか! ではまずはスープから。

こっ、これは……! 美味い! ただ、想像していたよりも、クリーミーというか、ミルキーというか……まろやかなコクと旨みがたまらなく美味い!

おそらく、この濃厚でマイルドな旨みのもとは、出汁でふんだんに使っているという「鶏骨」にあるのではないか。数年前に鶏白湯ラーメンが一世を風靡したが、よってこやの醤油ラーメンにも、鶏白湯ラーメンに感じた、鶏の濃くて優しい旨みやコクのようなものが強く感じられる。

鶏骨と豚骨を合わせて、香味野菜とともに「(骨が)砕けるまで炊き込んだ」というのだから相当なこだわりようである。いやぁ、美味いわけだ。ほのかに甘い背脂はやはり質がいいのか、口にしてもまったく重い感じはしない。

スープ自体も決して重く感じることもなく、むしろ後味はサッパリしていると言っていい。絶妙なバランス感で成り立っているのだろう。つい飲みすぎてしまう。これは癖になる、というかヤミツキになる……。

そして、この麺も素晴らしい。

麺は中細のストレート麺で、厳選した小麦粉に全粒粉を加えてあるらしく、しっかりと小麦の風味を感じることができる。濃厚スープにも決して負けない個性を持ちつつ、ちゃんとスープとマッチした味わいとなっている。

あっ、チャーシューもウマッ! 炙られた断面から漂ってくる香ばしさが食欲を強烈に掻き立ててくる。肉質は柔らかくてジューシー。スープとの相性も抜群である。個人的には大好きなタイプのチャーシューなので、次回はチャーシュー麺でオーダーしたいと思ったほどだ。それほどに好みである。

だからこそ、「チャーシュー丼のセットにしておいて本当によかったな」としみじみ感じたのは言うまでもない。

もしもタイムマシンがあったなら、「いつも半チャーハンセットにしがちだから、たまにはチャーシューごはんにしてみるか」と気まぐれで注文した数分前の自分にお小遣いでもあげたい気分である。

まぁそれはオーバーかもしれないが、とにかくチャーシューがまだまだ堪能できるなんて、嬉しい~!

当然、こちらのチャーシューも美味しく、甘じょっぱいタレとシャキシャキのネギとも相まって、とにかくご飯が進む、進む。

よってこやは東京、神奈川、静岡県、愛知、そして大阪、奈良、海外では台湾にも進出しているようだ。この濃厚かつ食べ飽きることのない絶品京都ラーメン、機会があればぜひ一度ご堪能あれ。

■特集『ラーメンチェーン名店巡礼』侮れない一杯はこちらから