シリーズ累計発行部数8,500万部を突破する格闘漫画『グラップラー刃牙』を初めて読んだBL(ボーイズラブ)研究家の金田淳子が、「この作品、濃厚BLなのでは?」と発想したことから生まれた、規格外エッセイを原案にした新感覚ドラマ「『グラップラー刃牙』はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」(毎週金曜 23:00~ 全7話 ※1話のみ無料放送)が、8月20日よりWOWOWプライムにて放送、WOWOWオンデマンドにては配信がスタートする。"1日30時間"妄想するほど熱狂的なBL愛好家であることを隠して生きる、文房具メーカー勤務の児島あかねを演じた松本穂香に、撮影の舞台裏やドラマの見どころ、自身がものづくりの現場に関わる上で大切にしていることについて聞いた。
――エッセイを原案にしたドラマということですが、オファーを受けた際の心境は?
モノローグの量もすごく多かったですし、今まで経験したことがないほどのセリフ量で、台本を読んだだけでは全く想像がつかなくて、最初は不安とワクワクが入り混じったような状態でした。格闘漫画というジャンルにもあまり馴染みがなかったのですが、このドラマへの出演をきっかけに「グラップラー刃牙」も読ませていただいて。ほぼずっと戦っているし、オノマトペばかり出てくるような感じなので、こんな私でも意外とサラサラと読めました。
山岸聖太監督とは『下北沢ダイハード』というドラマでもご一緒したのですが、監督は真剣にやっていても周りにはシュールに映りがちというか(笑)、ちょっとポップな感じの世界観が、本当に面白いんです。監督自身が撮りたいものがはっきり見えていて、すごく楽しそうに撮ってくださるんですよね。やっぱり楽しみながら作っている人が最強だなぁと最近改めて感じているので、「これは絶対に面白いものになる!」という期待しかなかったです。
――腐女子ならではの妄想弾丸トークと、素顔をひた隠しにしながら文具メーカーで働くいわゆるOL像とのギャップも秀逸です。まずどこから主人公のキャラを作り上げていきましたか?
衣裳合わせの段階から、監督と一緒に話し合って決めていきました。会社ではあまり人と深く関わらないで面倒ごとを避けているけど、家の中では好きなものにまっしぐら。心を許した腐女子仲間とは居酒屋で存分に語り合う……。そんなオン・オフがはっきりしたあかねという女性の心の壁を「真っ直ぐな前髪で表現したい」というのが、監督のこだわりでした。
――あかねの独特なセリフ回しを体現する上で、どんな工夫をされましたか?
大切にしたのは、セリフの早さよりも熱量です。モノローグだけでも、丸2日間くらいかけて、じっくり丁寧に録りました。妄想シーンのシチュエーションが毎回変わるので、その都度監督と「こういう場合は、もう少しこういう喋り方にした方がいいですかね?」と模索しながら進めていった感じですね。1話目は教師の設定なのでわりとフラットに喋っているものの、2話目以降、どんどん聴衆が増えていって、時には会場からヤジが飛んできたりもするんです。居酒屋で腐女子トークで盛り上がる場面では、監督から「もっとニタニタと笑って欲しい」「もうちょっとジトっとした感じにして欲しい」とよく言われていたので、そこはかなり意識しながら演じました。とはいえ、実際の腐女子の方々のイメージダウンにつながらないように、アツく語り合える仲間がいる素晴らしさが伝わるといいな、と思いながら。
私自身は筋肉同士のぶつかり合いに美しさを感じたことは無いですが、「これだ!」と思えるほど好きなものがあって、生きがいにできるものがあるのは羨ましいなぁと思いました。大人になるとそこまで情熱を傾けられるものと出会える機会は、なかなか少ないですから。