「噴飯もの」とは「もの笑いの種になるようなみっともないこと」「おかしくてたまらないこと」という意味を持つ慣用句です。しかし、2012年に文化庁が実施した「国語に関する世論調査」によると、噴飯ものの意味を「腹立たしくて仕方ないこと」と本来の意味とは違う、誤った認識をしている人が多いことがわかりました。
この記事では噴飯ものの意味と使い方、類語を紹介しています。ビジネスシーンや海外の人とのSMSで役立つ英語表現についても紹介していますので、ぜひ読んでみてください。
「噴飯もの」の読み方
「噴飯もの」の読み方は、「ふんぱんもの」です。
「噴飯もの」の意味とは
噴飯ものとは、「もの笑いの種になるようなみっともないこと」「おかしくてたまらないこと」という意味を持つ慣用句です。思わず吹き出してしまうほど、おかしい事柄を表しています。
「噴飯もの」の語源
噴き出すの「噴」とごはんの「飯」から成り立っており、笑いをこらえきれずに食べているごはんを噴き出してしまうという意味の言葉です。辞書によっては「あまりのばかばかしさに思わず笑ってしまうこと」と書かれているものもあります。
「噴飯もの」のよくある誤用って?
噴飯ものは「おかしくてたまらない」などごはんを噴き出して笑うさまを表していますが、現代では噴飯もの本来の意味とは異なる「腹立たしくて仕方ないこと」という意味で多く使われています。
2012年に文化庁が実施した「国語に関する世論調査」によると、噴飯ものを本来の意味で理解していた人は約20%、「腹立たしくて仕方ないこと」の意味で理解していた人は約49%もいました。
「噴飯」という文字だけみるとごはんを噴き出す様子では、「笑い」があるかわかりません。また、「噴」という漢字は噴射など勢いよく出るというような、激しいイメージがあります。また、同じ読みの「憤」という漢字には「いきどおる」という意味があり、「憤慨」「憤激」といった言葉もあります。こういったことから噴飯ものが「腹立たしくて仕方ない」という怒りを連想させる意味に考えられるようになったと考えられます。
「噴飯もの」の使い方と例文
噴飯ものの意味を理解したうえで、正しい使い方と例文をご紹介しましょう。本来の意味から大きく外れず、かつ現代でも通じるような使い方となるとニュアンスが大事になってきます。
・遅刻をしてきた彼女の言い訳は噴飯ものだ
・真剣勝負だったのに、おかしたミスが噴飯ものだった
本来の意味だと、おかしな言い訳やミスをしたのだと解釈できます。ばかばかしい言い訳やありえないようなミスをした、と軽蔑の意味を込めた笑いが出てしまう、という意味にもなります。上司など目上の人に対して、「さきほどの意見は噴飯ものでした」というと、人によっては怒らせてしまう可能性もあるので、注意が必要です。
・彼のひとことはまさに噴飯ものだ
本来の意味だと「おかしくてたまらないことを言った」ととらえられますが、本来の意味を理解している人が少ない現代では、悪い意味で通じる表現だと理解して使ったほうがいいでしょう。
「噴飯もの」の類語
噴飯ものが本来の意味とは異なる意味で使用されていると、心配なのが誤用です。認識の違いから相手を怒らせてしまうことがないように、言い換えでも使える噴飯ものの類語をご紹介します。
■失笑もの
「失笑もの」は「思わず吹き出してしまうこと」という意味を持つ言葉です。本来の意味を正しく理解して使うことが大切です。
・舞台上の彼の表情は失笑ものだった
・彼の話がおもしろくて失笑した
「失笑もの」は「思わず吹き出してしまう」という本来の意味を知っている人が約27%に対し、約60%の人が「笑いもでないくらいあきれる」という意味で使っています。人によってはネガティブな意味でとらえられてしまうこともあるので、注意してください。
■草不可避 (くさふかひ)
「草不可避 (くさふかひ)」は近年インターネット上やメールなどで若者が笑いを表現するのに使う「w」を草に見立てて作られたネットスラングです。「絶対に笑ってしまう」という意味があり、「草生える」「大草原」と表すこともあります。使い方としては掲示板やチャットなどの会話の流れで、相手の言葉や事象に対して単体で使用されることが多いです。
・草不可避
ビジネスシーンで使われることはありませんが、「実用日本語表現辞典」にも掲載されている言葉です。SNS運用などをされている方はこうしたネットスラングを知っておきましょう。新しく出てくる言葉に対してアンテナを張っておきたい方も覚えておいてください。
■ばかばかしい
「ばかばかしい」は、「無意味でくだらなく見えるさま」という意味を持つ言葉です。ビジネスシーンでは「割に合わないのでそのことをする価値がない」という意味で使われます。
・そのような計画はばかばかしい
・こっちに利益がないなんてばかばかしくて話にならない
似ている言葉に「馬鹿らしい」がありますが、「馬鹿らしい」は「相手にしたり問題にしたり関心を示したりする価値がない」という場合に使われます。それぞれの意味を理解して使い分けましょう。
■へそで茶を沸かす
「へそで茶を沸かす」は「おかしくてたまらない」「ばかばかしくてしょうがない」という意味を持つ慣用句です。「へそが茶を沸かす」と書くこともあります。実際にへそで茶を沸かすことはできません。そのような「ばかばかしいこと」を表すときに使います。
・そんなへそが茶を沸かすようなことできるわけない
軽蔑するようなニュアンスが含まれる言葉です。江戸時代では多くの文学作品に使われていた言葉で現代でも大きく意味が変わらず使われています。似ている言葉に「ちゃんちゃらおかしい」という言葉もあり、使用するときはそれぞれのニュアンスの違いを意識して使うことが大切です。
「噴飯もの」の英語表現
■ quite absurd
「absurd」は「ばかげた、ばかばかしい」という意味になり、形容詞の「quite」を付けた「quite absurd」は「本当にばかばかしい」というような、ネガティブな意味で使われます。
彼女の話はとてもばかばかしい
■ ridiculous
「ridiculous」は「ばかげた」「とんでもない」という意味になります。
彼の上司への言い訳は、人を笑わせるようなばかげたものだった
■ I couldn't help but laugh
「I couldn't help but laugh」は「笑わずにはいられなかった」という表現に使えます。
隣席の女性の発言に思わず笑ってしまった
■ SNSなどで使える略語表現
海外ではSNSやメールなどで噴飯ものを表現する際、「草不可避」のような意味を持つ以下の表現があります。
- LOL
「LOL」は「Laugh out loud (大きな声で笑う)」の略語です。
- ROFL
「ROFL」は「rolling on the floor laughing (床に転がって笑う)」の略語です。
- LMAO
「LMAO」は「laughing my ass off (笑いが止まらない)」の略語です。
「噴飯もの」は意味を理解した正しい使い方を
噴飯ものという言葉は「おかしくてたまらないこと」という意味を持つ慣用句です。本来の意味とは異なる「腹立たしくて仕方ないこと」という意味で使われていることも多く、誤った意味で理解している人が多い言葉でもあります。
この記事では噴飯ものの意味と使い方について解説しました。英語表現はニュアンスが似ている言葉を紹介しました。噴飯ものと意味がほぼ同じの類語のほうが、一般的には広く使われており、使いやすい言葉です。もし噴飯ものといっても相手に伝わりにくいようであれば、類語に変えて伝えてみるとよいでしょう。
意味と使い方を知ることで噴飯ものを正しく使えるようになります。この記事で解説した内容をぜひ日常会話でも役立ててみてください。
文化庁「文化庁広報誌ぶんかる」