2015年の宝塚歌劇団退団公演の千穐楽には、過去最多となる1万2,000人を集めた元宝塚歌劇団星組トップスターで、現在は主にミュージカルでその実力を発揮している柚希礼音。2016年から開始したソロコンサート『REON JACK』、3年ぶりに『REON JACK 4』として9月に帰ってくる(9月11日〜12日 TOKYO DOME CITY HALL、9月18日〜19日 北九州芸術劇場 大ホール、9月23日〜26日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)。

音楽プロデューサーに本間昭光を迎え、一流のメンバーとともにコンサートの枠組を超えた芸術的なショーを繰り広げてきた『REON JACK』。今回は初の試みとして、甲斐翔真、夢咲ねね、佐藤隆紀(LE VELVETS)、湖月わたる、東啓介、西川貴教と日替わりでのスペシャルゲストも登場する。今回は柚希に『REON JACK』のコンセプトや、日替わりゲストで登場する湖月わたる、夢咲ねねについて、またコロナ禍で考えたことなどを直撃すると、一貫して伝わってきたのは「ファンのために」との思いだった。

ソロコンサート『REON JACK4』を開催する柚希礼音

ソロコンサート『REON JACK4』を開催する柚希礼音

■『REON JACK』は今の柚希礼音を表現

——『REON JACK』、3年ぶりの開催になりますね。

2018年の『REON JACK 3』で結構やり切った感があったのですが、やっぱり自分にとってこのコンサートはファンのみなさまと繋がっていることを感じられるすごく大切なものなので、これからもやっていこうと思いまして。『REON JACK 4』行きます!

——力強い宣言、ありがとうございます。柚希さんにとって、『REON JACK』とはどんな存在ですか?

宝塚時代に、初めてスペシャル・ライブ『REON!!』をやってみて、そのときに柚希礼音の本当の中身をパカっと開けることを始めました。すると今まで作ってきた男役・柚希礼音像というものから、ちょっとずつ人間味が出るようになってきて、そのあとの男役像も変わった気がしたんです。退団してミュージカルなど色々なことに挑戦してきましたが、『REON JACK』の時の私は、今の柚希礼音が出るものだと思っています。

——4まで来ました。今回のコンセプトを教えてください。

1のときは退団したてだったので、私のことを「遠い存在になったわ」と思っているかもしれないファンのみなさまに、「退団しても前のまんまだ」と感じていただきたいと思いました。2では思いっきり振り切って、とにかくいいものを見せようと、しっかり観ていただくことを考え、3ではちょっとだけホッとするような面が見えることを心がけました。4では、コロナ禍ということもあり、お客さまとファンミーティングなどで直接お会いすることもできなくなっているので、お客さまの緊張した心が解き放たれるような、温かい気持ちになれるものに。それでありながら、一流の方々と、クオリティの高い中身の濃いものを提供してメリハリのあるものにしたいと思っています。

——コロナ禍ということは、やはり影響が大きそうです。

そうですね。いつものフリートークではお客さまと掛け合いができて、私の心を本当に溶かしてくれていたのですが、それが絶対にできない状況ですよね。おそらく観に来てくださる方も、いろんな不安を感じながら、「大丈夫かな」と思いながら来てくださると思うので、絶対に大丈夫なように。ちゃんとマスクをして、きっちり感染対策をして、そのうえで、みなさんが一緒に参加できた気がするものを、音が出るグッズでキャッチボールするとか、コロナ禍でも盛り上げられる道を探しています。

■満を持して湖月わたる、夢咲ねねが登場

——今回は、レギュラー陣に加えて、初めて日替わりゲストが登場します。大阪公演の湖月わたるさんと、東京公演の夢咲ねねさんの登場は、特に楽しみにしている方も多いかと。

1の時はタカラジェンヌの方にも出ていただきましたが、満を持しておふたりに登場していただきます。湖月わたるサマについては、宝塚時代わたるさんが本公演で演じた役を、何度も新人公演で演じさせていただきました。柚希礼音というものが作られたのは、わたるさんに色んなことを教わったから。育ての親とも言える方です。きっとお忙しかったと思うのですが、オファーをさせていただくと、「ちえ(柚希)の願いならば」「私も楽しみにしている」と言ってくださった。変わらず、本当に温かい方だなぁと思っています。一緒に舞台に立つのは15年ぶりなので、何をしたらいいのか、いま本当に悩んでおります。

——退団されて約6年、その間にいろんなキャリアを踏んできて、湖月さんに「今のこんな私を見せたい!」といったお気持ちは。

わたるさんに私を見せたいというより、ふたりならではの、何を観ていただければお客様が一番喜んでくださるのかを考えています。せっかくふたりが一緒に立つわけですし、とにかくわたるサマを無駄遣いしないように。「これだ!」というものを決めるのがとても難しいです。

——夢咲さんについては。

19年のときに、ファンクラブ限定で20周年のディナーショーをやったんです。そのときにねねにも出てもらったのですが、たとえば『激情』という作品のホセとカルメンの歌のときには、やっぱりカルメンの目で、違う作品になるとまた違う目で、「この感触、めちゃくちゃ久しぶり! 何年も経ってるのに、どうしてこういう顔になるんだろう。すごいな」と思いました。お客様に「これこれ!」と思ってもらえるものは何か探しています。

■最初の緊急事態宣言下、「青い星の上で」を配信した想い

——今なお続くコロナ禍のなか、今回、やっとファンとコンサートで会えるわけですが、最初の緊急事態宣言の際、柚希さんの声掛けのもと元トップスター、トップ娘役の計19名が集結して「青い星の上で」の歌唱を配信されました。改めてそのときの想いを教えてください。

あのとき、自分の舞台が止まって、周囲もどんどん止まっていって、これは本当に大変なことなんだと思って大人しくしていましたが、ついに宝塚が止まりました。ファンのみなさまも心配でたまらないでしょうし、宝塚のあの町に、何百人の団員がじっとどうしているのかと思うと、いてもたってもいられませんでした。いつも心は繋がっているからと伝えたい、どうにか元気づけたい、笑顔になってもらうことをしたいと思いました。とはいえ、もう私は宝塚歌劇団にいるわけではないし、お声がけした方たちも、難しいかなと思いました。でも話してみると、やっぱりみんな何かをしたい、心を届けたいという想いでいて、トントン拍子に進んでいったんです。

——そうだったんですね。

それでみなさんへ熱い想いを伝えさせていただき、実際に会うことはできないので、「この振りをやってください」「カメラはこの位置にしてください」といったことをみんなに送るために自撮りしました。男役女役分かれての部分は、同じ事務所のちゃぴちゃん(愛希れいか)と事務所でマスクをして、男女の振りを撮って、ここからここは誰々にお願いしますと送っていました。

■最近ハマっているのは、ベランダで風を感じること

——ご自身のお話を少し。宝塚退団以降に、影響を受けた人物を教えてください。

オク・ジュヒョンさんという韓国のミュージカル女優さんがいらして、その方のことを本当に尊敬しています。実際お会いして写真を撮っていただいたことがありますが、舞台での歌はもちろん、いつもInstagramを見ていて、普段のかわいらしさやストイックな姿勢など、とてもステキだなと。それにいつも、女性として地に足の着いた、媚びたりしない素晴らしい役作りをされるところに惹かれます。

——オク・ジュヒョンさんはミュージカル『マタ・ハリ』初演で主演された女優さんですね。

退団して割とすぐに『マタ・ハリ』で初めて観たんです。そのときにはまさか自分が日本版で主演するとは思わずに観ていて、「めちゃめちゃかっこいい女優さんだな」と思って観てました。いざ自分がやるとなって、再度観に行ったときもステキでしたし、あとはオク・ジュヒョンさんの『エリザベート』を観たら、すごく信念を持った女性になっていて、自分のなかで今まで少し腑に落ちない部分があったところが、とても腑に落ちたんです。そんな体験をして、私も彼女のような人になりたいなと思いました。いま、元バレエダンサーの方が考案したエクササイズのジャイロトニックにハマっているのですが、それもオク・ジュヒョンさんがやっているからです(笑)

——ジャイロトニックとは別に、最近の柚希さんが「ジャック」されていることは?

私は旅がすごく好きで、公演が終わるたびになるべく海外に行って、気持ちをリセットしていたのですが、改めて、海外で何を一番してきたかと考えると、風を受けて大きな深呼吸をして、「また次の仕事がしたい」という気持ちになって戻ってくることでした。でもそれが今はなかなかできない。そこでベランダにソファを置いて、出かけるまでのちょっとした時間を過ごすようにしました。ずっと建物の中にいると、太陽の光を浴びて、風を感じるということができないんですよね。でもそれは、私にとってとても大切なことなので、今のこの状況でもできる、せめてベランダで風を感じることにジャックされてます。

——ありがとうございました。最後にひと言お願いします。

今回は新曲が3曲あります。まだいろいろと不安を感じることもありますが、全日程を無事に完走して、お客さまと幸せな気持ちになれたらめちゃめちゃ幸せです。誰ひとり欠けてはいけないすごい繋がりを感じるメンバーとできます。楽しみにしてください。

■柚希礼音
6月11日生まれ、大阪府出身。元宝塚歌劇団星組トップスター。97年に宝塚音楽学校に入学し、99年に宝塚歌劇団に入団。03年にバウホール公演初主演。同年に湖月わたる・檀れいトップコンビ大劇場お披露目公演『王家に捧ぐ歌』で新人公演の初主演を務める。09年星組トップスターに就任。相手役のトップ娘役は夢咲ねねが務めた。14年、真矢みき以来、16年ぶり2度目の日本武道館でのコンサートを開催。15年に宝塚歌劇団を退団した。退団後はミュージカルを中心に活躍。『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』『マタ・ハリ』『ボディガード』、第27回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞した『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』などに出演している。ソロコンサート『REON JACK』は2016年からスタートし、4度目の開催となる。2022年1月~ミュージカル『ボディガード』に出演予定。ヘアメイク:藤原羊二 (UM)、スタイリスト:山本隆司