女優の戸田恵梨香と永野芽郁がW主演する日本テレビ系ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(毎週水曜22:00~)。元警察官の泰三子氏による漫画『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』が原作で、ハコ=交番に勤務する2人の警察官を主人公に、知られざる日常をコミカルに描いた作品だ。

今期ドラマの中では、とりわけ気軽に視聴できる今作だが、軽快でポップに描かれる見た目とは裏腹に、視聴者が深みにハマってしまう魅力がたっぷり詰め込まれている。その魅力とは一体何なのか。考察するのと共に、きょう18日の放送から再開する後半戦へ向けて期待を膨らませたい。

  • 戸田恵梨香(左)と永野芽郁 (C)NTV

■“失敗ばかりの新人”はよくある設定だが…

定番の“警察モノ”に、主人公2人は“凸凹コンビ”、“バディ”で捜査、“優秀”な元刑事課エースと失敗ばかりの“新人”、また警察署内には刑事課との“対立構造”も存在して……など、このドラマを構成する要素には、これまでの刑事ドラマや、お仕事ドラマでも見てきようなパターンが多い。だが、なぜここまで楽しく、飽きさせず、そして新しさまで感じられるのか。

魅力の1つは、永野が演じる新人警察官・川合の造形。“失敗ばかりの新人”というキャラクターは、主人公の成長を描きやすいという点でよくある設定なのだが、今作はコミカルな味付けがなされているとは言え、警察官が主人公のドラマ。“失敗ばかり”の描写は、フィクションと分かっていても、一歩間違えれば、実際に働く交番勤務の警察官へ敬意を欠いてしまう恐れがあり、「こんなヘマばかりの警察官がいたら嫌だ…」と思わせてはドラマとして失敗になってしまう。

直近では、木村拓哉主演で警察学校を描いた人気シリーズ『教場』(フジテレビ)の放送もあり、「どのようにして警察官になったのか?」という視聴者の見る目がより厳しくなっている現状もあるだろう。だが今作の主人公は、共感し、そして一緒に応援したくなってしまうキャラクターへ仕上げることに成功している。

それは主人公が、警察官にはなくてはならない“市民に寄り添う”という信念を、根底にちゃんと持っているからだろう。第1話の「狂言自殺」や、第2話の「涙のガサ入れ」のエピソードでも、一歩間違えれば取り返しのつかない失敗や、心が折れてしまう瞬間が川合に訪れるのだが、彼女の奥底には、うまくはいかなくても、自分なりに市民に寄り添いたいという思いがしっかりと存在。そして、それをさりげなく丁寧に描写しているのだ。

しかもその思いは、誰かに促されたり、先輩の仕事ぶりに感化されたというだけでなく、川合自身に以前から備わっている“警察官としての資質”を感じられるからこそ、川合がどれだけ失敗し、心が折れそうになっても、視聴者は心から共感し、応援したくなるのだ。

  • (C)NTV

■川合のキャラクターを深める必要不可欠なエピソード

それが見事に物語へと落とし込まれていたのが、第3話と第4話での「似顔絵捜査官」のエピソードだ。第3話で判明した川合の“独特な似顔絵を描く”という才能は、ドラマのキャラクターとしてみると、1話からその片鱗を見せていたわけではない。そのため、これからの物語を膨らませるのに突然付け加えられた設定にも思えるのだが、これこそが川合のキャラクターを深める上で必要不可欠なものだった。

川合が描く似顔絵は、犯人検挙ポスターなどでよく見かける写実なものではなく、人物の特徴をデフォルメして似せていく、言わばイラストのようなもの。当然そんな独特な似顔絵は、川合たちが第4話で招集された特捜で、笑って一蹴されてしまうのだが、やがてその“川合にしか描けない似顔絵”によって、徐々に真犯人が判明していく過程は、川合の根底にある“自分なりに市民に寄り添いたい”という思いと重なり、結実していく……そんな美しい結末が導かれるのだ。

本来であれば描くことが困難な、主人公の“自分なり”という部分。それを視聴者にしっかり見える形で、分かりやすく、物語に昇華した見事なエピソードだった。