新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染者が急増し、東京を中心とした首都圏では、入院すべき患者が入院できず、自宅療養となるケースが多くなっています。コロナで自宅療養する際、心配なのは症状の急激な悪化ですが、「入院していれば受けられたはずの保障が受けられないのでは」という経済的な不安もあるのではないでしょうか。
しかし、自宅療養でも、医療保険の入院給付金が受け取れる場合があります。今回は、新型コロナで自宅療養する際の入院給付金の取り扱いについて、解説します。
自宅療養で入院給付金がもらえる条件とは
民間の医療保険は、主に、入院と手術に備える機能を持っています。「入院したら1日あたり5,000円」「手術1回につき10万円」のように、入院や手術をした時に、給付金が支給されるのです。
このうち入院給付金は、給付条件を満たした入院をしていなければ、受け取ることができません。しかし、新型コロナウイルスについては、自宅にて療養している場合も「入院」として扱い、入院給付金の支払い対象となることがあります。
たとえば、大手保険会社では、コロナに感染して自宅療養などをした場合、入院給付金についてさまざまな取り決めをしています。以下にその一部をご紹介します。
第一生命
新型コロナに感染後、ホテル等の宿泊施設または自宅にて、医師等の管理下において療養している場合には、「入院」として取り扱い、医師の証明書(診断書)等を提出することで「(疾病)入院給付金」等の請求対象となる。
※請求対象となる期間は、陽性判明日から厚生労働省等の定める宿泊療養・自宅療養の解除基準日まで
アフラック
新型コロナと診断され、宿泊施設および自宅等にて医師等の管理下で療養している場合は、入院給付金の支給対象とする。宿泊療養・自宅療養期間の入院給付金は、保健所や医師等の証明内容や、保健所や医療機関で発行された書類に基づき、支払われる。
また、コロナに感染した人のほか、コロナの影響を受けた人にも入院給付金を支払う保険会社もあります。
オリックス生命
入院給付金請求の特別取扱い
(新型コロナに感染、または、新型コロナ以外で治療が必要で、入院治療を受けられない場合)
・新型コロナと診断され、自宅や臨時施設等(医療機関と同等とみなせる施設)にて、医師の管理下による療養を受けた場合は、医師等が証明した期間について疾病入院給付金が支払われる。
・新型コロナ以外の傷病において、医療機関の事情により、入院治療を受けられない場合でも、以下の要件①②に該当した場合、疾病入院給付金が支払われる。
①(a)医療機関の事情により、入院できず、自宅や臨時施設等(医療機関と同等と見なせる施設)にて、医師の管理下による療養を受けた場合
(b)医療機関の事情により、当初の退院予定日より早期の退院を余儀なくされた場合
※(a)(b)のいずれかに該当
②「本来必要であった入院期間」について、医師による診断書等の証明がある
給付金を受け取る手続き
入院給付金を受け取るには、コロナに感染し、自宅療養していたことを証明書にて保険会社に示す必要があります。この証明書に関して厚生労働省は、「医療従事者等の方々の事務負担を考慮し、通常の保険金支払いに要する手続きを簡略化し、最低限の情報に基づき支払いを行うような取り扱いを行う」としています。
自宅療養を証明する書類としては、厚労省の「宿泊・自宅療養証明書(新型コロナウイルス感染症専用)」が利用でき、この証明書を医師、病院・診療所・自治体・保健所等の担当者のいずれかに記入してもらうことで、宿泊・自宅療養を保険会社に証明できます。
なお、上記に挙げた以外の多くの保険会社でも、自宅療養者に入院給付金を支給する対応を取っています。詳しくは、加入している保険会社に問い合わせたり、ホームページを見たりして確認してください。コロナに関する給付金の支払いで不明点がある場合も、できるだけ事前に問い合わせ疑問を解消しておきましょう。
健康保険から傷病手当金ももらえる
民間の医療保険に加入していれば、コロナに感染し自宅療養した時に入院給付金が受け取れる可能性がありますが、会社員の人であれば、勤め先の健康保険から「傷病手当金」が支給されます。
傷病手当金が受け取れるのは、業務災害以外の理由でコロナに感染し、療養のため働くことができない場合です。会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。支給される1日当たりの金額は、「直近12カ月の標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)」です。
ちなみに、「コロナ陽性となったが自覚症状がない」という場合でも、療養のため働くことができなければ、傷病手当金の支給対象となり得ます。コロナに感染しないに越したことはありませんが、万が一感染して働けない期間があっても、会社員にはこのような手当があるのです。
加入している保険会社の対応を確認しよう
コロナ感染者が爆発的に増加し、首都圏では「入院したくてもできない」という事態が起きています。本来なら、入院に相当する人が速やかに入院できる体制が必要です。しかし、やむを得ず自宅療養となってしまった時にも、少しでも経済的不安を和らげられるよう、加入している保険会社の対応を確認しておきましょう。